魔法少女☆ユカリとノゾミ!ラブパワー
2人で体制を整えながら敵に睨み合う。
緊張した空気の中、突然空気も読まず、横からポンっと可愛らしいもふもふとしたウサギが現れた。
「ユカリちゃん!ノゾミちゃん!今回の敵は前よりも一段と強くなっているみたいだね!2人のラブの力は強いがもっとお互いが繋がらなければこの敵には対抗することができないかも!………ピョン!」
後付けで語尾のピョンが入る。
雑なキャラ設定だしいちいち忘れるならつけなければいいのに…。
この可愛らしい謎の生き物が私に魔法少女の力を与えてくれているぴょん太だ。名前もちょっと雑すぎるところがある。
ノゾミちゃんはぴょん太の語尾なんか気にも留めず、冷静な顔でこちらを見た。
「そうみたいね。さらにパワーアップする必要があるみたい」
ぴょん太の意向をスムーズに受け取ったノゾミちゃんに対して私はちんぷんかんぷんであった。
「パワーアップ?どうしたら?いいの?」
それを聞いたぴょん太が空中で上下にヒョコヒョコ飛び跳ねるように怒りながらいう。
「ユカリちゃん!君はまた忘れたのかい!
君たち魔法少女はラブを深めることで威力も技術もそして魔力もアップする!魔法を使うために必要な魔力を効率的に摂取するには何が大事だったのかな?!」
「え、えと…身体的接触…?」
「そうだ!体に触れ合うことがラブをお互い共有するのに1番効果が高く、より奥まで触れ合うことで受け取るラブの濃さがより増すのだ!!!…んだピョン!!!」
おわぁああと興奮するぴょん太を尻目に、ノゾミちゃんがこちらの方へ寄る。ユカリもノゾミの方へ体を自然と寄せる。
「ノゾミちゃん、何したらいいの…」
「ユカリ、この前したこと覚えてるよね?なんかカマキリみたいな怪物が出たときの」
「……ああ!2週間前の」
2週間前も同じようにして、化け物と戦うことがあったのだがどうにも力が足りなかったことがあった。その時、ノゾミちゃんが先輩魔法少女に聞いた話を実践してみようと提案してくれて、見事敵を打ちのめすことに成功した。
ユカリはそのことを思い出してあれか!と納得した反面、そのときのことをじわじわと思い出して目元の頬を少し赤らめた。
そのユカリに心配そうにノゾミが問いかける。
男に対しては気が強いノゾミちゃんであるが、私の性格をわかってくれてるのかいつも優しく話してくれてとても良い子だ。
「ユカリ、恥ずかしいかもしれないけど、やらないと地球が滅んじゃうかもしれないの。…イイ?」
「う、うん!恥ずかしいだけだから大丈夫!」
ユカリは体をさらに赤くさせたが是と提案を受け入れた。恥ずかしいが、別にその行動に対して拒否する気持ちは全く起きなかったからだ。
ノゾミはその言葉に微笑むと体を一層ユカリに近づけた。
ノゾミの手が肩に触れ、右手が赤らんだ頬をさするとそのまま手のひらで持ち上げられるように頬から顎を掴まれる。
ユカリはノゾミの綺麗な顔を近くで一瞬だけ見つめると、ドキドキと心臓を高鳴らせながら目を閉じた。
少し間が空いて唇に柔らかくみずみずしい感触が降ってくる。
1回目のキスは数秒ほど時間をかけられた。
ゆっくりノゾミが離すと反射的にユカリは目を開ける。少し潤んだノゾミの茶色な瞳が揺れていた。
(ノゾミちゃんも緊張してるの…?)
そう思っている間にもう一度唇を重ねられる。
ゆっくりと啄むようなキスがノゾミと一体化して、それこそ「ラブを共有」しているような感覚になった。
7回目のキスが終わる頃にはウットリしたユカリがノゾミをぼんやり見上げていた。
ノゾミは頰に垂れたうっすらとした汗を滲ませて、敵の方へ向き直る。ぼんやりするユカリは導かれるようにそのままノゾミの肩に寄りかかった。
ノゾミが大きく力を込めた。
魔法のステッキがノゾミの肩を抱いていない方へあらわれ、敵に先端を差し向ける。
ノゾミは大きな掛け声とともにステッキを振りかぶった。
先ほどよりも威力を増した閃光が化け物に勢いよく当たる。化け物も対抗しようと大きく暴れた。
ものすごい威力にガタガタと地面が揺れる。腕に収まるユカリが倒れないようノゾミにぎゅっと縋り付いた。
ノゾミのステッキから出る光線が、弾んで威力が大きく増した。
トドメを指したその一撃は、ババババという音ともに化け物が2人の「ラブ」のパワーに負け、浄化されていった。
ユカリの気づいた頃には化け物は綺麗に昇天され、キラキラと星屑が空へ昇っていくところであった。
「ちっ……。
あ、ユカリちゃんノゾミちゃん!今日もすごいラブパワーだったよ!今まで見てきた魔法少女の中でも特別パワーの威力が君たちは強い!想いがとても通じ合っている証拠だ!」
ぴょん太が空中でさっきとは打って変わって嬉しそうに可愛く跳ねている。
まだノゾミに抱かれるユカリはそのままぼんやりぴょん太を見上げる。
「そんなにラブパワー強いの?」
ノゾミは何度か先輩魔法少女と出会ったことがあるらしいのだが、最近新米で入ったユカリは他の魔法少女を見たことがない。
故に他の魔法少女たちがどういう戦闘方法をしているのとか、どれくらいの力を持っているのか、ユカリは全く知らないのだ。
ぴょん太が嬉しそうに大きく体を揺らす。
「ああ!とっても強いよ!
君たちは手が触れ合うだけでも他の魔法少女に比べて数十倍の力を持ってるんだ!これは最高のパートナーの証だ!」
いつもぴょん太の話をじと目で聞くノゾミが少し上機嫌に体を揺らした。
その様子に気づいてユカリはノゾミを上目遣いで覗く。
「ノゾミちゃん、私たち最高のパートナーだって」
ユカリもぴょん太の言葉に殊更気分悪くしなかったため、えへへ…とそう照れたように笑うと、ノゾミは腕の中のユカリをより強く抱きしめた。
「〜〜っ、当たり前じゃん!うちら最高の魔法少女なんだから!」
ノゾミの照れたような泣きそうな顔と心から出たと思われる言葉にユカリも嬉しさがより増して、柄にもなくノゾミに大きく手を回しハグを返した。