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エコー  作者: たかさば


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46/85

ケンカがおさまった

 ……ああ、ずいぶん、気温が下がってきたなあ。


 終業後、リラックスエリアで私を待つアッシュ君と合流した後、タワマンに向かう途中……ずいぶん温度の低くなった風を頬に受けて、季節が冬に移り変わっていることを肌で感じた。最近暖かい日が続いていたから気が付かなかったけど、もう11月だもんね、冬に入ってるもんね。


 ……テンションが上がっているなら、多少気持ち的に温度が高く感じるのかもしれないけど…、帰りがけにちょっと凹むことあったから、体温が低くなっているのかもしれない。


 ……楠さんたちが来てくれなかったら、私……。


「スーちゃん、なんかあったん?すごく…エコーが怯えてる。あのね、僕こういう時どうしたらいいのか知ってるんだけど、ちゅうしてもいい?」

「うん、ダメ。…あのね、ちょっと落ち込んだだけだから、すぐに回復するよ!ごめんね、心配させちゃって!」


 ああ…アッシュ君にはテンションの低さは隠せないなあ…。よくわからない、エコー探知機?が備わってるから、ごまかしが聞かないっていうか。


 ……気持ち、切り替えていかないとね!ガンバ、ガンバだよ!すなおっ!!


「ね、アッシュ君は今日お休みだったんでしょう?今日は何をして過ごしたのかな?少しは生活に慣れた?何か、わからなかったこととか、ない?」


 気を抜くとすぐにこう、人肉社長が余計なことを刷り込みそうで怖いんだよね…。いきなり時代はマッチョなんですよとかいい出して、アッシュ君がゴリマッチョ化したらどうしようとかね?思わないでもないっていうか。すごくありそうなんですけど……。


「今日はね、人肉社長とメンテナンスの日程組んだりしてたんだよ。ちょっと大掛かりなメンテナンスになるらしくて、その反動が怖くて躊躇してたんだけどね、スえっとね、元気が出たからやることにしたんだよ!再来週に予約入れたんだ!!きっと素敵な僕になってスーちゃんの事振り向かせるからね、楽しみに待っとれ!!!」

「そっか、うまくいくといいね!」


 飲み込みが早いだけあって、ちょっとづつ…おかしな言葉も、落ち着いてきているような、気がしないでもない……?


「ありがちゅう、きっとうまくいくでそしたらスーちゃんともうまくいってそのままノリで家まで連れ込んでおしギュふふ何でもないよあのねえ、昨日は記憶封じてる人おったでハツラツとしたモエちゃんに会えなかったでしょう、今日ハンパなく落ち込んでたでね、励ましてほしいの、ちょっと庭寄ってっていい?つか毎回寄れっておじさんに怒られたよ、マジ怖かったふひーん!」


 ……うん、気のせいだった、やっぱりいろいろと駄々洩れてる!!


「うん、いいけど、今日も一般人?になってる人いるんじゃないの?話せなくても、ソテツおじさんと仲良く植わってるモエちゃん見れたら、それで……。」


 昨日、ドライブから帰った後にお土産を渡そうと思って庭に行ったんだけど、ちょうどブランコで遊んでいるお母さんとチビッ子がいたんだよね。どうやら、宇宙人であることを忘れて人間を謳歌している人たちだったみたいで、公園内はただの公園でしかなくってですね…。ゴリマッチョなモエちゃんと対面することは叶わず、おとなしくソテツの横に植えられているごつごつしたポインセチアの姿しか拝めなくてですね。


「リボンのお礼したいんだって!!だからね、今日は夕方から公園立ち入り禁止にしといたんだよ。だからね、だいじょうび!思いっきり楽しむがええ!!!」


 おしゃべりしながら歩いていたら、あっという間にタワマンについちゃったみたい。いつのまにか、公園の扉の前だ…。まずいなあ、なんか、すごくボーッとしちゃってる……。


 ピッ!


