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エコー  作者: たかさば


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袖が蠢いた

 灰色頭に刺さった小枝を抜きながら、非礼を詫び侘び…自分のしでかしてしまったことを心から反省中の私……。

 丁寧に小枝や小さな葉っぱを取らせていただく…なんか、若干…お猿さんがノミを取ってるみたいだけど、き、気にしない、気にしない……。小枝は髪と絡まってはいるものの突き刺さってはいないらしく、頭皮に傷はないみたい、所々赤くなってるけど、これくらいなら、まあ…。明日傷になってるようだったら、薬を塗ってあげよう。一応、全体的に髪をかき分けてチェックをしておく…なんか地味に爽やかなシャンプー?の香りがするなあ、良い匂い…どこのメーカーの使ってるんだろう。


 手の平いっぱいになった小枝と葉っぱをテーブルの上にまとめて置いて、パンパンと手を叩いてホコリを払ったのち、最後に10万人から引っこ抜いたご自慢の髪を手のひらでそっと撫でつけて…バサツキを押さえて、完了。サラサラヘアだから、あっという間にいつものイケてる青年の横顔が目の前に。

 ……ワックスで固めてもカッコよくなりそうなんだよね、今度プレゼントしてみようかな。思わずまじまじと見てしまった…いや、おとなしいアッシュ君ってね?!たまにこう、じっと見つめたくなるっていうか、ええとー!!!


「ありがとう、奇麗にしてくれて。では…お説教を、始めるからね。はい、着席して。」


 若干耳の赤いアッシュ君がこちらを見上げて着席を促したので、素直に従わせていただく……。テーブルを挟んで真向かいに座り、少々俯き加減で様子を伺う…。ああ、テーブルの端っこのモエちゃんが、プロテインに使ったままうつらうつらとしてる、ポインセチアも夜中になると眠いのかな、なんか安眠の邪魔をしちゃったみたい…今度お詫びにハンドグリップでもプレゼントしてあげよう…。


 …というか、どうしよう、私もしかして帰れないパターン?明日…いや今日?仕事あるのにー!!!


 今何時くらいなんだろう、でもとてもじゃないけどスマホを開いて時間を確認できるような空気じゃ…ない!とりあえず外はまだ暗いから、たぶん夜中…だとは思うんだけど……。


「……スーちゃんは、お酒が好きなの?」

「へっ?!え、えっと!!まあ、普通に、好き、かも……?」


 口調は優しいのに、明らかにこう、戒めるようなオーラが…ああ、これエコーだよねたぶん…。目には見えてないけど、ビシバシと何かがぶち当たっているような衝撃を、確かに感じるぅううう!!!


「……お酒を飲むと、いつもあんな感じになるの?」

「えっと…、記憶が無くなるくらいまで酔ったのは、その、久しぶりっていうか……。」


 年に一回くらい、羽目を外して飲むことはあるけど、大学生の時に一回大失敗をして以来、ここまでひどいのはしたことがない、はず……。

 入社の時の歓迎会は一人で家まで帰れたし、観瑠駈山山岳部の歓迎会も一人で家まで帰った、ちょっと気が大きくなってコンビニでプリン買い占めたけど…、でもって忘年会ではへろへろになったもののちゃんと送ってくれた藤本さんにもお礼して、なぜかお財布の中身がすっからかんになってたけど…アアア、わりとやらかしてるかもしれない、ちょっと記憶なくなってた!!!


「今後は、お酒は…三杯まで。……約束、してくれる?」


 じっとこちらを見る、茶色のお目目…あああ、ヘタレじゃないアッシュ君って、なんていうかええと、その―!!ねえ、何でこの人こうもころころと雰囲気が変わるわけ?!なんかやっぱり不具合的なものがあるんじゃないの?!ああ、でも今は私のほうが不具合を起こしてしまって、その結果として窘められている訳でええええ!!!


「ああああの、でもね、飲み会って今後もあると思うの、大人っていうのはね?断れないお酒っていうのがあって、その、約束する事はできないかも?!」


 隠れて飲んじゃうこともできると言えばできるんだけど、何て言うか、罪悪感?が生まれちゃうし、何よりおそらくエコーに鋭い宇宙人さんの事、下手にごまかしちゃうと、あっという間に嘘がバレて突っ込まれてしまう事必至!!これ絶対になあなあにしちゃだめなパターンだ、ここは正直に社会人の常識的な事情を説明してご理解いただくしか!!!


