広がる驚きと衝撃
お酒を日頃、呑む機会がある年齢層なら、冷たい水やお茶を飲ませたりして、酔いを覚ます事を考えられただろうが!?
将生は15才の思春期の少年なので、そんな事は思い付かずに、違う解決法を考え出した。
「あ、そうだ!?」
はっと将生は思いついたと言って、エレインを抱きかかえ、風呂場にダッシュする。
ある程度覚めたお湯がはっている、湯船にエレインを下ろした。
ぐったりしていたエレインの体を、ある程度の冷たさのお湯が覆った。
「………」
エレインが顔を上げた。
見る見るうちに瞳に光が戻っていく。
「あぁ、気持ちいい………生き返りますぅ~」
水面に手のひらでぬるま湯をすくい上げて、エレインはそのぬるま湯を顔にかけるては受けとめる。
将生はほっと息をついた。
どうやら大丈夫のようだ。
「助けてくださってありがとうございます。
えっと?あっ、マサキさんでしたか!?」
エレインはにっこりほほ笑むと、湯船の縁に手をついて身を起こした。
「あ、いやいや、あの、元気になったなら良かっ….....!!」
将生の言葉が止まった。
目の前に、びしょ濡れのエレインの体がある。
濡れた浴衣がぴったり貼り付き、隠れていた部分までくっきりはっきり透けている。
重たげな真ん丸の胸の形とか、その乳房の先端にある物体も、太ももの付け根の三角地帯とか、その他もろもろ。
ヤバい!?……… さっきまでの半脱ぎ状態よりさらにヤバい、間近に見るリアルな女体にまともな思考が吹っ飛んだ。
そんな将生の手をエレインは取ると、あろうことか、胸の谷間に挟むようにぎゅっと抱きしめた。
………うっわあ。
冷たいのに柔らかくてむっちむちの感触にますます将生は気が遠くなる。
エレインは熱を帯びた声で、気絶寸前の将生にいった。
「このご恩、ぜひお返しさせてくださいませ………あ、そうだ」
エレインは、はにかみながら告げた。
「わたくしでよければ、マサキさんのお嫁さんになりますぅ?」
とんでもないことをいわれた。
「よっ、よよよ、嫁?嫁って、なにっ!?」
将生は声が裏返る。
王女を嫁?
どうやって嫁?
戸籍とか住民票とか婚姻届とかでの嫁?
状態のわりにはやけに現実的なことを将生は脳内で突っ込んだ。
エレインの新雪のような白い肌をほんのり上気させ、恥ずかしそうに甘い声でささやいた。
「なんなら、いますぐここで嫁にしてくださっても………せっかく2人きりですしぃ」
「っは!?はああっ!?!?」
ますますとんでもない事をい言われている。
「いやいやいやあの!そ、それは、それは、よよよ嫁って意味とたぶん違………」
だが抗議する将生の口を塞ぐように、エレインの紅い唇が寄せられる。
戸惑う将生。
高鳴る胸。
熱く高ぶるジュニア。
子作りには早過ぎる年齢。
だが、僕は男。
エレインが瞳を閉じる。
ヨシと覚悟した。
互いの唇が、ゆっくり、近づいていく!?
