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三日月草子  作者: PQ
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第十三話


「着いた……」

僕らはとうとう火柱の発生元である東大寺に辿り着き、東大寺の手前にある母屋造りの楼門、中門の前に立っていた。

ゆっくりと空を見上げると、凄まじい火柱が天に伸びるように立ち上っている。

でも、炎が門を遮っているせいで、中に入る事すら出来ない。

いったいどうやって中に入ればいいんだ?

と、頭を悩ませていると、急に門の炎の威力が弱まり、まるで僕達を歓迎するかのようにぽっかりと空洞ができた。

「どうやら大嶽丸は私達を招き入れたいみたいね」

沙梨亜は緊張気味にポツリと呟く。狐耳と尻尾もへんにゃりしていて元気がなさそうだ。

「沙梨亜……準備は良い?」

僕もゴクリと生唾を飲み込んで沙梨亜に尋ねた。

「あんたこそ、分かってる? ここに入ってしまったら大嶽丸を倒さない限り、もう出てくる事は出来ないわ」

そんな事、言われなくてもとっくに分かっている。

「最後の……景色かもしれないね」

僕は沙梨亜の手を握った。沙梨亜の手は仄かに暖かく、緊張が少し和らぐ。

「馬鹿な事言わないでよ! あんたは大嶽丸を倒すんでしょ! 何弱気な事言ってんのよ! あんたが死んだら私は絶対に許さないから!」

ふと、沙梨亜を見ると、沙梨亜は瞳に涙を溜めながら僕を睨みつけていた。

沙梨亜の言葉にハッとする。

「そうだね。ごめんね。僕らにはあの初代がついてるんだ。絶対に大嶽丸を倒して帰れるさ。弱気な事言ってごめん」

僕は沙梨亜の手を離し、炎の勢いが弱まった門を見た。

僕に出来る事はただ一つ。

今まで鍛えに鍛え上げた毘沙天神を大嶽丸に叩き込む。ただそれだけだ。

僕はもう一度深く深呼吸をし、覚悟を決めた。

「沙梨亜、行くよ」

「ええ」

僕らは最終決戦の舞台に向けて一歩踏み出した。

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