フィナ撤退戦2
「それは突然だった。兵士として招集されて、前線に行くように命令されたのは。この戦争はすでに詰んでいる。そう思えるほど一緒に前線に行く兵士の練度は低そうであった。小隊は招集されたときに自動に振り分けられ、なぜか私が副隊長になっていた。各小隊の隊長はさすがに軍人のようであったが能力は低そうだ。前線までは、徒歩での行軍で1か月かかる。素人集団の兵士の士気は低かった。また、物資も心許ない。先に餓死で死んでしまうのではないだろうか。 帝国歴176年7月10」
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「次の中継ポイントはフィヨラだったか、カレン」
「そうだよ。ロキ、いつも確認するけど…。話していると隊長にどやされるよ。」
「ついてこれない兵士を置いていこうかと進言しようと思ってな。フィヨラであれば、そこそこの街だろ。」
「うちは、聞き入れてもらえないと思うけど。いいんじゃない。」
そうと決まれば先頭にいる嫌いな隊長に進言しなければ。
「隊長、お話がございます。」
「ロキ、誰が発言を許可した。黙って歩け。」
「どうかお聞き入れください。カシミア隊長。」
「許さん、上官に口答えをするか。銃殺に処するぞ。」
だめだ、話を聞かない。くそが。兵士がまた一人と置いて行かれる。行軍が速すぎるのだ。おいて行かれた兵士は餓死するしかない。餓死じゃなければ追剥に出会うくらいだろう。今回の行軍は兵士を補給することが目的ではなかったのか。もう持たないぞ。
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「カレン、相談がある。」
「ロキ、どうした。その顔は隊長に話を聞いてもらえんかった顔だね。」
「ああ、うまくいかなかった。だから、勝手に逃がす。ついてこられない奴は結構いる。このまま行軍させても死ぬだけだ。」
「軍規違反。上官の命令違反で、銃殺になるよ。あんたがどうなろうとうちには関わりのない話でもあるけど。話し相手が銃殺は寝覚めが悪いやな。」
「ばれなきゃいいのさ。もう隊の人数なんて把握できてない。何が兵士だ。ただの強制労働さ。」
「うちは知らんよ。」