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エコー  作者: たかさば


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しましまコンビがはしゃいだ

「みてみて♡どお?これね、うちの奥さんがデザインしてくれたの♡背中にはね、ほら、僕と灰島君が♡かわいいでしょう、キッズコーナーにピッタリ♡」


 金曜日、玄関掃除の当番の仕事を終えて朝のミーティングに向かうと、やけに可愛らしい格好をした癒し系が…目をキラキラと輝かせて近付いて来てね?!

 クリーム色とホワイトのボーダーTシャツに、スカイブルーグラデーションのエプロン、背中にはカワイイ似顔絵イラストと『キャハ☆パーク』のロゴ!!


「似合うかな…?」


 テンション高く腕を広げたりくるりと一回転したりしてはしゃいでいる牛島さんの後ろから、茶色い目のバイト君が顔をのぞかせ!


「うん、二人ともすごく似合ってる!ほのぼのとしていて、それでいてちびっ子ウケの良さそうな、保護者の皆さんもすぐにコーナー担当者はあの人だってわかりやすそう!!」

「でしょう♡でね、これね、なんでボーダーかっていうとね、僕も灰島君も【島】が付くでしょう、だからしま模様にしたんだ♡島島コンビだから、ネッ♡」


 仲良く腕を組んで、胸を張る…凸凹コンビが目の前に!!!


 この牛島さんの機嫌のよさ…ホビーコーナーの大改装で勢いづいているとしか思えない!!

 若干他の従業員の皆さんの見る目が、生温かいような気がしないでもないけど…それは、それ。メリーゴーランドとしては、久々にキッズコーナーが再開するとあって、めでたいことこの上ないっていうか!!!


 ゲームコーナーの一角にある子供向けの遊び広場『キャハ☆パーク』は、室内遊園地として人気の高い場所だったのだけど、人員不足で閉鎖を余儀なくされていて…ずっと再開要望の声が届いていたんだよね。


 お買い物ついでに遊べるので便利なのはもちろん、わりと長めの滑り台やボールプール、はだしで遊べるブランコに手動で動くカート、おままごとブースに無料ゲーム機等々、ちびっ子たちが夢中になって遊べる工夫が施されているうえに、パパママおじいちゃんおばあちゃん用にマッサージチェアやロッキングチェア、ハンドマッサージャーやフットケアマシンなんかも置いてあるので非常に人気が高くてですね。

 10分100円という金額設定は市内でもトップレベルのリーズナブルさで、簡単にお試しできるという意味でも利用者が多かったのですよ。駐車場完備だし、雨でも遊べるし。


 ゴールデンウィークや市民祭りの日なんかは入場制限をしないといけないくらい利用者が多いので、保護者同伴で入場するというルールがあってもキッズコーナー専任のスタッフを配置しなければならず、バイトがゼロという過酷な環境下ではどうあがいても閉鎖一択で…苦渋の決断をし続けていたゲームコーナー担当者がおりましてですね。

 ……そうだなあ、久しぶりの再開だもん、そりゃあ…はしゃぎたくもなるよね。


「今日から僕が主に担当することになったので…フォロー、お願いしますね」


 ニッコリと微笑みを向けるアッシュ君…心なしかうれしそう?

 うん……絶対に、ご機嫌だ!!

 コーナーをまるっと任せてもらえた自信のようなものが……。


「あー!あたし手伝いに行ってもいいよ!!今日は午前中でレジ上がりだし!!」


 もう新人バイトだなんて言えないな…、そんな事を思っていたら、アッキーが髪をくくりながらやってきた。この子は本当に人懐っこくて…フレンドリースキルを兼ね備えていて、物おじしないというか、なんというか。


「秋野さん、お気遣いありがとう。でもごめんね、まだ初日だし動線の確認とかしないといけないから、お気持ちだけ受け取っておくね。年末年始になったらお願いするかもー」

「ええー?!あたし年末年始ちょー休むから無理―!!なんだあ、ハイジと一緒に遊べると思ったのに!!ねえ?!」


 同意を求めようとしたアッキーが…勢いよくアッシュ君に視線を向けて、詰め寄ると。


「ごめんなさい」


 ぺこりと頭を下げて、あやまっている。

 その表情は、やや緊張しているような…?


 パリピの強気な物言いに怯んでいたりするんだろうか……。




「どうだカッシー!!俺めちゃめちゃ頑張ったんだぞ?!南大谷さんと牛島さんがガッツリスクラム組んじゃってさあ、微塵も反対する余地がなくてだな!!広重君にも頑張ってもらったんだけど、スポーツの方大丈夫だったかな?もしかして不都合とか出てたんだったら申し訳ない…」


 ミーティングが終わってメンテナンスをしていたら、店長がテカテカした顔でやってきた。

 ずいぶん饒舌なのは、きっとホビーコーナーの仕上がり具合を自慢したい気持ちがあるからだと思われる。…うん、確かに自慢したくなるよね!


「全然大丈夫です!もともとイベント終わったあとだし、ちょっと売り上げは落ち着いちゃってたんで…。でも、三階がこんなに魅力的に生まれ変わったから、スポーツコーナーも元気を貰えて助かってるんですよ!!すごくいい雰囲気ですよね、大幅改装といい方向性の転換といい…大成功だとしか思えません!!さすが店長です!!!」


 豪快で思い切りのいい小久保さんが店長だったからこそ、この三階は生まれ変わることができたのだと思う。社員を信じて、自由にやらせてくれる、懐の広い店長だもん。

 ……売上とか、前例とか、他店舗とか、常識を訴えて…何もさせないような人が店長だったら、きっと…見やすくて分かりやすいだけの、ただのおもちゃ売り場にしかならなかった、ハズ。


「ハハハ!!そうだろう、そうだろう!!この調子でクリスマスイベントもはっちゃけよう!!企画はすべて通ったんで、あとはスケジュールと商品の手配、人員配置の確認を詰めていかないとな。南大谷さんから聞いた?ミシン持ち込んでこっちで衣装作るって話」

「聞いてます、連休中に仮縫いして、こっちで仕上げるとか…」


 より良いコスチュームを作るために、経費の上限交渉を粘り強くおこなった結果、満足に行く金額を提示されたとのことで…昨日、全身をきっちりと測定されてしまった私がおりましてですね。バストウエストヒップに首回り腕回り足首回り…バッチリしっかり私のサイズが、サイズが―――!!!


「はりきってるなあ…南大谷さん。ちょいちょい暴走しがちな人だって聞いてたけど、無理しないようそれとなく注意しといてもらえると助かる。肝心のイベント前に倒れてしまっては元も子もないからな。カッシーもだぞ、健康第一で頼むわ!今日の昼は俺が三階はいるから、昼になったら放送かけてくれ。もしレジが混んだりしたらすぐにフォロー要請の放送をしてほしい、せっかく集客できても、お客様に不快な思いをさせてしまってはマズいからさ」


 今日はヒロシがお休みなので、夕方まで一人で3階を見て回らなければいけない。

 平日だしチラシも入っていないから多分大丈夫だとは思うけど、SNSにホビーコーナーのことを投稿する人もぽつぽつ現れているので…気が抜けないんだよね。


「了解です!ありがとうございます!」


 よーし、無理せずに頑張るぞ!!


 おー!!





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