決意する2人
セリーヌが帰って来るのに空を飛ぶ、浮遊魔法を使ったらしく、肩で息をする程に魔力を消耗していて、髪が金髪になり若い年齢を維持出来なかったらしい。
殆どの魔力を使うということは、比例して体力も無くなるのだと、セリーヌは語る。
その老いを隠す為の白い能面のマスクだった。
疲労困憊で帰宅した筈だったが、何故か魔力量が復活したらしく、早々にセリーヌが再び将生の額に指先を当てて、このまま話せるように通訳魔法をかけ直した。
落ち着いた後で、セリーヌの変わる姿の意味合いを知った将生は愕然としている。
思春期の男子なら理解出来るだろう!?。
なにせ、あの興奮してしまった相手の姿は、若く見えるが本来は老婆だと知ったのだ、いくら最後の一線を越えてはいないとはいえ、思春期の少年ならわかるだろう!?
そうなのだ、性欲の証でもある白い液状を老婆相手に、放出してしまったのだ。
自分自身に対して何とも言えない複雑な気分を味わっている事を、男の子の皆と理解し合いたい。
そんな将生はテーブルにぐったりと伏せているのだが、将生を咎める事もしないセリーヌは、さっきほどの事がなかったように、顔色を変えずに話していたのが終わったようだ。
このところエレインが読んでいた教本は医術書や薬学書だった。
志願して、諦めた己れ自身の命が死なずに済んだのだ、王女として民を救う為にも、出来る事を思う存分するつもりなのだと、エレインは楽しげに語る。
「波乱万丈だね。」
その意味がエレインには伝わらず、将生は言葉を説明していたが、それを聞いていたエレインは、思い出したかのように昨夜の出来事を話し始めた。
「昨夜の舞を披露していた女性は、倒した黒き竜だけに、夜の女神ニュクスの化身だったんじゃないでしょうか?」
「そのニュクスって、夜の女神なら、竜は関係ないのでは?」
聞いたことのない単語をエレインに聞く。「えっと、原初の女神ですよ。」
突然だったが、将生の頭の中で 『私は貴方と共に行きましょう』という声が響いた。
「うわっ!?」
突然聞こえてきた声に、大きく驚きを表し周囲をきょろきょろと見回す将生に、2人はどうしたのかと問う。
似たような題のアニメがあったなっと思いつつ、2人に声が聞こえたことを伝える。
「もしかすると、昨夜に現れた女神の化身からのギフトを得たのかもしれませんね。」
エレインとセリーヌは難しそうな表情で見合っていたが、2人は夕食の準備を始める。
夕食の後は騒ぐことなく穏やかに時間が過ぎて、将生は外で竹刀を見つめたり、打ち込みをしたりとしていたが、何も変わった事はなかった。
エレインが部屋で休んでいると、部屋の扉が叩かれる「コンコン」扉を開け入ってきたのはセリーヌだった。
「実は王宮に行って来た?」
「そう、そうですか………」
「もう、国王の言う事を真に受けないでよ。」
「えっ、でもお父様は民の為、国の為に悩んでいたのですよ、それを手助けしたいと思うのは、王女としての勤めだと思うわ。
それより、体の古傷は大丈夫なのですか、………私に診察させて貰えるかしら?」
セリーヌはもう大丈夫だと思ったが、エレインの見立てで、自身もわからない異変が見つかるかも知れないと、素直に受けることにした。
エレインと共に生きる事も、一緒にいれない事も、魔性に堕ちた時から覚悟はしていた。
だからこそ、自分が祖母だということを、アーサー王もセリーヌも秘密にしているが、後宮内に閉じ込めるように生活をしていた、エレインに会いに行く事だけは、王も黙認していた。
というより、勝手にセリーヌが来訪して来ていただけなのだが!
エレインが見やすいように移動し、服を捲り上げると、ふくよかな2つの山がプルんと露になる。
診察用の魔法と触診を併用して異常がないことを確認し、そのことをセリーヌに告げる。
「ありがとう」
「ううん、幼い時から後宮に遊びに来てくれたセリーヌには感謝してるわ。」
セリーヌは服を整えてそのまま話し出す。
「でも、ほんとに無事で良かった、もう二度と会えないって思ってたから………」
「私も生きていられて嬉しいわ。マサキさんには感謝しないとね。」
「避けられない死の運命をぶち壊した救世主ね、エレインと同じ年齢というのも驚いたけど、これは運命の相手って奴だったりとか?考えちゃう?
マサキと結婚もありえるとか………」
「あら?意外にロマンチストなんですね?」
そう指摘されるとセリーヌは急に恥ずかしくなったのか、聞かなかった事にしてと慌てて言った。
「恥ずかしがらなくても、それにしても運命の相手ですか、確かに救世主とは思いましたが………」
この数日間の事を振り返り、感謝の念と親愛の情を抱いてはいる。
だが、ディアルグ王国に起きた2つの事件で、姉が行方不明になり、母親の事件がなければ産まれていたはずの………。
いや、弟が居たら良いなと昔から思っていたのだ、そんな風に将生を見ていたのだから、恋慕の情は湧いていない事を自覚する。
将生が些細な事で喜ぶ姿を微笑ましく感じ、笑顔を可愛いと思った。
しかし、それは恋を含んだ感情ではなく、母性愛や家族愛に近い。
「恋愛とかはあまり、マサキさんを嫌いという訳ではないのですが………」
「危ないところを助けられて、好意から恋愛に発展したっていう話は何度か聞いた事はあるよ?」
「なんというか、ここに来るまでにマサキさんの凄いところだけじゃなく、弱い部分や無邪気な部分も見ることが出来ました。
それで可愛いなと思ったんですよね。
弟がいたらこんな感じに接したのかなって?」
「弟ね、親愛の情が高まり過ぎたのかも知れないね。」
「かもしれませんね。」
これから将生が頼りになる側面を見せたら、恋愛感情へとシフトする可能性もあるのかも知れないなと、セリーヌは考えたが、それは無理な話なんだと知っている。
「それよりも、私とマサキは王宮には行けないよ、やはり………」
この数日間に考え話し合ってきたが、けっきょく2人は将生との別れを決意するしか、答えを出せなかった。
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