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エコー  作者: たかさば


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38/85

名刺が渡された

「分かりました……。あの、私の事に関しては、写真?とかデータを削除してくれたら、それでいいです。あとは、あまり、その…思い出さないようにしていただけたら。」


 あんまりごねて、宇宙人の機嫌を損ねて全面戦争になってしまったら……後悔してもしきれない!!!ただの一般人、地球上の大勢の人間の中のたかだか一人の不満で星が吹っ飛ぶとか……ダメに決まってるじゃない!!!断りたいけど断れない、受け入れざるを得ないこの状況…ああ、悲しいかな、私ってこういう気遣いはできてしまうタイプで!いつだって自分が我慢すればいいって思っちゃうタイプで!!


「スウ、無理するな。嫌だったら断ればいい。こんな見ず知らずの初対面の宇宙人に気を使ってどうするんだ。」


 いつになく厳しい目で、アッシュ君が私を嗜めている。なんで私の頭に手を置きながら、言い聞かせるように目を合わせてくるんでしょうか……。


「今日、知り合ったから、見ず知らずじゃないし…いい友好関係が築けることだってあるかもしれないでしょう?見た目のイメージが抜けるまでちょっとぎこちないかもだけど……。」

「くー!!かっしー優しい!!こういうとこ!!!ありがとう、感謝します!!やばいなあ、好きになっちゃ「おい。」」


 仙谷さん…に融合した新・仙谷さんが、喜び勇んで私の手を取ろうとした、その瞬間!!!


「あんまり調子に乗るな。」


 優しく私の頭をポンポンしていた手が!!!秒で離されてあっと言う間に仙谷さんの顔を覆い!!



 ぎゅり、ぎゅり、ぎゅり、ぎゅりぃいいいい!!!!!



 アイアンクローをお見舞いしてるぅうウウウウ!!!!ものすごい音がしてる、ちょっと待って、いきなりどこかの漫画みたいに頭部が破裂するとかないよね?!……めちゃめちゃありそうなんだけど?!


「あ、アッシュ!!やめて!!許してあげて、ね?!この人、まだ人間初心者なんでしょう?!」


 ごついおじさんが、線の細い男子に片手で持ち上げられてる!!!ああああありえない光景、光景いいい!!!


「はぎゅあぁあががが…なりませんなれませんこのままじゃせっかくの肉がただの肉に肉に!!すみませんごめんなさい申し訳ございません深くお詫び申し上げます陳謝謝罪黙祷ううううウウウウ!!!」

「……スウを好きになることは俺が…許さん。」


 アアア!!!大きな口を開けて涙まで流して謝り倒してるのに、容赦ないイイイイイイイイ!!!


「お願い、もうやめてあげて?!いくらなんでもかわいそうだよ!!あのね、ええとー、そうだ、私この人の事詳しく知りたいな!日本にいる宇宙人についてもいろいろ知りたいかも!!ひょっとして日本には、こういう感じで乗っ取ってる人、多いのかな?!もしかして私もいつか乗っ取られちゃったりするのかなー、なんて心配してみたりしてね?!」


 高く掲げる右腕にしがみつきつつ、その高度を下げるべくへらへらとした笑みを怒れる灰色頭に向け、さりげなーくよだれをたらすおじさんの足を地に着け…よし、アイアンクロー、取れた……その手を握って、落ち着かせてみようと、試みる。ちょっと強張ってるかもだけど、にっこり、にっこりをまっすぐお見せして差し上げてええええ!!!


「……スウは、優しすぎる。俺は…心配でならない。」


 真剣なまなざしが、突き刺さる!!!


 ねえ、この人何そんなに心配してるの?!私はこんな見てくれだしそんな心配されるほどモテないんだってば…セ、仙谷さんは完全にカン違いというかおかしな拗らせ方してて例外中の例外だったっていうかね?!


「は、はは、そんな心配しなくても大丈夫だよ!…だって、わ、私はアッシュ君と恋に落ちるって決めてるし!!私ね、まだ恋した事ないけど、その…一途だから!!好きになるのは、アッシュ君しかいないよ!!だから、そのー、あ、安心してっ!!!ねっ?!」


 ああああアアアアアアア!!!私ってば何言っちゃってんの、なに告白みたいなこと言ってるの、何が安心で何が何が何がああああアアア!!!


