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エコー  作者: たかさば


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胸がざわめいた

 なんだか、今日のアッシュ君は、いつもと…違う感じがする。


 ゲームコーナーではしゃいでいた時はクールでスマートな感じで…しごできイケメンそのものだったんだけど。

 お迎えに来てくれたアッシュ君は、いつも以上になんていうか…焦っていた?


 最近ずいぶん成長してきて、落ち着いた感じになってはいたんだけれど…別の方向から頼りない部分が顔を出してきたような…微妙な、違和感?


 私を迎えに来た、青い目のアッシュも。

 私と本屋さんに行った、茶色い目のアッシュ君も。

 買ったレシピ本を持ってくれた、青い目のアッシュも。

 見えない触手でマンションのドアを開けてくれた、緑色の目のアッシュ君も。

 モエちゃんの突撃をかわした、茶色い目のアッシュ君も。

 赤魚の鱗を目にいれようとした、緑色の目のアッシュ君も。

 鍋掴みをそっと手渡してくれた、茶色い目のアッシュ君も。

 ご飯を飲みこんで小骨を取ろうとした、緑色の目のアッシュ君も。

 お茶碗を一緒に洗っていたら、いつの間にか青い目になっていたアッシュも。


 なんか…なんか、いつもと空気?が違う。

 漂うエコーが、ざわめいているような?

 私にはエコーは視認できないけれど、なんか…なんか、落ち着かない。コレってもしかして、アッシュ君のエコーに影響されていたり、する?


 そもそも、こんなに…目の色が頻繁に変わる事なんて、なかった。


 今までは、衝撃があったり、時間を置いてみてみたら変わっていたことが多かったんだけど…、今日は少し目を逸らして、また目が合った時には色が変わっているなんてこともあったりして、正直驚いているというか。どんなタイミングで変わっているのかわからないうえに、こんなにもすぐに切り替わるものなのかなっていう違和感がすごい。


 さすがに気になってしまって、さりげなく聞いてみたんだけれど。


 ―――なんかちょっと胸がドキドキ?!その振動で切り替わりが!でもいろんな僕が見えて面白いでしょう、ええと人は自動的に切り替わりがですね!ああでも人間の目では判別できなくて~!!!はんべつといえば、はんべんという魚類のすり潰し料理が!社長が筋肉になる上にうまいと!


 ―――…ごめんね、心配かけてしまって。僕の事を思ってくれるスーちゃんの気持ちがうれしい。でも、…うん、大丈夫だから。ありがとう。


 ―――そんなに気になるなら…、ずっと見つめていていいんだぜ?色が変わった瞬間が見られるかどうかは、わかんねえけどな。……チュッ!!


 あ、安定のっ!!

 く、くちびるを奪われるパターンがね?!

 昨日は珍しくキスされない一日だったのにねっ?!


 なんていうか…、本人も予想してなかった現象?らしく、戸惑いと精いっぱいの強がり?のようなものが窺える。

 あらゆるものが駄々洩れになりがちなアッシュ君はもちろん、落ち着き払っているアッシュ君も強引な展開で振り回すアッシュにも、感情が見え隠れしている。

 焦っているような、驚いているような…、何だろう…、何かを隠していることがまるわかりというか…。私でよければ力になるよって言ったんだけど、結局核心に触れることができないまま、スルーされてしまった。


 もしかしたら、私の知らないところで宇宙的な大問題が発生した可能性もあるから、あんまり首を突っ込まない方がいいのかなという気持ちはある。

 ただの一般人である私にはどうすることもできないような事もたくさんあるだろうし…何より、下手に首を突っ込んだら、とんでもない展開が待っている可能性もあるというか!!


 少し前にタワマンの駐車場で遭遇した女の子がいたんだけど、タワマンの一室を強制調査したらぞろぞろと同じ肉体が出てきたというお話を聞きましてですね。なんちゃら星人は一体いたら30体は発生しているとかなんとか…まるで地球上の黒い悪魔のような物言いを聞いて、震えあがってしまった経験がですね?!



 チャプ、チャプ…。

 〜♪


 胸にモヤモヤしたものを抱えながら、モエちゃんと一緒にお風呂に入って…窓から夜景を眺める。


 モエちゃんにとって湯煙は心地の良いものではあるらしいんだけど、さすがにお湯に入るとしおれてしまうらしく、小さな手桶に水を張って出窓のところで一緒に入浴中なんだ。シャワーで器用にプロテインのついた根っこを流すのがかわいいくて、ついついじっくりと眺めてしまったけれど、失礼じゃなかったかな…。わりとこう、お風呂での人様の視線というのは、見られる本人からするとかなり相当丸わかりで不躾で……。


 〜♪

 ごきげんな鼻歌が聞こえてるから、多分大丈夫…だよね?


 ザブリとお湯をすくって、バシャバシャと顔を流し、大きな窓に目を向ける。

 最上階だからか、実に見晴らしの良い窓が大きな湯船の真横に設けられておりましてですね。都内のホテルだったら一泊五〜六万するレベルの絶景、絶景!

 あああ、贅沢すぎてなかなか慣れないんですけど!


 〜♪


 …モエちゃんの鼻歌で、ちょっぴり落ち着きを取り戻し。しばし、夜空に吸い込まれてみる。


 ……。


 今日は月がとってもきれい…。

 昨日は雲が多くて何も見えなかったからなあ…。


 ……。


 月だよね、あれ……。


 ……うん、なんか急に丸くなったけど、たぶんあれは月なんだね。

 最近の月は、雲を避けて移動するようになったんだね!!


 なんか近づいているような…、うん、気のせいかもだけど、見なければ多分ね、これ以上は気にならないハズなんだよね。


 上げてあるブラインドを下げて、お湯を抜いて、あがって、モエちゃんが持ってきてくれたふかふかのバスタオルで身体を拭いて、濡れた髪をタオルでまとめたあとお掃除をして、歯磨きをして、バスルームを出ると。


「よく温まった?寒くなってきたから…ちゃんと髪を乾かそう?」


 ドライヤーを持った茶色い目のアッシュ君が待ち構えてる!

 なんかちょっと気恥ずかしくて、視線をさり気なく足元のモエちゃんに向けると。


「僕、長い髪を乾かすの得意なんだ!髪の毛屋さん体験では一番チリチリにできてね、みんながすごいすごいと!大丈夫、ちゃんとクシを通したらしっかり伸びるで!」


 やけにはりきった声が聞こえて!

 慌てて視線をもとに戻すと、緑色の目をキラキラと輝かせた青年が!!


「えっと!私は、髪は自分で乾かしたいタイプなの!だ、だから…おやすみなさいッ!」

「…うぅ、おやすみ、スーちゃん…って!モエちゃんズルいや!なんで一緒に寝るん?!僕も!」


 〜!

 〜?!


 バシッ!

 バサッ!


 〜♪


「フヒーン、じゃぁまたあしたおはようするね、スーちゃんおやすみ…ぐすん」


 ひ、ひと仕事終えたモエちゃんと一緒に、自分の部屋に向かったのだけどもっ!


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