 タワマンの大きな扉が開いた。


 ……奥の方からこちらに突進してくるのは、相変わらずのマッチョっぷりが甚だしい、モエちゃん……、アアア、ちゃんと私の結んであげたリボンが、手首?に巻かれてる!二枚の大きな赤い葉っぱが大きなリボンみたいになっててめちゃめちゃかわいい、けどまだ抜け落ちた葉っぱは生えてきてない、ああ、罪悪感がハンパない!

 どうしよう、次の休みに、枝という枝全部にリボンを結んであげた方がいいかも……。いや、そんなことをしたら怪しげな儀式みたいになる!!却下、却下!!!


「も、モエちゃん、こんばんは!!昨日はおじさんと澄まして植わっててかわいかったよ!今日はリボンがとっても似合ってて…よかった!頭の葉っぱとお揃いみたいになってて、レッドコーディネーションが素敵だね!またお出かけしたら、お土産買ってくるからね!」


 ざっしゅざっしゅ、ギギ、ぎぎぎぎぃイイイイ!!!ぎい、ぎぎぎい!!


 サイドチェスト、ダブルサイドチェスト、ダブルバイセップス・フロントからのバック、ラットスプレッド、ダブルバイセップス、さらにサイドチェスト、サイドトライセップスと続き、最後にモストマスキュラー!

 うん、今日もバッキバキに仕上がってる、板チョコメロンを通り越して山の斜面に打ち込まれたコンクリートブロックみたいになってる!!今日見たマッチョ三人組がぬいぐるみに見えるレベルで仕上がってるよぉおおおおお!!!


「モエちゃんがねえ、大喜びだよ!このリボンを見ながら、筋トレをね?あと500回がんばろう、あと200回がんばろうって歯を食いしばれたんだって!このグレネードスペシャルはリボンがなければ生まれなかったって泣いてるの、うう、よかったねえ、何か僕まで泣けてきたみたい、ふひーん!!!」


 歯を食いしばる?!モエちゃんに歯?!泣いてるって…あああ!!よく見ると根っこの下あたりがびしょびしょになってる、まさかこれが涙?!ちょっと待って、そこまで感動しなくても!こんなに水分放出したら枯れちゃうんじゃないの?!これは止めなければマズい!!


「モエちゃん、よく頑張ったね!えらい、すごい!でもね、たまには、自分に厳しくするだけじゃなくて、甘やかしてあげて!ね?そうだ、抱っこ…はできないから、ぎゅ、してあげるね、ハイ、頑張った、頑張った…えらい子、モエちゃん♡ぎゅー!」


 まわり切らない幹に手を回し、思いっきりぎゅっと抱きしめると……あれ?なんか、幹が温かく…、見る見るうちにピンク色に染まっていく!!じ、地面の水がどんどん蒸発?いや、根っこに吸収されていく!!何この自給自足的なものは―――!!!喜んでる?照れてる?あああ、どうするのが正解なのかわかんない!!と、とりあえず、幹のあたりを、ポンポンと……。


「エグエグ、良いなぁ、ひっく、モエちゃんだけ、ぎゅぅ、ギュゥ、ギュゥうううウウウウ!!!僕も、僕も!ぎゅうしてよ!!アーン、やめてよぅ!!!ヒドイや、モエちゃん!!!」


 アッシュ君の声を聞いて振り返ると、ド派手に涙を流す宇宙人が、枝に阻まれてじたばたしてる!!!


 び、微妙に枝が怪しい動きをしているのは、恐らくアッシュ君が透明化した触手で応戦しているからでは?!…ダメ、想像すると怖くなっちゃう!!!私は何も見てない、気が付いてないぃイイイイ!!!


 細かい枝の欠片があちこちに飛んでるわ、足もとの湿った土は穿り返されてて穴だらけだわ、このカオスをどうやって収束させろと?!


「ストップ、ストップ!!ケンカしちゃダメ!!止まって、お願い!!!」

「はひ。」


 ぎい、ぎぎぎい……。


 お願いしたら、素直にきちんと聞いてくれるあたり…二人ともいい子だよね……。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 46/46 >>> 「ありがちゅう、  インパクト抜群 [気になる点] グレネードスペシャルリボン、気になりすぎますよ [一言] 地味に貴重な戦闘シーン。2人ともいい子
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