第8話「看病」
【注意】
・これは東方Projectの二次創作小説です
・原作にない設定、キャライメージの独自解釈等を含みます
魔理沙は気を失ってこそいなかったが、身体はフラフラで、とても一人で歩ける状態ではなかった。
アリスは魔理沙を布団へ運ぶ。
アリス「あなた、顔色が悪いし身体も熱いわよ?」
魔理沙「…ごめん、本当は起きた時から喉の痛みと頭痛が酷くて…ごほごほ…無口だったのも喉が痛むからあまり話したくなかったからだぜ…」
アリス「…隠すことないのに」
魔理沙「アリスに迷惑をかけたくなくてな…ぱぱっと帰って寝ようと思ったんだがバレちまったな…隠さないとお前のことだから…」
ここまで言うと魔理沙は咳込んでしまう。アリスは魔理沙の背中を優しくさすりながら言う。
アリス「かなり辛そうね…無理に話さなくてもいいわよ。とりあえず熱を測りましょうか。」
魔理沙はコクリと頷く。アリスは棚まで行って体温計を取り戻ってきた。そしてそれを魔理沙の腋に入れる。しばらくして体温計が鳴る。
アリス「どれどれ…え?38度2分…?かなり高いじゃない…とりあえず安静にしておくしかなさそうね。薬は私は魔法使いだから病気になんてならないし置いてないのよね…しばらく魔理沙の様子を見て永遠亭に行くかどうか決めましょう。」
魔理沙「迷惑かけちまったな…すまん…多分昨日雨に濡れたのが良くなかったみたいだな…」
力のない声で魔理沙が言う。
アリス「謝る必要なんてないわ。困った時はお互い様ってね。(もう、私にとって一番と言っていいほど大切な人なのに放っておけるわけないわよ。)」
それから魔理沙はしばらく寝ていたが、その間も辛そうに咳を繰り返したり、痛む頭を抱え込んだりしていて、満足な睡眠は取れていないようだった。
そんなこんなで昼食の時間を迎え、アリスは魔理沙にお粥を作ったが、依然として魔理沙の食欲は戻らず、ほとんど食べないうちに残してしまった。
アリス「うーん…どうしましょう…」
苦しそうな表情を浮かべながら寝息を立てている魔理沙の方を見つめながらアリスは言う。
アリス「少しでも楽になるように氷枕でも作ってきましょうか…」
そう言ってアリスが立ち上がろうとした時だった。突然魔理沙の呼吸が荒くなり、激しく咳込む。そして辛うじて聞き取れる程度のか細い声でこう言う。
魔理沙「アリスぅ…ごほっごほっ…苦しい…助けてくれ…」
魔理沙の目には涙が浮かんでいる。アリスは普段元気な魔理沙が衰弱している様子を見て胸が締め付けられるようだった。
アリス「魔理沙…!大丈夫よ、大丈夫。私がついているから。あなたは私が必ず守る。だから安心して…」
そう言いながらアリスは再び体温計を手に取り、魔理沙の熱を測る。
アリス「…嘘でしょ?40度を超えてる…」
数時間前に測った時からさらに魔理沙の熱は上がっていた。
魔理沙「ううう…アリスぅ…」
叶うことなら代わってやりたい。これ以上魔理沙が苦しむ姿を見たくない。神様、どうか、どうか。
こんな状態の魔理沙を連れて永遠亭に行くなんてできない。魔理沙の体力が持つはずがない。アリスは冷静に考え、こう判断した。
アリス「永琳に来てもらうしかなさそうね…」
──それからしばらくし、永遠亭で医者をしている八意永琳がやってきた。
永琳「おそらく普通の風邪で間違いないと思うわ。ただかなり悪化している。即効性の解熱剤と諸症状に効くお薬を処方するから、なるべく早く飲ませてあげて頂戴。くれぐれも安静にするように。」
そう言い残し、永琳はアリスの家から去っていった。
アリスはその後すぐに魔理沙に薬を飲ませてあげた。
──あっという間に日は暮れる。
夜になり、薬を服用した魔理沙の容態は幾分安定し、峠は過ぎたようだ。
静かに眠る魔理沙の枕元でアリスが囁く。
アリス「魔理沙の熱が急に上がった時…私は永琳を呼ぶこと以外何も出来なかった…あなたのことを守るなんて言っておいて、結局自分では何も出来ていない…ごめんなさいね、魔理沙…」
寝ていたはずの魔理沙が薄目を開けて小さな声で呟く。
魔理沙「いや、お前は私のために尽くしてくれてるよ…」
アリス「あら…起きてたのね。でも私は…」
魔理沙「効果があるかどうかじゃない。その気持ちだけで私は嬉しかった。…ありがとな。」
アリス「…!」
魔理沙は何事も無かったかのように再び目を瞑り寝息を立て始める。
アリス「早く元気になって…いつもの笑顔をまた私に見せてね。」
眠る魔理沙の横でアリスは優しく微笑みを浮かべ囁いた。
【作者の一言】
第8話。きっと魔理沙は普段は強がるけどいざと言う時は人を頼るのが苦手な子。今日くらい甘えてもいい。…アリス、席変わってもらえない?私に看病させて。