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黒き竜殺しの思春期少年、少女達  作者: 正 三元
第2章………待ち構える世界
18/32

初めての戦闘は可愛い魔物

出発した翌日の朝


昨夜は黒き剣に宿った女神と2人で話す事で、1人での野宿する筈だったが余裕ある一夜を過ごせた将生は、空には満天の星が見え、天体観測を楽しむ余裕もあった。


キャンプみたいだったなと浮ついていたのだが、将生の気持ちを引き締めるような事件が起きる。


そのきっかけは黒き剣こと夜刀やとが魔物が近くにいる事を察知したからだ。


『主さま、近くに魔物がいますよ』


「本当に?」


言われて初めて草原の中に、少し違和感を感じた将生は立ち止まる。


『前方の方です、よく観察していれば草が動くと思いますよ。』


「どの辺りだろ?あっ、動いたような?どちらにしろ何かいるな!?」


夜刀が指示した辺りは、今の位置から20メートル先の草むらの中をじっと見つめ、わずかな違和感を将生は感じ取った。


なにかがひょこりと立ち上がり、草の上に姿を見せた。


見た目はウサギだ。


『主さま、あれはアルミラージです。』


「アルミラージ?それはウサギの種類?」


『主さま、あんな立派な角を生やしたウサギをご存知なのですか?

どちらにしても、此方ではアルミラージは魔物としてのウサギですよ。』


可愛らしいウサギとは違い、額に生えている、一角獣のような角で突き刺すような、素早い突進攻撃で致命傷になる時もある。


性格は凶暴ではあるが、魔物としてのランクは低い、普通は群れで行動してるが、単独なのは新しく群れを作る為に群れを出た奴か、年取って追い出されたかだ。


流石に女神だと自己主張しているだけあって、此方の世界のこういった魔物知識を夜刀は豊富に持っているのだから、知力は伊達ではない。


将生は魔物との戦い方については、セリーヌからは教わっていない。


『此方には気付いてないようですが、放っておきますか?それとも主さまは戦ってみたいのですか?実戦を経験しとくのはいい事だと思われますし、それに早く主さまが成長して頂けないと、私が可哀想だと思います。』


「実戦って、この黒い剣で攻撃して、夜刀は痛くないの?」


『主さま、私を気にしてくれるのは嬉しいのですが、痛みは折れたりして壊れてしまったら、痛みは感じると思いますが、アルミラージぐらいは、一撃で倒して頂けないと

………コホンッ、困ります。

ランクが低い魔物に主さまの力がどれだけ通用するのか知っておいたほうが宜しいと思いますので、頑張って下さいね。

あと魔法は無しでお願いします。』


「倒すって、殺すってことだよね?でも、ほっとけば人間に迷惑かかるのだろうけど、ちょっと抵抗があるんよなっ………ヤらなきゃね。」


ググッグゥゥッと悩んでいた将生を、握っていた黒き剣がアルミラージに向けて飛び出した。


これで将生の存在に気付いたアルミラージは、威嚇しながら飛び出すタイミングを見計らっている。


全身が茶の毛で包まれており、頭頂部に鋭く長い角を将生に向けている。


此方の世界は弱肉強食が全てのルールだと言ってもいいが、どちらの世界でも格上の相手との戦いは極力避 けるか、仲間と共に挑むものだ。


一対一で戦うことなど、逃げ道がないほど追い詰められないと起こらない。


今回はどうかというとアルミラージは逃げる事は可能だった筈だが、戦う選択をしたのは、格上である将生が弱気だからだ。


いくら相手が強かろうが、能力を活かす事が出来なければ、とくに足のスピードを生かした攻撃を得意としている、アルミラージが隙を突く事は可能だ。


現にアルミラージの本能がそうさせている。


将生とアルミラージの間で戦いが成立してしまったのは、弱気で臨んだ将生が悪い。


アルミラージはやる気満々だ。


対する将生はテンションが上がりきらない。


スピードを生かしたアルミラージの突進攻撃に、将生は黒き剣を振って対抗する。


落ちてくる大木を鉈で切るタイミングを思い出すかのように、アルミラージの動きの早さに合わせて、振った黒き剣はまぐれで、アルミラージに命中した。


アルミラージの額に生えた角を粉砕して、頭部の肉を切り裂く感触が、黒き剣を通して感じ取れた瞬間、アルミラージは血をまき散らして絶命した。


アルミラージの血が頬や手につく。


「うわっ」


既に動かなくなったアルミラージを見て、目を逸らすが血の匂いを嗅ぎ、いっきに気分が悪くなった。


口を手で押さえ、吐きそうになるのを我慢して、一度逸らした視線を戻し、ごめんと呟いた。


罪悪感があるのは襲いかかられたわけでもなく、殺す必要もなく、いたずらに命を奪った事で感じられるのだろう。


この世界の住民から見れば偽善なのだが、日本の一般家庭で育った将生には、小動物のウサギは可愛いペットでもあり、一角を生やしただけのウサギのアルミラージに悪い事をしたという意識が生まれる。


