サガシモノさんはポカポカさん(子供向け)
ゆるりと読んでいただければ、これ幸い。
雪がいっぱいの街に「サガシモノ」さんという男の人がいました。
サガシモノさんは、落とし物ばかりします。「うっかりさん」なんです。
そのたびに、サガシモノさんは「どこかな、どこかな」と歌いながら、落とし物を探しています。
いつも歌いながら探し物をしているサガシモノさんは、街でちょっぴり有名人。
◆*◆*◆*◆*◆
雪の街はいつも寒いけれど、今日はいつもよりもっと寒いみたいです。
「どこかな~、どこかな~」
あれ? すぐそばの道から、サガシモノさんの歌が聞こえてくるよ。こんな寒い日でも、サガシモノさんはなにかを探しているみたい。
――今日は、なにをさがしているんだろう?
今日のサガシモノさんは、お布団みたいにおおき~な白いコートを着て、首にはへびみたいになが~い緑色のマフラーをまいています。赤い長靴も履いているみたいです。
「どこかな~、どこかな~」
サガシモノさんは、ぬくぬくポカポカ温かいです。でも、落とし物が早く見つからないと、こごえちゃいます。サガシモノさんは「さむがりさん」でもあるんです。だから、サガシモノさんはブルブルふるえています。
「ブルブル、どこかな~、ブルブル、どこかな~」
それでもなかなか見つからないみたいで、サガシモノさんはシャリシャリと雪の上を歩きます。歩きながら、きょろきょろと地面を見ています。
――でも、サガシモノさんは首が痛そうだよ。どうしてかな?
実は、サガシモノさんは見上げるほど背の高い人なんです。
地面に落ちているかもしれない落とし物を見つけようとすると、どうしても首を下に向けなくてはいけない。だから首が痛くなっちゃうし、落とし物を探すのに時間がかかっちゃうのかな?
「こまったな、どこかな~、こまったな、どこかな~」
あれれ? サガシモノさんは「こまったさん」になっちゃったみたいだよ。「うっかりさん」に「さむがりさん」、それに「こまったさん」。名前がいっぱいで、サガシモノさんは大変だね。
すると、近くを歩いていた小さな男の子はいいました。
「サガシモノさん、どうしたんですか? また落とし物しちゃったんですか?」
サガシモノさんに話しかけてくれた小さな男の子は、街いちばんの優しい男の子のポムくんでした。
ポムくんに話しかけられたことに気が付いて、サガシモノさんは言いました。
「実はね、お財布を落としちゃったんだ。今月分の給料が入ってたんだよ」
どうやらサガシモノさんは、給料の入ったおさいふを落としてしまったようです。
サガシモノさんのお嫁さんは、街でいちばん怒る「カンカンさん」として有名なので、このままでは大変です。離婚の危機ですね。だから優しいポムくんは心配そうな顔をして言いました。
「え!? だいじょうぶですか? ぼくも一緒に探してあげようましょうか?」
するとサガシモノさんは言いました。
「いいのかい? 見つからなかったら、一張羅のコートを質に入れようと思ってたんだよ。ポムくんは優しいんだね」
サガシモノさんが喜びました。しかし、ポムくんは首を振って
「いいんですよ。それに、ぼくも内緒で持ち出してきたお母さんの結婚指輪をどこかに落としちゃったんです」
と言いました。サガシモノさんは驚きます。ポムくんのお母さんは街で二番目に怒る「プンプンさん」なのです。サガシモノさんはポムくんの頭をなでながら言いました。
「それは大変だったね。ポムくんだけにずいぶんな爆弾を持ってきてくれたものだね。……じゃあ一緒にさがそうか」
ポムくんは笑って言いました。
「一緒に探しましょう!」
こうして、サガシモノさんとポムくんは、一緒に探し物をすることになりました。
「「どこかな~、どこかな~」」
二人は声をあわせて歌います。
すると、少し歩いたところでサガシモノさんはポムくんに聞きました。
