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エコー  作者: たかさば


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体験教室が始まった

≪≪♪1、3、2、2、豪快ラジオ♪…おはよーございまーす!11月11日、水曜日!いつも油ギッシュテカテカマスター、トニーと!蝶のように鱗粉をまき散らし蜂の様にぶっ刺す角田の!トニカク言ってみ~よ、はーじまーるよー!本日も元気いっぱい、楽しい話題をお届けいたしまぁす!ちょっと聞いてくださいよトニさん、昨日さあ……≫≫


 愉快なミュージックとノリのいい掛け合いの流れる車内には、やけに上機嫌で運転席に座っているイケメン宇宙人。


「~♪へふんへふん♪~ほんでれげっぺ、むっくむっく♪はぁ~♪」


 ずいぶん朗らかに鼻歌?いや、よく分からない言語の歌を口ずさみながら、非常に安全運転を勤めていらっしゃる!!


 穏やかなハンドルさばきにスムーズな加速、ブレーキの踏み込みの繊細さにドライブマナー、どこをどう見ても優良ドライバー!!

 全然知らない曲だけど、なんかめちゃめちゃ上手いような気がする、なんていうんだろ、ビブラートとか、しゃくりって言うのかな…ええと心地のいい声って言うか…こういうのってなんだったけ、エフ分の揺らぎ?とか何とかいうやつだよね、多分。なんかずっと聞いていたくなるような、うっとりする歌声……。


 ……しまったなあ、さっきちょっと褒めすぎたから、ご機嫌になり過ぎちゃってるのかも。あんまり喜び過ぎちゃうと、揺り返しが怖いなあ…下手に怒れなくなっちゃうというか。


 でもね、どうしてもすごいねって言ってあげたくなっちゃったんだよね……。昨日自作のゲームを見せてくれたんだけど、その出来がすごく良くて!!!

 立体的なもぐらたたきゲームみたいなマッチョ叩きゲームなんだけど、操作性といい適度な中毒性といい、とても昨日までパソコンの使い方にぎこちなさを感じた人とは思えなくて、思わず夢中になってプレイしてしまった挙げ句、ちょっとパスタが軟らかめになっちゃったという…。

 延々遊ぶタイプのものだったから、ストーリーを盛り込んでクリア要素を付けたら目指すものがあって良くないかなって提案したらさっそく作り上げてくるんだもん、そりゃあキッチリ褒めたくなるでしょうってね?!


「うふん、スーちゃん、あと2分24秒で第一目的地に着くよ!ええと、今日はまずいっしょにご飯を食べて、紙作り体験をするでしょう、そんでもって一緒にキャッキャうふふしたのち古いお屋敷にお邪魔して、縁側で日向ぼっこしてそのまま一緒にうたたねからの…膝に枕が!!ねえねえ、僕お泊りセット持ってきてないよ、どうしよう?!いやパジャマが無くても素肌でそのまま抱きあ

「うんとね、古いお屋敷は見学するだけで入れないかもしれないの、寝転がれないと思うよ?!」」


 アアア!!!

 優良安全安心運転しながら、人の心を翻弄させるような怖い事言わないで―!!!



 本日私とアッシュ君がやってきたのは、隣県の山間部にある『どいなか村』という体験型の野外博物館。ここは大昔の日本の家屋を複数移築した小さな村のようになっている施設で、豊かな大自然と融合した人気スポットなんだ。


 村のあちこちにある古民家は、そのまま中に入って楽しむことができるものもあるけれど、カフェやお土産屋さん、民芸品などの体験施設なんかになっているところもあって、見どころ・お楽しみどころがたくさんあるんですよ。


 広場付近には地元のグルメが屋台で勢揃いしているし、釣り堀や子供たちに人気のロング滑り台なんかもあって夏休みや冬休みには結構にぎわうのだけど…今日は11月初旬の平日という事もあって、やや人は少なめ。これなら多少うっかり者の大暴走宇宙人がやらかしても多分おそらく大丈夫…と思いたい……。


「ねえねえスーちゃん、あの泥んこみたいなのはなあに?すごいねえ、ここの牛は自分を食べてってお願いするんだね、これはぜひ美味しく食べて差し上げねばね!ちょっとまって、あれはもしかして※♯オンドレア人じゃん!!ほっめけ星雲吹っ飛ばして成敗されたと思ったらこんな所で食料になっていたとは!!うーん、これは写メ、写メ!!!」


 ああ…ずいぶん普通の人っぽくなってきたけど、やっぱりまだまだ生粋の落ち着いた日本人青年とは言い切れない!!勘弁してほしいけど、ここでおかしな声をあげるわけにはいかない、少々こわばった笑顔を目を爛々と輝かせている観光青年に向け、ご説明などをですね?!


