7.ヘタな嘘をつくと後悔する
どうしてこうなったのだろうか……。俺は自分の部屋で膝を抱えて座っている。
別に好きで婚約者を求めた訳じゃないが、初めて見る彼女に目を奪われた……だが…そんな俺の感動を返せと言いたい。
見た目はめちゃくちゃ好みだったし、おっぱいも大きさも感触も悪くなかった。なのに、性格が最悪だ。しかも人のコンプレックスを馬鹿にしやがるは言う事は聞かないし……良い所よりも悪い所の方が強い。俺が望んだ婚約者はあんな女じゃない!!
ある日家に帰ると、父の取引先の社長が家の門の前で…地面に頭を擦りつけていた。
近所の体裁もあるので、そういう事は辞めて欲しいのだが、こういう光景はたまに見る事もあったのである意味で日常の一部だった。
もちろん俺は無視して家へと入っていった。そのまま部屋に向おうとした所で珍しく昼間から家に居た父親に呼ばれた。
リビングに行くと、父とそして弟の幸哉がソファーに座っていた。
弟も居るという事は、おそらく大事な話なのだろうと思い身構える。
弟の表情も心なしか落ち込んでいるように見える。
「永遠、幸哉の隣に座ってくれ。少し話したい事がある」
言われるまま、ソファーに腰をおろす。
「話というのはな?二葉さんの所の霞ちゃんとお前を婚約させてはどうかと言う話がアチラから出てるんだ」
婚約の話がいきなり出るとは思わなかった。隣を見れば、弟が縋るような目でこちらを見ている。
弟は昔から霞の事が好きだった。
霞は俺と同じで来年高校生になるのだが、俺はどちらかと言うと霞よりも5歳年上の霞の兄と仲が良い。
弟は二つ下の学年で、霞からも本当の弟の様に可愛がられている。
いや、あれは可愛がられているではないな…甘やかされているのレベルだろう。
ウチに遊びに来た時、親の不在の時は決まって霞と弟は一緒に風呂に入っている。
きっと俺の親も向こうの親も知らない事だろう。
2人の関係がどこまで進んでいるかは知らないが、羨ましくは……ある。
俺だって女の子のおっぱいぐらい見たい、そして触ってみたい。
「永遠、聞いているのか?それでどうなんだ、お前は霞ちゃんをどう思ってるんだ?」
「霞の事を今まで意識した事がありませんので、どうと聞かれても何と答えていいか……。それよりもなぜ私なのでしょうか?」
「本宮家が二葉家と仕事上で切っても切れない仲なのは知っているだろう?幸いお前は忠君と仲がいい。だが、両家の縁をより一層強いものにする為に婚姻関係も結んでおくべきだろうと言うのが私達大人の考えだ。お前と霞ちゃんは同い年で仲が良い。その証拠に彼女はよくウチに遊びに来ているだろう?」
なるほど、父は弟ではなく俺と仲が良いと錯覚していたのか。
親父は何も分かっていない……。霞じゃ俺の相手には相応しくない。
小さいんだよ……おっぱいが。
それと、他の男と色々している様な女には興味無いんだよね…。
「ああ、なるほど……理解しました。一つお聞きしたいのですが、その話は私が来る前に幸哉にもしていたのではないでしょうか?」
「ああ……お前が帰ってくるまで時間があったので、先に話はしておいた。それがどうした?」
「そうですか……。その事について幸哉は何と?」
「どうして幸哉の話が出るんだ?私は今はお前に尋ねている。幸哉は関係ないだろうが……」
昔から弟は、見た目に反して気が弱い。父に意見するとか出来ないよな……まったく……手のかかる弟だぜ。
父も二人の関係を知らないから、仕方ないと言えなくもないが、もう少し他人の感情に関心を持つべきだと思う。
二人が仲が良いと言ったところで、その程度なら『だから何だと』言われかねない。
さて……どうやってこの場を回避しようか……。
「では、単刀直入に申し上げます。霞との婚約の話はお受けできません。理由として霞は、ひんにゅ……ではなく、私には既に心に決めた人が居ます」
思わず出かけた本音を飲み込む。とりあえず、心に決めた人が居るでこの場を乗り切る事にしよう。
安易であるが、きっとこれで引いてくれるだろう。
「そうなのか?永遠にそんな人が居たのか……知らなかったとは言え、悪い事をしてしまったな」
父と母は恋愛結婚だ。色々周囲から反対もされて苦労したらしく、出来れば子供達にはそういう思いをさせたくないと二人とも考えていると…以前母から聞いていた。
予想通りの展開に、笑い出してしまいそうになるがぐっと堪える。
弟の為にも、あともう一押ししておくか……。
「いえいえ、お気になされないで下さい。差し出がましいとは思いますが、一つ宜しいでしょうか?」
「何だ?言ってみろ」
「ご存知かもしれませんが、霞は幸哉とも仲が良いと思いますよ。私の帰宅よりも先に霞が来ている事もありますし、幸哉を自分の弟の様に可愛がっています。私から見たら、双方共に好意を持っているように感じます。一度、霞と二葉の家の方を交えて話をしてみてはいかがでしょうか?」
「幸哉、永遠の言ってるようにお前は霞ちゃんと仲が良いのか?」
父に話を振られた幸哉は頭を何度も振っている。
こういうのなんて言うんだっけ……。
ミュージシャンのライブとかで見る…あれ…なんだっけ……ヘッドバンキング!!
あの年でライブに行ったりしているのだろうか?
弟の新たな一面を知ったような気がする。
「そうか、霞ちゃんとの件は二葉の当主と改めて話し合う事にしよう。永遠、それでお前の相手の方はどんな人だ?家柄どうこう言うつもりはないが、一度会わせなさい。若いとは言え、結婚を前提としないお付き合いするなど相手の方にもご家族にも失礼だろうが。そういう半端なのは私は認めないからな」
げっ……。予想以上に頭が硬かった……。会わせろと言われてもそんな相手は居ない。
困って弟の方に助けを求めると…あからさまに目を背けられた。
お前の為に、兄が協力してやったのにこの薄情者がぁぁぁぁぁ。
今更嘘ですとも言えないし……言ったら言ったで、確実に説教される。お小遣いを減らされる可能性も有り得る。
「次の次の日曜日にウチに連れて来なさい」
「いや、それは相手の都合を確認しないと……」
「本当は今すぐにでも相手のご両親にも挨拶をしておくべきなんだぞ。あちらの都合も考えて、少し時間を空けてるのだから、それぐらい何とかしろ」
こうなってしまった父に逆らうのは時間の無駄だと長年の経験で理解した俺はそれ以上何も言えなくなってしまった。
「わ、分かりました……聞いてみる事にします」
困ったよな……どこかに婚約者になってくれそうな……可愛くて、慎みがあって、黒髪で清楚なお嬢様みたいな…巨乳の女の子落ちてないかな……はぁ……。
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