第3話「無邪気」
【注意】
・これは東方Projectの二次創作小説です
・原作にない設定、キャライメージの独自解釈等を含みます
日が落ち、暗くなりはじめた神社の境内には、どこのお祭りではよく見るような、顔馴染みのある出店が軒を連ねており、そこに無数の人が集まっては楽しそうに笑い合っている。最近では1番の夕刻の冷え込みも、彼らには関係ないのだろう。
魔理沙「いやー、それにしても今回の祭りは人出が多いな。動員は過去最高じゃないか?」
アリス「そうね、これまでに見たことの無いくらい人で溢れかえってるわね。ちょっと窮屈に思えるくらい。」
人混みを掻き分けながら、たわいもない会話を交わす。と、魔理沙の足が1つの店の前で止まる。
魔理沙「今日は涼しいからかき氷って気分じゃないし、こういう時はこれだよな。2つ買うぜ。」
店主の毎度あり、という声に続いて魔理沙が小走りで戻ってきて、少しはにかんだような笑を浮かべ、アリスに買ってきた物の1つを手渡した。それは毒々しささえ感じられるような真っ赤な真っ赤な球体だった。
魔理沙「今日はお祭りに誘ってくれてありがとな。お礼と言っちゃあれだが、これは私の奢りでいいぜ。今日はかき氷よりかはりんご飴の方がいいよな。」
アリス「…!…その、ありがとう。」
驚きと嬉しいのと照れくさいような気持ちからか、アリスはまともに返事をすることが出来なかった。と同時に自分の顔が明らかに紅潮しているだろうことを悟った。おそらく、手に持っているりんご飴より紅くなっているのではないだろうか。
2人は引き続き寄り添いながら境内を進む。突然、アリスは自分の右手を掴まれるのを感じた。見ると、魔理沙の左手がアリスの右手を握っていた。
魔理沙「人が多すぎて離れ離れになりそうだなと思ってな。ちょっと恥ずかしいかもしれないが我慢してくれよな。」
アリスは顔を紅らめながらも強がる。
アリス「…恥ずかしくなんてないわよ?だって…。それより、一旦人が少ない方へ行きましょう。」
魔理沙はアリスの言葉に同調し、境内の端の方に避けた。そこに見知った顔が近づいてきた。この博麗神社で巫女を務める、博麗霊夢である。つい先程まで握り握られていた手は今は離している。
霊夢「あら、魔理沙にアリスじゃない。このお祭りに来るなんて珍しいわね。普段2人とも家に引き篭ってる印象なのよね。どういう風の吹き回し?」
魔理沙はりんご飴を舐めながら答える。
魔理沙「アリスが昼過ぎに私の家にやってきて祭りに誘ってくれてな。最近引き篭り気味だったし、しばらく会ってない幻想郷の奴らに挨拶するにもいい機会だし、久しぶりに行こうかと思って誘いに乗ったんだぜ。な、アリス。(まあ、1番の目的はアリスと一緒に祭りを楽しむことなんだがな。)」
その言葉にアリスがすぐさま反応する。
アリス「ええ。私も普段は確かに家にいるけど、こういうおめでたい日くらいは誰かとお祭りに行きたいと思うのよ。(特に魔理沙と一緒にお祭りに来てはしゃぎたいなって思ったのよね。)」
ここまで聞いた霊夢は何かが分かったのか小さくうなづいて微笑んだ。
霊夢「今日は例年よりも人が多いけどそれだけこの豊穣祭も盛り上がっているのね。私は主催側だから少し忙しいけれど、2人はゆっくり楽しんで行くのよ。」
そう言うと、霊夢は人混みの中へ消えて行った。
まだ薄明るかったはずの空はすっかり暗くなり、出店の灯りがはっきりと見えるようになっている。すなわち、今宵最大のイベントの開幕が近いことを示していた。
【作者の一言】
魔理沙、私と一緒にお祭り行かない?