「ポムくん。指輪を落としてしまった場所に、心当たりはないのかい?」
ポムくんは言いました。
「ランドフスキーさんの家の前を歩いていた時、いつの間にかなくなってたんだ」
ランドフスキーさんの家は大きな犬を飼っていることで有名です。そこでサガシモノさんは言いました。
「じゃあ、ランドフスキーさんの家の前を探そうか」
こうして二人はランドフスキーさんの家まで歩きました。
少しして二人はランドフスキーさんの家の前にたどりつきました。ランドフスキーさんの家は、サガシモノさんの背と同じくらい高い塀に囲まれています。
そして、ランドフスキーさんの家の前には、おとなしそうな犬が座っていました。そこでサガシモノさんとポムくんが犬の前までくると――
「わん。わん」
突然、犬は大きな声で吠えました。二人は驚きます。
「「うわー」」
びっくり仰天した二人は、両手を上にあげて、そのまま雪の上に尻餅をつきます。
どしゃんっ。
二人ともお尻を痛めます。すると、サガシモノさんはあることに気が付きました。
「ポムくん。もしかして、さっき来たときも同じように驚いたのかい」
ポムくんは、はっとした顔で答えました。
「はい! 同じ轍を踏みました!」
サガシモノさんは考えます。そして、サガシモノさんは、ランドフスキーさんの家の高い塀の上を見ます。そこで、サガシモノさんは、なにか見つけたようですね。
「あっ! ポムくん、あったよ」
なんと、ポムくんのお母さんの指輪は、高い塀の上に落ちていたのです。
「やったぁ! ありがとうございます! そんな高いところにあったなんて、ぼく一人じゃ見つけられませんでした」
ポムくんは指輪を受け取ると、笑顔で言いました。
どうやら、ポムくんは最初に家の前を通った時も犬の鳴き声に驚いて、両手を振り上げていたようです。そこで、手に持っていた指輪が飛んでしまって、高い塀の上に落ちてしまったみたいですね。
と、そこでポムくんは気が付きます。
「あっ! サガシモノさんのお財布もありましたよ」
どうやら、ポムくんはお財布を見つけたようで、サガシモノさんに渡します。
「わぁ。これはサガシモノさんのお財布だ。ポムくん、どこにあったんだい?」
ポムくんは言いました。
「ランドフスキーさんの家の前の雪にから、はみ出てたんだよ」
どうやらお財布は、地面の雪に半分埋もれていたようです。サガシモノさんは喜んで言いました。
「ポムくんがいなかったら、そんな低いところにあったお財布を見つけられなかったよ。さっきサガシモノさんもランドフスキーさんの家の前を通ったから、その時に落としていたんだね」
お互いに「ありがとう」と言って、二人は笑顔になりました。そして、それぞれの家に帰りました。
背の高いサガシモノさんと、背の低いポムくん。二人の見えている景色は違います。でも、違うからこそ支え合えるんです。別々だからこそ、助け合えるんです。
みんな、体の大きさも、考えていることだって同じではありません。それでも、みんなが違うことを認め合って、受け入れることで人間は温かくなれるんです。
ほら。サガシモノさんとポムくんの体はヒエヒエになってしまったけれど、こころはぬくぬくポカポカになったみたいですね。サガシモノさんとポムくんは最後に「ポカポカさん」になったみたいです。
おしまい
まずは、最後まで拙作を読んでくださって、ありがとうございました! 常日頃ジャージです!
これ童話……?という疑問から始まり、童話っぽくしようとしたら「言いました」「言いました」「言いました」のオンパレードだな、おい!というツッコミの中で生まれた、構想・執筆一時間の拙作です。
最初は「反面教師乙」とか言ってたはずのポムくんは忘却の彼方に消え去って、なんとか童話の体裁を保つに至った?のかな。
……と、「書き溜めている連載小説を出していければなぁ」などと妄想してニヤついきながら後書きをポチポチするジャージでした。それでは~。