「うんとね、あれは五平餅って言ってね、茶色いのは泥じゃなくて甘いお味噌なんだよ、あの牛さんはイラストだからね、お店の人が描いただけであって本物の牛はも~としか言わないんだよ、あれはイカの姿焼きだね、ぷりぷりして美味しいの、食べてみる?!」


 とりあえず何かを口に入れてモグモグしているうちは、おかしなことは口走らないはず!!


「うん、じゃあ僕は五平餅と牛さんの肉片、オン…イカを頂くよ!!ねえねえ、あとね、こないだ食べたさあOCTPDの末裔‥あのあそこのお店の丸いの、買っていい?すっかりおいしくて食べたくてたまらないんだよ、買ったら食べすぎかしら…」

「タコ焼きだよね?!半分づつ食べたらちょうどいいかな?買おっか!じゃあ…一人で買ってみて!!もう買えるよね?カッコよく買うところ、見たいな!!」


「はーい♡見てて♡……すみません、たこ焼きを一つ下さい。ここで食べるので袋はイイです、爪楊枝をふたつもらっていいですか?…マヨネーズも鰹節もありでいいです、うわぁ♡ホントすっごく美味しそうですね、食べるのが楽しみです、ありがとう!!」


 実に丁寧且つスマートに、気の利いたセリフまでさり気なく添えて買い物をする宇宙人、宇宙人っ!!!

 多分この人、そこら辺の横暴な人よりも3倍くらい良い人…好青年だよね、たぶん……。



 広場の飲食ブースで少し遅めの朝ご飯を食べた後、きっちりゴミを片付けテーブルをきれいにしてから、紙漉き体験をするために小高い丘にある古民家に向かうことに。

 ここの体験教室は繁忙期だと二、三か月前に予約を入れないと体験できないくらい人気なんだけど、昨日の夜にノートパソコンでHPを見たら空きがあったので、すかさずネット予約をいれた次第。


『どいなか村』の近隣は和紙産業が盛んだそうで、近くにはいくつも工房があるのだそう。今日講師を務めて下さっている奥さんも、普段は工房でちょうちんやお雛様、はがきなどいろいろと作っていらっしゃるんだって…。


「あ、もっとね、ゆっくりすくってください…平行にゆっさゆっさとゆすって…うん、お上手ですよ!」

「はい……」


 真剣なまなざしで大きなシンクの中の白く濁った紙のもと?をすくうアッシュ君…へらへらしてないから、口数が少なすぎるから、真剣な表情がね?!カッコよさがね?!ううっ、なんか顔が熱いような!ここ、空調が利き過ぎてるのかもっ!!!


「お姉さんは上手ですねえ、繊細で丁寧な動かし方…これはイイ和紙になりますよ!」

「は、ハハハ!!あの、私その、二回目、二回目なんです、前にはがきをすきゅって、乾かして、はさみでチャキチョキして、ええとここの下の丸いぽしゅとに投函して、切手をボンドで貼り付けてでしゅね!!!」


 不意を突かれて話しかけられたせいで…情けない返ししかできない、私、私っ!!!


「あ、そうなんですね!じゃあ今日もぜひお手紙、出してってください!今ね、スタンプめちゃめちゃ増えたんですよ!もうね、皆さん選べないって苦情が出るくらいあって!!」


 紙を乾かしている間に選んでおいた方がいいですよとアドバイスを頂いたので、工房の端にある大きなテーブルに向かうと…ちょっと待って、壁一面にスタンプがびっしりと並んでる!!二年前に来た時はせいぜい50個くらいだったのに!!これは確かに…選べない!!!数の多さに圧倒されて、思わず見入っていると!!!


「わあ♡これはすごいや!フウム、これはエコーの形だね、おやこれはゲノムの痕跡じゃないか、へえこの配列の存在を知らないのに形として認識しているとは…恐るべしDNA!!これは今度の学会で…うわ、こんな模様公共の場所に飾っておいていいの?!やばいじゃんね、幼気な少年が大暴走してまうがな!!ああー、この配列じゃあ魔法は起動しないね、これじゃあ隕石は呼べないなあ…つかココこれマジやバス、これ♯Ш∇星人の大嫌いなワードだよ、こんなん見たら分子破壊光線ぶっ放されても仕方ねーべや、移動したらな!!!これだから古代文明は…

「アッシュ君、これはただのスタンプでね?!ええと、こっちのゴム面にインクを付けて紙にポンってやると、同じ模様が何個も描けるというか、そういう類の物であって、決して恐ろしいものではたぶんない!!!」」


 大きなスタンプを凝視して何やら渋い顔をしながらあちこち入れ替えている、宇宙人の優秀な研究者!!!


 あああ、勘弁してえええええ!!!!


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