表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

サガシモノさん

サガシモノさんはポカポカさん(子供向け)

ゆるりと読んでいただければ、これ幸い。


 (ゆき)がいっぱいの(まち)に「サガシモノ」さんという男の人がいました。


 サガシモノさんは、()とし(もの)ばかりします。「うっかりさん」なんです。


 そのたびに、サガシモノさんは「どこかな、どこかな」と歌いながら、落とし物を探しています。


 いつも歌いながら探し物をしているサガシモノさんは、街でちょっぴり有名人。



             ◆*◆*◆*◆*◆



 雪の街はいつも寒いけれど、今日はいつもよりもっと(さむ)いみたいです。


「どこかな~、どこかな~」


 あれ? すぐそばの道から、サガシモノさんの歌が聞こえてくるよ。こんな寒い日でも、サガシモノさんはなにかを探しているみたい。


 ――今日は、なにをさがしているんだろう?


 今日のサガシモノさんは、お布団(ふとん)みたいにおおき~な白いコートを着て、首にはへびみたいになが~い緑色(みどりいろ)のマフラーをまいています。(あか)長靴(ながぐつ)()いているみたいです。


「どこかな~、どこかな~」


 サガシモノさんは、ぬくぬくポカポカ(あたた)かいです。でも、落とし物が早く見つからないと、こごえちゃいます。サガシモノさんは「さむがりさん」でもあるんです。だから、サガシモノさんはブルブルふるえています。


「ブルブル、どこかな~、ブルブル、どこかな~」


 それでもなかなか見つからないみたいで、サガシモノさんはシャリシャリと雪の上を歩きます。歩きながら、きょろきょろと地面を見ています。


 ――でも、サガシモノさんは首が痛そうだよ。どうしてかな?


 実は、サガシモノさんは見上げるほど()の高い人なんです。


 地面に落ちているかもしれない落とし物を見つけようとすると、どうしても首を下に向けなくてはいけない。だから首が(いた)くなっちゃうし、落とし物を探すのに時間がかかっちゃうのかな?


「こまったな、どこかな~、こまったな、どこかな~」


 あれれ? サガシモノさんは「こまったさん」になっちゃったみたいだよ。「うっかりさん」に「さむがりさん」、それに「こまったさん」。名前がいっぱいで、サガシモノさんは大変だね。


 すると、近くを歩いていた小さな男の子はいいました。


「サガシモノさん、どうしたんですか? また落とし物しちゃったんですか?」


 サガシモノさんに話しかけてくれた小さな男の子は、街いちばんの(やさ)しい男の子のポムくんでした。


 ポムくんに話しかけられたことに気が付いて、サガシモノさんは言いました。


(じつ)はね、お財布(さいふ)を落としちゃったんだ。今月分(こんげつぶん)給料(きゅうりょう)が入ってたんだよ」


 どうやらサガシモノさんは、給料の入ったおさいふを落としてしまったようです。


 サガシモノさんのお嫁さんは、街でいちばん(おこ)る「カンカンさん」として有名なので、このままでは大変(たいへん)です。離婚(りこん)危機(きき)ですね。だから優しいポムくんは心配(しんぱい)そうな顔をして言いました。