だが、姿はウサギそのままだが、アルミラージはりっぱな魔物であり、人間の命を奪う事もある、それだけに良心の呵資を覚える者など、此方の世界にはいない。


それは将生がゴキプリや蚊を躊躇もなく、駆除という言葉を変えているだけの殺戮と同じなのだから、アルミラージも殺さないといずれ自分に被害を及ぼす可能性があるので、躊躇する必要もないのだ。


「動物をイタズラに殺す事は、やっぱり悪い事をしたって思っちゃうなっ……」


『主さま、その感覚は慣れるしかないですね』


「殺すことに慣れる?慣れたくないよ」


『いいえ殺すことじゃなくて、魔性の者は人と違うのですので、罪悪感を抱くなら人を殺す事になりますよ、どちらにつくにしても、魔性の者を殺しても、褒められる事はあっても、罰せられる事はありません、逆に言えば魔性の者も同じですよ。』


「ようは、どっちかのルールに従えっていう事だね………人間側か魔性側ね………頑張るよ。」


常識が違うのだから、自身の常識に拘っても此方での生活では不審に思われるだけだ。


どうして、こっちの世界に居るのかは、正直に言えばわからない。


元の世界で死んだのか?死んでいないなら、いずれ帰るつもりではいる、それまでの生活を苦しいものにしたいわけでもない。


『………………』


将生は沈黙している夜刀に、アルミラージをどうすればいいのかと聞く。


『主さま、アルミラージは幸いにも角が、此方では取り引きされていると思われますが、主さまの攻撃で角が粉砕しておりますので、剥ぎ取る部位は無いかと思われます?』


「そうじゃなくて、このまま道にほったらかしにしてても、いいのかって事だよ、何かしらの邪魔にならない?」


『そういう事ですか。いずれ肉食の獣や魔物が餌として処理してくれると思いますよ。

気になるなら道の端にでも寄せておけばいいかと思われます!?』


気にはなるが、触る気が起きないので将生はそのままにする事にして、目指す町セレペスに向かって歩き出した。


将生は先程の剥ぎ取るという言葉が気になり聞いてみる。


「さっき剥ぎ取るって言ってたでしょ?役に立つ部位を持ってる魔物っているの?」


『いますよ。魔物には色々と役にたつ部位がありますので、その部位を取ってくる依頼があるでしょう』


将生は討伐系のゲームを思い出した。


将生自身はゲーム事態は殆ど、やったことがないが、それでもゲームの話に乗れる程度はやっていたので、時折そういったゲ ームの情報も入ってきている。


(リアルで狩猟をやるとは思ってもいなかった。 人生ってなにが起こるかわからないやっ)


首を横に振り、人生の不思議さを笑う。


将生は旅を続ける。


町セレペスに着く前にもう一度魔物と戦うことになったが、今回は3匹のアルミラージだったが、複数との戦い方を実践するいい機会ではと、夜刀が言ってきた。


夜刀とわからの忠告を受けながら、戦いはなんとか終わった。


怪我はエレインに教わった初級の治癒魔法で治せる程度だったので、問題はないが、角は刺さらなかったが体当たりを受けた事が、今後の課題だなっと感じた将生だった。


戦いが終わり、夜刀からいくつか指摘を受けて、自身の非常識さを再認識させられる。


やはり罪悪感は感じたのだが、最初の時よりも小さかったのは、自身も攻撃を受けて、危険を感じた事が大きかったのと、魔物を殺すということを経験した事で、受ける衝撃は小さく感じられた。


このまま慣れていくのかと複雑な思いがあったが、今回は角を粉砕する事もなかったので収入を得た。


アルミラージの角はそう高くはないが売れるのだ。


3本の角が取れた、2度の戦闘以外は何事もなく、予定よりも少し早く町セレペスに到着した。


将生の体力の高さ故、進行速度が落ちなかったからだ。




ここまで読んで頂きありがとうございました。


誤字脱字あれば遠慮なくご報告して下さい。


今後も読んで頂けたら、幸いです。


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