「きちんと説明して…お酒は断ってもいいはずだよ?…ダメだよ、スーちゃんはすぐに…人の感情を読んで、無理をしようとする。」


 …うっ!!!なんか…めちゃめちゃ正論を言う人が目の前にいる!!

 そう、社会人なんだから、大人なんだから、お酒の席の無理強いはきっぱりと断るべきってね?!まったくもってその通り、その通りなんですけどもぉおおおおおおお!!!

 しかもこう、私の断れない性格をきっちり指摘してきてる!!アアア、ねえこの人ホントにいつもの宇宙人?!アアア、いつもじゃない、ゲームコーナーのできる人の方だった!!ヤバイ、真剣なまなざしが真っ直ぐ突き刺さってきて…アアア!!心が痛い!!!……か、返す言葉が見つからない!!


「約束してくれないと…今から一緒に朝日を拝むことになるけど。」


 ええとー!それはもしや、朝までずっとお説教というパターンなのでしょうか!!


「僕としては…あんまり、気が進まないんだけどね。」


 そうだよね、朝までずっと怒りっぱなしなのもきついもんね……。優しいアッシュ君っぽい、気遣いのある言葉に、申し訳ない気持ちが…。


「でも、わからずやを懐柔するためには、多少の強引さも、必要だとは、思う…。」


 カイジュウ…?なんか、聞きなれない言葉を、聞いたような気がする。ゴウイン…?必要?なんか、気のせいか…不穏な空気が。


「人は…余りある快楽を身に受け続けると、服従するようになるんでしょう?」


 カイラク…、フクジュウ…。


「スーちゃんがもう2度とお酒飲みませんっていうまで、徹底的にせ

「ちょっとま、まままま待って?!アッシュ君はいったい何を?!あのね?!今何言ってるかわかってる?!なにするつもり?!」」


 ちょ?!はい?!はい、はい?!はい?!はいイイイイイイイイイイいい?!


 今この人何言った?!何言おうとした何するつもりで、何、何、何、何ぃイイイイ?!


「何をするかは…スーちゃんの返事次第、かな?ここで宣言してお酒飲むの制限するか、それとも今から快楽堕ちするか…どうする?」


 か、かかかかかか快楽堕ちって!!!!


 真面目な表情で…悲壮感を漂わせて言っていい言葉じゃ、ないイイイイイ!!!!


「あのね?!快楽堕ちとか、そういう言葉は使っちゃダメ!!アッシュ君はまっとうな人間として生きていくの!!どこでそんなこと学んだの?!もう今後はおかしなテレビ見ちゃダメだよ?!」


 おおおお思わず!!!ちんまりと座っていた椅子から立ち上がって、テーブルの上に乗りだし!!!アッシュ君の鼻先に人差し指を立ててブンブンと!!ブンブンと!!!恥ずかしさと驚きと焦りとちゃんと教えなきゃいけないっていう使命感とええとーそれからそれから―!!!とっ、ともかくね?!この目の前の宇宙人の間違ってる部分を正せるのは、ただいま絶賛叱られていたはずの私しかいないわけでね?!


「…スーちゃん、今は僕のことはいいんだよ、お酒を飲むのやめるかやめないか、その事について話し合っているんだよ?話をすり替えようとしてる?」


 あああ!!!めちゃめちゃ不満そうな顔してる!!!椅子にもたれかかって…腕を組んで、こちらをじっと見てる、アアア、なんか口元に右手を持ってって悩んだ素振りを…って!!!


 ちょっと待って、もしかして今触手がこっちに向かってる?!袖の所が開いたの、見た、見たんですけど?!もしや拘束されてからあんなことやこんなことそして…!!!


 さ、させませんよ?!絶対、にいいいイいいいイいいいイいいいイいいいイ!!!!


「わかった、飲みません、飲まないから!!私はお酒飲まない、その代わりアッシュ君はおかしなものを見ない、いい?!交換条件!!」

「…よかった。うん、じゃあ…これからは、見る物も、気を付けるようにするね。」


 口元から手を離して、にっこり笑ったアッシュ君…、ちょっと待って、なんか袖口の辺りがむにゅむにゅ動いてる!!!今!!絶対に!!触手が収納されてるぅうううう!!!!


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