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エコー  作者: たかさば


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イベントが終わった

「はい、お待たせしました!それでは次のお客様、どうぞ!」

「あらぁ~♥️本当にいいのかしらっ!こんなおばあちゃんだけど。よろしくね?」


「何をおっしゃいます!素敵なレディ…僕の目には、貴方は少女のように見えていますよ?」


 小柄なおばあちゃんをいとも簡単にお姫様抱っこする、露木さんの甘い言葉っ!ちょっと待って、この人、こんなにもナンパな発言する人だったの?!いつもの好青年…と言っても三十越えてるけど…とにかく!!!めちゃめちゃ、意外すぎてっ!!!あああ!!!記念撮影をしようとしていたお孫さんと見られる女子高生が、ぽかんと口をあけたままで固まってるぅううう!!!


「あ、私写真撮りますよ!ご一緒にいかがですか?」

「あ、あ、あはは!!じゃ、じゃあ、お願いします……。」


 お姫様抱っこされてるおばあちゃんと、お孫さんをスマホで撮影させていただく…。頬を染めてニコニコしているおばあちゃ…少女と、若干顔の引きつっている女子高生ッ!!か、可愛い一瞬を、すかさず撮影させていただいて!!


「こちらは妹さん?お姉さんに似て美人になりますね!!はっはっは!!」

「あらやだっ♥️この子は孫ですよぉ!」

「は、ははは……。」


 完全にドン引きしているお孫さんにそっとスマホを手渡し、…ダメ、呆れては!!にこやかにスマートに、次のお客様をお呼びしなければっ!!


「次のお客様、どうぞ!」

「はぁ~い♥️」


 ただいまの時刻は午後二時半、いよいよプロテイン試飲会も残りあと30分となりまして。完売プレートが足りなくなって、手書きで札を作成するほどに、イベントは大成功しておりまして!!広い会場はいつまで経っても大盛況、イベント各種大盛り上がりで試飲プロテインも間も無く水がなくなって終了見込み!!正直、ここまでの賑わいになるとはまったく予想もしていなかったというか!


 午後イチでヒロシが来てくれたタイミングで短めのお昼を取り、順番に営業さんたちにも食事を取ってもらいながら会場を盛り上げていたらあっという間に時間が過ぎちゃって!今はお姫様抱っこ体験会をやっている真っ最中なんですけれども!

 プロテイン一袋お買い上げでもれなく抱っこしてもらえるので、マッチョ好きな女性の皆様のみならずたまに男性まで並んで待っている有様でしてね?!


 今は本格派マッチョの露木さんとタンク系マッチョの輪島さんが二人体制でマッチョな王子さま役をこなしてくれているんだけど…実は佐藤さんが、さっきちょっとグラマラスな女性を持ち上げて手首を痛めてしまって。

 今は試飲コーナーに引っ込んで丁寧な給仕に勤しんでるけど大丈夫なんだろうか、正直心配で心配で!気持ち手をかばっているような気がしないでもない、イベントが終わったら日用品コーナーでシップを買ってきて差し入れしてさしあげないと……。


 一応、参加できるのは体重65キロまでって制限をかけてるんだけど、その…体重は、自己申告制だから、無茶をする人も、ぼちぼちいて……。

 さっきも人肉社長…川原さんが「僕は自称65キロだから大丈夫!」とか何とか言って、列に並んでたもんだからひと悶着あったりしたんだよね。どう見ても露木さんと同じ身長、露木さんよりは細身だけど佐藤さんよりは太ましい、そのマッチョ体系で65キロのはずないでしょうってね?!


 でも宇宙人だし、アッシュ君みたいに体重を自由に設定できる可能性もあるわけで!!!

 下手なこといえないから、どうしたもんかと思っていたら、ちょうど勤務を終えたアッシュ君がやってきて川原さんを連れて会場の端に行ってくれて助かったという……。

 今もイベント中の様子を、少し離れた位置で見学しているのだけど、なんていうか、うん…実に機嫌がいいのが非常に、こう…気になるというか……。お揃いのパーカー着てるからかなあ……。


「あ、あのー!私、本当に持ち上げてもらえるんでしょうか!!昔彼氏に落っことされたことがあってー!!!」


 順番が来てステージに上がった女性…私と同じくらいの身長、170センチくらい?ちょっとお姫様抱っこに、不安を覚えていらっしゃるみたい。


「ハハハ!!大丈夫ですよ!僕たち鍛えてますからっ!!」

「でもー!!あたし、たぶん今ここに並んでる人たちの中で一番大きいし!その…マッチョさんを信頼してないわけじゃないんですけど!心配性が災いしてしまって!!」


 うーん、確かに…、今並んでる女性の皆さんは、150センチくらいの人が、多い。この人だけ、頭ひとつ抜きん出ている感じだから…心配になっちゃうのかも。露木さんも輪島さんも、ジムで80キロのバーベルスクワットやってるって言ってたから、こんな細い女性なら軽く持ち上げられると思うんだけどなあ。……せっかく並んでくれたんだから、ぜひイベントを楽しんでいただきたい。……そうだ!