「・・・分かった。」


 ああ、すごーく、いいお顔で笑っていらっしゃいますね……。よかったです、はは、ハハハ……。……どうしよう、こういう時、どんな顔していいのかわかんないんですけど!!さ、さりげなーく、目をそらしてみるのは、まっすぐすぎる青い目が、真剣過ぎて怖いというか、見つめられて恥ずかしすぎるというか!!!


「……スウ、愛してる。早く俺の事、……好きに、なれよ?」


 そっと、優しい手が、私の頬に触れる。あわわ、無理やり真正面、向かされた!!目、目が合ってる、ばっちり合ってる!!うう、は、恥ずかしくて…顔が、熱い、熱すぎるよ!!私今絶対顔真っ赤になってる!!!

 ……深い、奇麗すぎる青い目が、私を見つめてる。目を逸らしたいけど、逸らす事なんてできない、でも、見つめ合う勇気もないというか、どうしていいのかわかんなくなって…思わず、目を、閉じてしまったら。



 ……チュッ!!



 ああああああアアアアアアアアアア!!!また、また!!!唇、口、口!!!!!!!りょ、両手で人のほっぺたギュウってして動けないようにしてうば、奪うばうばうば!!!!!!なんでこの人こういう事する?!私初心者なのにイイイイイイイイ!!!そうだ、この人、人間初心者にも容赦なかったですもんねええええええええ?!


 ぽか!!ぽかぽかぽかぽか!!!!!


 思わずほっぺた拘束を秒で振りほどき、俺様強引宇宙人の胸を叩く!!!


「ちょ、なんですぐにこういう事するの?!も、もうちょっと手加減してくれないと、ホント困るの!!!れ、恋愛初心者なんだってば―――!!!」


 ぽか!!ぽかぽかぽかぽか!!!!!


「は、はわわ…ごめんねスーちゃん、怒ってる?アーン怒ってるよぅ、でもそこがまたかわいすぐる、どうするべ!!あのねえ、ホントにいろいろ全部ごめんなさい、約束通りめっちゃ謝るわ!!スミマセン申し訳ございませんふつつかなものですがメンゴメンゴわりーわり―お詫び申し上げますごめんちょ不徳の致すところぺこりかたじけないすまない許してねえねえ、指何本落とせばお許しいただけそうろう?!」


 夢中になってポカポカやってたら、なんともへっぽこな声が聞こえてキター!!ちょっと待って、なんかめちゃめちゃ怖いこと言ってる!!!驚いて視線を上げると、涙浮かべてる緑色の目のヘタレ宇宙人とご対面っ!!!ああよかった、元に戻った……って!!!私さっきこの残念な人に何された?!…慌てて、一歩、後ろにとび退る!!!


「キャプテン!!指落とすの?じゃあそれ下さい!おら移植して背中に指生やしたいな!!!」

「落とさないから!!!もう怒ってないよ、次から気を付けてね?!」


 現代日本では…そういう怖すぎる落とし前制度は根絶してます!!!指を落としてはなるまいとアッシュ君の手をぎゅうとにぎりしめ!!!天真爛漫に微笑むおじさんと半泣きの若者の顔を交互に見やりっ!!!


「はう、はうぅ~、スーちゃん、ありがと、次から気をつける、ずっと気を付ける、たぶん気を付ける、気をつけれなかったらどうしよう、気が付いたら気をつけよう、気が付かなかったらしょうがない、気付けないかも、気付かないこともあるよね、気付かなかったら仕方がないからまた怒られて許してもらお!!でもってまたぐふふな展開でえへへ…。」


 またちょっとエッチな顔になってるじゃない!!!!!これは鉄槌を下さねば、でもポカポカやったらまた強引なあいつが…来る!でも緑のやらかしがちよりは優しいのかも、いやいやそんなことはない!!!アアア!!!もう何が何だか!!!