「嫁になどやるかぁ―――っ!?」
いきなり風呂場の扉が開いた。
驚いた将生にセリーヌの鉄拳が飛んで、エレインも弾かれたように体を離す。
「聞こえた聞こえたぞ。マサキ」
セリーヌは入ってくると、瞳を爛々と輝かせてエレインにいった。
「まだ、殿方との………ゴホッン、エレインは自分自身の立場を考えなさい。」
セリーヌの鉄拳がクリーンヒットした、将生はぐらりと目まいがしていた。
「マサキがもっと成長して、立派な殿方になったら、喜んで婿に迎えましょう?」
「えっ、子ども?マサキさんの?」
エレインは将生に目を向けると、ぼうっと頬を赤らめた。
「えっと、たぶん産めると思いますが、渡り人の殿方に嫁いて子を産んだ者もいると、書物に書いてありましたし、命の恩人であるマサキさんの子どもなら………喜んで………ぽっ」
いや勝手に決めないで。
将生はそういいたかったが、目まいが激しくて立っていられない。
「ダメ、駄目です。冗談じゃありません。」
想像した将生は、ぐらりと視界が揺れた。
もう立っていられない。
将生は狭い風呂場の壁に背を預け、ずるずると滑り落ちるようにへたり込む。
「おい、マサキ?」
セリーヌの声が飛び込んできた。
「だいじょうぶですか、 マサキさん…...」
「マサキ、しっかりしなっ」
遠のく意識の中で、心配そうなエレインの声と慌てるセリーヌの声とが、ぐるぐる渦を巻くように回りながらこだまして、やがてそれも暗闇の彼方へ消えていった。
翌日の朝を迎えて、昨夜のエレインの姿が頭の中に残っているが、2人の姿を見て疑問に思った事を聞いてみた。
「昨日もセリーヌさんを見て思ったけど、今日は2人共に何で、ミニスカートの格好なんですか?」
家にいるのなら、動きやすい衣服や楽な衣服を選んで着るのが普通だと思っていた、将生にとっては嬉しいのだが、少しだけ違和感を感じる衣服だった。
生け贄に出されていたエレインが、着ていたワンピースも太ももが半分ほどが隠れる程度のミニ丈だったし、目の前にいる2人の衣服も膝上15センチ以上の長さしかない。
「んっ?それは女性が膝上を隠すと、女神から見放されて、不幸な事が起きてしまうからだよ、それは遥か昔からの言い伝えだから、きっと、昔の渡り人の教えだろう?マサキのいた世界もそうだろ?」
「えっ………うん、そうだから2人の格好を見て、不思議に思っただけなんだ。」
(昔の渡り人って、男ばかりだったんだろうか?というか、先人の渡り人様、ナイスです。)
「それより薪割りはどうだった?」
「あった丸太は、だいたい薪にしました。」
「そうか、それで身体能力が上がっていることは確認出来たんじゃないか?」
「うん、驚いたけど向こうにいた頃とは、比べものにならないくらいに動けるかな!?」
「だろうなっ。」
「私が様子を見に来た時は、空中に投げた薪を浮いてる間に切ってたの、離れ技やってましたよ。」
「そうか?」
「いや、出来るかなぁって、思って練習してたら出来るようになって、俺も驚いてるよ。」
綺麗に同じ大きさに拘らなければ、6等分も出来るんじゃないかと、将生は少し自信を付けている。
「普通は、どれくらいの練習量が必要なのかはわからんが、数時間でそんな芸当が出来てしまうなら、魔法についても上達は早そうだ。」
「えっ、魔法を教えてもらえるの?やった!」
さっきまでの落ち込みはなんだったんだというぐらいに、将生は喜びすぎじゃないかというくらい喜んでいた。
魔法という不可思議なモノは、アニメの魔法少女やおとぎ話に出てくる魔法使いの起こす奇跡に、わくわくした者は多いはずだ。
将生も魔法という存在に心躍るものを感じていている1人だ。
「いつまでも私が通訳魔法をかけていては不便だしなっ、今日は言葉の勉強と魔法の基礎知識は、エレインに教えて貰いなさい。」
「うん」「任せて!?」
魔法の簡単な詠唱を唱える事を繰り返す、それは詠唱を覚えるのと言葉を言えるようにだった。
だが、将生は小さく言葉を繰り返したり、言葉に力を込めてみたり、意識を手に集中してみたりといろいろ試行錯誤してみるが、なんの反応もない。
何が悪いのかと首をひねるばかりだ。
その日は繰り返しだけで時間が過ぎていき、就寝時間となった。
次の日も、草を刈りながら、水をくみに行く時も独り言のように、同じ言葉を繰り返したが変化はなかった。
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