「じゃあ、私のこと持ってもらって、安心できたら、やってみませんか?私身長170あるんです、お客様よりもたぶん体重あると思うから…えっと、露木さん、……大丈夫です?」


 どうしよう、ひょっとして図々しかったかも、打ち合わせにないことするのってまずかったんじゃ……。ちらりと後悔の念が浮かんだのだけど。


「…そうですね!それは…いい!!じゃあ…見ていてください?…樫村さんっ!失礼しますよっ!!」


 頼れるマッチョは、快く私のことを持ち上げてくれましてー!!!アアア!!!け、結構・・・こ、怖いかもっ!!!ッて言うか!!私、誰かに抱っこ?!してもらうのなんて、は、初めて、初めてでえええ!!!


「ほーら!軽い、かるーい!こーんな事もできちゃいますよぉおお!!!」

「キャ…、ウフフ!!すご、すごく安心感あって、うっとり、し、しちゃいます、ぅうう!!!」


 抱えられたまま、くるくると回転されて!!!正直ちょっと怖いけど!!!怖いなんて口にしたらお客様はきっと「やめとこ…」ってなるはずでぇええええ!!!


 が、我慢、耐えてッ…ガンバ、ガンバだよっ、す、すなおおおおおお!!!!思わずギュウッと露木さんの首にしがみついてしまってですね!!!あ、アアア!!!佐藤さんが大喜びで写真撮ってるぅうううう!!!て、手、大丈夫そうぅうううう!


「わあ~!じゃあ、あたしも、お願いします!」

「はいはい、どうぞ!!」


「は、はい、でででは、お、お写真お撮りしまひゅねっ……!!!


 わ、私は赤い顔をして、お客様のスマホで撮影をさせていただきましてですね!!!



「今日は本当にお疲れ様でした!何から何までお世話になってしまって…ありがとうございます!」


「お疲れッス!!いやあ、めちゃめちゃ来たっすもんね!!今月の営業成績全国ナンバーワンとれるっすよ!」

「いやぁ~、すごぉい、まさか持ってきた分全部はけるとはねぇ!!樫村さん効果がばっちりって言うかぁ!」

「これは樫村さんには今後頭が上がらないですね!こちらこそ……色々とありがとうございました!」


 無事にイベントが終了し、撤収作業も手早く済ませ、あとは帰るだけのマッチョ軍団を搬入口でお見送りさせていただく。予定では荷物の搬出だけでお帰りになるはずだったんだけど、思いのほか商品が売れて作業時間が大幅に短縮され、川原さんのところに搬入する手伝いまでしていただいた上に什器の片づけまでして下さってですね!!さらになんかもうこちらが頭が上がらないって言うか、ひれ伏したくなるって言うか、何から何までお世話になりっぱなしで申し訳ないというか!


「また機会あったらぜひイベントやりたいですね!私…すごく楽しかったし、一生の思い出になりました!この御礼、いつか必ずしますね!」


「マジすか!!…じゃあ、次の大会、応援来て下さいッス!露木さんに、掛け声かけてあげて欲しいッス!」

「ちょ…!!そ、そんな樫村さんだって、忙しいのに!!お前は何をッ…!!!」

「樫村さんってぇ、日曜公休なんですよねぇ?…応援あると、筋肉も喜ぶんですよぉ!」


 そういえば、冬の大会があるとか言っていたのを聞いたような気がする。今まで話しには聞いてたけど、一度も行ったことがないから…せっかくの機会だし、応援に行くのもいいかも!そうだ、人肉社長…川原さんも誘ってあげたら喜びそうじゃない?イベント中ずっと大喜びしてたし、さっきも搬入の時に大はしゃぎしてたし!


「ええ、ぜひ!私…とびきりの掛け声、研究していきますね!すべったらごめんなさいですけど、それでもいいですか?さっきの川原さんも誘って

「…ッ!!!本当ですか!!僕…めちゃめちゃがんばって絞りますよ!!」」


「よかったっすねえ…露木さん……!!!」

「じゃあ、僕チケット送りますからねぇ!絶対頼みましたよぉ!ええとぉ、大会は12月のぉ……」


 ……?なんかやけにマッチョ軍団の士気が高まったような…そっか、それだけ大会に命をかけてるってことだね、すごいなあ、本気の人たちはやっぱり一味違うって言うか。これは私も気合を入れて応援に伺わなければ!!!


 私はスマホを取り出して、スケジュールアプリに大会の日時をしっかりと書き込んだのでありました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 56/56 ・マッチョの士気高揚とは、やりおるな。 [気になる点] 筋肉ちゃん喜んでほしい
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