表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エコー  作者: たかさば


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/85

好みがバレた

「うんと、この【←】は、マウスを使うと決まっているんだよね!電子に電気を流すのではなく、器具を使って移動距離を伝えるというまどろっこしい方法を用いないとシナプスとの結合が…フミフミ、前から思っていたのですが、ダブルクリックという運動はかなりそうとうウルトラいい感じの力加減が実に難しく、うっかりこの前握りつぶしてしまって困ってたの、教えてくれてありがちゅー!…ええと、こんぐらいでいいかい?」

「うんとね、もうちょっとリラックスして、そっと握ると良いと思う!そうだなあ、…私と手を繋いでいる時の感じで、そっと…うん、そうそう、力入れなくてもちゃんと反応するよ、上手、上手!」


 只今の時刻、18:00ちょうど。私は、物分かりがいいんだか良くないんだか器用なんだか不器用なんだかわからない、しかしながらききわけはずいぶんよろしい青年にパソコンの使い方について指導をしていたり。


 終業後に一緒に私のおうちに向かう道すがら、パソコンの使い方を教えてあげようかって話をしたら俄然はりきっちゃって。ご飯はあとでいいからとりあえず全部教えてとか暴走し始めてしまったので、興奮していては落ち着いて学ぶことはできませんよとお灸をすえて。ド派手に凹んで、なぐさめながら炊き込みご飯と田舎汁の準備をし。只今ご飯が炊けるまでの40分を使って、待望のパソコン教室をひらかせてもらっているのですよ。


 どこでどんな重大な知識の欠落があるかわからないのは今までのハプニング等々で十分学んでいるので、もうすでに知っていることかもしれないけど念のためにゼロからキッチリと説明する事にしたら、それがずいぶん功を奏しているみたいなんだよね。目をキラキラと輝かせつつニコニコしながら、素直に私の説明の言葉を聞き入れ、おっかなびっくりマウスを動かしていらっしゃる。


 会社のデスクトップパソコンと違って、ノートパソコンだからなのかな?どうも…使い勝手が違うらしく、昼間のスーパーバイトっぷりが嘘のように初心者丸出しになっているのがなんとも。あれかなあ、実は意外と柔軟性が利かないというか、機械が違うと別物と思っちゃうって事なんだろうか。


 とはいえ、どうやら地球に来るにあたって一通りのパソコン操作方法は学んでいるらしく、ところどころ私の知らない情報を伝えながらできる事を披露してくれているので…下手に先生面ができないと思わせる部分もしっかりある。決して上から目線ではなく、私の知識を分けてあげるという意気込みで、誠心誠意学びの場を提供させていただくという立ち位置をですね。


「えっと、文字は打てるんだよね?キーボードの日本語とアルファベットの切り替えはこのボタンで…うん、左上のココ押してみて?…ほら、文字が切り替わったでしょう」

「ローマ字、ヘボン式、ええとかなきー?できるよ!!見れ、この入力技術を!!このパソコンは筋肉を使って入力するタイプのコントローラー、あちこちに飛んでいる電磁波をガン無視してわざわざ末端神経を活性化させ肉体を操縦し…素晴らしい、人間の神秘ってこういうところなんだよ!!これはぜひともふうむ、ちょっと待ってこれは入力すべき言語の認識が設定されていると…フェニキアないんか、なるほど国語というものの在り方が…どお、ちゃんと六法全書の導入部分、入力できてるでしょ!!あ、罫線ってどうやって入力するんだっけ??」


 アッシュ君って子供っぽい所があるから、知ってることを教えるとちょっと拗ねちゃうようなところがあるんだよね…。でもって、できるんだぞってところを思いっきり見せつけてくるような…うん、なんか小学生…いや、中学生?男子みたい。無邪気に質問してくるあたり、反抗期前のあどけない時代を思わせるというか。


「すごいね、ちゃんと入力できてる!さすが!!えっとね、罫線はね、けいせんって入力すると出てくるよ!!」

「ほんとだ!!すごいや!!ようし、じゃあ次は数字を入力だ、ねえねえ見てみて!!今から星間距離における絶対比率を入力してくから!!sin−1e…」


 ……気のせいかな、なんか私、子育てしてるお母さんになった気分が。うん、いつものことだった。


 ぴー、ぴぴーっ、ぴぴーっ!


「あ、スーちゃん、ご飯が炊けたよ!僕ジャーあっちに持って行きたい!勉強を終えたいのだけど、パソコンの息の根を止めるのはどうしたらいい?あのねえ、たぶん真っ二つにしたら通電が阻害されると思うの、あってる?大丈夫、放電されるときに分子を♯%√∽しないから空間がねじれる事もないよ!!はよ食べなうま味が消えてまうがな、学ぶのは次のノウトでやればいいじゃんね?」

「あってないかな、あのね、ノートパソコンは使い捨てじゃないんだよ、一回一回きちんとシャットダウンしないと壊れちゃうの、まずは左下のこのマークをクリックしてね?!」


 何とか初任給で購入した愛用ノートパソコンを守り通し、美味しくご飯を食べ。


「ねえねえ、スーちゃん、もうちょっとパソコン勉強したいな、ダメ?ええと壊さないようにするし壊れたら取り寄せる、やり直してもいいよ!アアアでも中身が消えるかもだった、ううむ繊細な二次元データ、そうだヤバくなったらようじ君に頼もう、だからだいじょうび、お願いやらせて!!」


 一緒に洗い物をしたあと、いつものようにお茶を飲みながらマッタリおしゃべりをしようと思っていたんだけど、熱心な青年はどうやら時間の許す限りまたパソコンに触れたいみたい。


 ……そうだよね、せっかく覚えたことは、ちゃんとできてるか確認したくなるものだもんね。


「ふふ!!いいよ!じゃあね、ここから見てるから、ひとりでパソコンのスイッチを入れて、検索サイトをひらいてみて?」


 電気ポットでお湯を沸かしながら、声をかけつつ一人で一からやらせてみる事にしてみる。


「わかりた!!!ありがとう!!ええと!!!まずはノウトの横のボタンをポチ、しばらく待って、画面の下の方に丸い派手なマークがあらわれたらそこを矢印でクリック!!むしめがねマークの横の点滅Iのところをクリック、調べたい言葉を入力!!!うーん、何を調べようかな、…お か い も の 」

「そうそう、その調子!じゃあね、一番上にある、AMOZEMって文字をクリックしてみて?そこがお買い物サイトだよ!」


 そうだ、この前お買い物した時のポイントが余ってるから、お菓子でも買ってみようかな?きっとお買い物体験もしたいよね!そういえば前にくじ引きで当たったAMOZEMギフトがあったような…よし、使っちゃおう!


 いれたてのジャスミンティーをカウンターの上に置き、キッチンから出てアッシュ君の後ろ側からノートパソコンの画面をのぞき込む……。


「うぶん、スーちゃんこの画面にいっぱい並んでいるものはなあに?りぼんがいっぱいついてて華やかだね、お花みたいだ!!随分可愛らしいデザインのしたg

「だ、ダメ!!!見ないで!!!」」


 あ、アアア!!!


 しまった、ネットの買い物のデータ、データがね?!

 購入データに基づく、おすすめ商品の表示サービスがね?!


 あああ!!!

 勘弁してええええええええええ!!!


 わ、私はノートパソコンを奪い取りイイイイイイイイイイいい!!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