「え!? だいじょうぶですか? ぼくも一緒(いっしょ)に探してあげようましょうか?」


 するとサガシモノさんは言いました。


「いいのかい? 見つからなかったら、一張羅(いっちょうら)のコートを質に入れようと思ってたんだよ。ポムくんは優しいんだね」


 サガシモノさんが喜びました。しかし、ポムくんは首を振って


「いいんですよ。それに、ぼくも内緒で持ち出してきたお母さんの結婚指輪(けっこんゆびわ)をどこかに落としちゃったんです」


 と言いました。サガシモノさんは驚きます。ポムくんのお母さんは街で二番目に怒る「プンプンさん」なのです。サガシモノさんはポムくんの頭をなでながら言いました。


「それは大変だったね。ポムくんだけにずいぶんな爆弾(ボム)を持ってきてくれたものだね。……じゃあ一緒にさがそうか」


 ポムくんは(わら)って言いました。


「一緒に探しましょう!」


 こうして、サガシモノさんとポムくんは、一緒に探し物をすることになりました。


「「どこかな~、どこかな~」」


 二人は声をあわせて歌います。


 すると、少し歩いたところでサガシモノさんはポムくんに聞きました。


「ポムくん。指輪を落としてしまった場所に、心当たりはないのかい?」


 ポムくんは言いました。


「ランドフスキーさんの家の前を歩いていた時、いつの間にかなくなってたんだ」


 ランドフスキーさんの家は大きな犬を飼っていることで有名です。そこでサガシモノさんは言いました。


「じゃあ、ランドフスキーさんの家の前を探そうか」


 こうして二人はランドフスキーさんの家まで歩きました。


 少しして二人はランドフスキーさんの家の前にたどりつきました。ランドフスキーさんの家は、サガシモノさんの背と同じくらい高い(へい)(かこ)まれています。


 そして、ランドフスキーさんの家の前には、おとなしそうな犬が(すわ)っていました。そこでサガシモノさんとポムくんが犬の前までくると――


「わん。わん」


 突然、犬は大きな声で吠えました。二人は(おどろき)きます。


「「うわー」」


 びっくり仰天(ぎょうてん)した二人は、両手(りょうて)を上にあげて、そのまま雪の上に尻餅(しりもち)をつきます。


 どしゃんっ。


 二人ともお尻を痛めます。すると、サガシモノさんはあることに気が付きました。


「ポムくん。もしかして、さっき来たときも同じように驚いたのかい」


 ポムくんは、はっとした顔で答えました。


「はい! 同じ(てつ)()みました!」


 サガシモノさんは考えます。そして、サガシモノさんは、ランドフスキーさんの家の高い塀の上を見ます。そこで、サガシモノさんは、なにか見つけたようですね。


「あっ! ポムくん、あったよ」


 なんと、ポムくんのお母さんの指輪は、高い塀の上に落ちていたのです。


「やったぁ! ありがとうございます! そんな高いところにあったなんて、ぼく一人じゃ見つけられませんでした」


 ポムくんは指輪を受け取ると、笑顔で言いました。


 どうやら、ポムくんは最初に家の前を通った時も犬の鳴き声に驚いて、両手を振り上げていたようです。そこで、手に持っていた指輪が飛んでしまって、高い塀の上に落ちてしまったみたいですね。


 と、そこでポムくんは気が付きます。


「あっ! サガシモノさんのお財布もありましたよ」


 どうやら、ポムくんはお財布を見つけたようで、サガシモノさんに渡します。


「わぁ。これはサガシモノさんのお財布だ。ポムくん、どこにあったんだい?」


 ポムくんは言いました。


「ランドフスキーさんの家の前の雪にから、はみ出てたんだよ」


 どうやらお財布は、地面の雪に半分()もれていたようです。サガシモノさんは喜んで言いました。


「ポムくんがいなかったら、そんな低いところにあったお財布を見つけられなかったよ。さっきサガシモノさんもランドフスキーさんの家の前を通ったから、その時に落としていたんだね」


 お互いに「ありがとう」と言って、二人は笑顔になりました。そして、それぞれの家に帰りました。



 背の高いサガシモノさんと、背の低いポムくん。二人の見えている景色は違います。でも、(ちが)うからこそ支え合えるんです。別々(べつべつ)だからこそ、助け合えるんです。



 みんな、体の大きさも、考えていることだって同じではありません。それでも、みんなが違うことを(みと)め合って、受け入れることで人間は温かくなれるんです。



 ほら。サガシモノさんとポムくんの体はヒエヒエになってしまったけれど、こころはぬくぬくポカポカになったみたいですね。サガシモノさんとポムくんは最後に「ポカポカさん」になったみたいです。



 おしまい

 まずは、最後まで拙作を読んでくださって、ありがとうございました! 常日頃ジャージです!

 これ童話……?という疑問から始まり、童話っぽくしようとしたら「言いました」「言いました」「言いました」のオンパレードだな、おい!というツッコミの中で生まれた、構想・執筆一時間の拙作です。

 最初は「反面教師乙」とか言ってたはずのポムくんは忘却の彼方に消え去って、なんとか童話の体裁を保つに至った?のかな。


 ……と、「書き溜めている連載小説を出していければなぁ」などと妄想してニヤついきながら後書きをポチポチするジャージでした。それでは~。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 2人とも探し物見つかって良かったですね♪
2023/04/24 22:50 退会済み
管理
[一言] 犬にほえられてビックリしたサガシモノさんとポムくんが雪の上に尻もちをついたシーンが面白かったです。 なんてシュール。 なんて平和。 背の高さは違っても行動が同じで仲良しさんですね。 とりあ…
[一言] ポムくんとサガシモノさん、それぞれに助け合って無事に落し物を見つけることができて一安心です。自分の短所が相手にとっては長所になる、うまく組み合わさって素敵ですね。 それにしてもポムくん、な…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