「棟梁、インストールデータ使うのやめたらどうなんです?はっきり言って、すごく変!!先生は欲張りすぎなんですよ!!会話データ詰め込み過ぎ!!ずいぶん言葉が溢れていらっしゃる!!本音も引きずられてて丸出しになってますよ!!さっきはいい感じだったのに、不具合ですか?ほらあ、かっしーが引いてますよ、早く対処した方がよろしいかと思います!!」


 アッシュ君の言葉のおかしさを分かっている人が現れた!!!とはいえ、この新人宇宙人もわりとおかしな言葉を使ってはいるんだけどね…さっきからアッシュ君の事先生だの棟梁だの大将だのキャプテンだの主任だの達人だの言ってるし。突っ込んだ方がいいのでしょうか……。


「うググ、接続がたまにズレるんだ。人肉社長がいいかげんな仕事したのだ、許さん!!つかさっきはエコーが貫通してきてしょーげきで接続がずれたの、バランス悪くなっちゃうんだよねえ、出口が詰まっちゃうとさあ、データが呼び出せなくてね。無口になったら、スーちゃんにいわゆる心を伝えることができなくなるから躊躇中なんだよ。」

「おらが思うに、マスターレベルなら無理しなくても学んだ言葉だけで行けるはずなんだけどなあ……。削除した方が良くないですか?余計なこと言って嫌われたらまずいですよ。いやらしいことは黙っとけってのがセオリーでね…まずいです、…ええ。そもそも……ぶつ、ぶつ……。」


 何やらよくわからないシステムについて、討論中?話し方としては、この新・仙谷さんの方がレベル高いと思うんだよね。おしゃべりな日本人っぽいというか。いや、話してる内容はね、わかんないことばかりなんだけど…って、なんかいかがわしい事話してない?!ちょっと厳しい目を、向けてみる……。


「あっ、ごめんね、スーちゃん!!そういや詳しいこと聞きたいって言ってたんだった!ええとね、がぶがぶ…いや、耀司君はねえ、二次元のプロなんだよ。いわゆる地球上の、地球上以外もなんだけどね、二次元のデータを網羅しているんだ。文字や漫画なんかは二次元と近くてねえ、僕よりもめっちゃ知識が豊かなの!!データになってる事だったらなんでも知ってるから、困ったときはこの子頼るといいよ!!」

「名刺渡しときますね!!いつでも連絡してください!!!」


 がぶがぶさん…?から、何やら手渡されたので、見てみると…。


────────────────

☆彡 せωご<ょぅι″ ☆彡

BY G2440(gabugabu-yoshio)

ツイッバンダー垢:コワモテくん@純情

インスタント垢:100059youji

ONAIR:地獄の番人ぼくちゃむねる♡

電話番号000-000-000

メアド100059@gbgbgbmail.nec

────────────────


 なんでギャル文字?!何この蛍光ピンクの毒々しい名刺は…って!!思わず、名刺をじっくりと、じっくり、じっ、くり…。


 ……へ?!


 明らかにおかしい!!名刺サイズの名刺っぽいものが手にあるのに、物体として存在していない!!!触れているのかいないのか全然分からない、紙っぽいものはあるのに存在していない、でも見えてるみたいな……自分の知らない物質感!!!名刺を指で挟んで?裏を見ようと角度を変えたら、き、消えたあああああああ!!!…って、手首ひねったらまた現れたあああああああああ!!!


「それが二次元だよ。面で構成されているというとわかりやすいんだっけ?ええと、三次元は…縦、横、高さだったねえ?高さがないから、面以外では地球人は見ることができないんだねえ?ⅹ☆υЖ⊆に紛れちゃうと目視もできず…まあ、わりと地球上にはいるよ、でも、ЖΘ〇ⅹΔ%#が厳しいからね、人間には手出ししないし、むしろ見守るために手厚い保護を恵んでくださるから、怖がらすともええ!!」

「プルプル、おら悪い宇宙人じゃないよ!たくさんの人肉とおともだちになるためにこの地球にやってきたんだよ!いじめないでくれよー。」


 ごっつい体をかわいらしく震わせて、あああ、両手をゲンコツ、口元隠して上目遣いでこちらを伺う実に違和感満載大万歳のおじさん、おじさん―――!!!


 …どうしよう、色々とツッコまなければいけないはずなのに、一言も発せない私がここに!!!!!


 か、勘弁してえええええええええ!!!

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