第4話「花火」
【注意】
・これは東方Projectの二次創作小説です
・原作にない設定、キャライメージの独自解釈等を含みます
2人は境内の片隅に腰を下ろしていた。先程まで人で溢れていた出店の周りも幾分人通りが減っていた。そこにいたはずの人も皆、魔理沙やアリスと同じように境内の至る所で腰を下ろしていた。そう、花火の打ち上げを今か今かと待っているのである。
もとより、この祭典の最大のイベントと言えば毎年行われているこの花火大会である。お祭りの雰囲気を味わうことを目的として来る人もいるのだろうが、大抵の人の目当ては夜空を彩る華々なのだ。
何の前触れもなくヒューという音が辺りに響く。その場にいた人々は慌てたように空を見上げ、その途端に漆黒に染まる空に一つの大輪が花開く。
──『可憐』その一言である。
色鮮やかな炎色反応がすっかり暗くなった遠い空を彩ってはスッと消える。
魔理沙とアリスの目も次々と打ち上がる花火に釘付けになっていた。が、ふと魔理沙はアリスの方を向き直り声をかける。
魔理沙「綺麗だな。」
アリス「ええ、素敵ね。」
交わした言葉は短く、その後は思わず顔を逸らして黙りこくってしまった。が、2人とも考えていることは同じであった。
魔理沙「(まるでお前のように、な。)」
アリス「(まるであなたのように、ね。)」
その後も2人は打ち上げ続けられる花火に見入っていた。長いようであっという間の時間だった。
何重にも重なった大きな華が、夜空全体を支配する。フィナーレだ。その光景はまるでこの世のものでは無いほどに幻想的で、ただただ美しかった。
花火大会は終幕を迎えた。人々は立ち上がり帰り支度を始めていた。賑やかだった祭礼も間もなく終わり、幻想郷にはまた日常が戻ろうとしていた。2人も帰り支度をしようと立ち上がりかけたその時。ふと、上空から雫が一滴落ちてくる。
──雨だ。
【作者の一言】
第4話です。花火より魔理沙の方が好き。