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生き方  作者: 三田元
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ボツワナの女神

てんで取り柄もない僕のことを語るにはちょっと忍耐ってものが必要になってくる。


この世の中を生きていく上で必要なスキルだからきっとみんなも持っているに違いない忍耐。


それをちょっとお借りする形で自分語りをして見たいと思う。






僕の住んでいる桂川では地元の純粋な天然水を用いた「桂川」が有名である。


そのほかにも多くの酒造所があったがここ数年で数は激減した。


その中で唯一生き残った銘柄がこの桂川だ。


ともかく、このお酒は飲みやすいというのが印象的だろう。


作り主は不明なのだが伝統的に受け継がれているお酒なのだ。


僕はこのお酒が好きだ。


とにかくスーッと口の中に広がっていく日本酒独自の風味がたまらない。


嫌味もなく流れるように口を滑っていく。


これを有象無象のものたちが飲むにはもったいない。


お酒を好きでない人がヒッチャカメッチャカに飲んでいいものではない。


「俺にもくれ」


そうやってせびるのは上司の「タカビシャ」。


名前の通り高圧的な態度が特徴的な上司だ。





そんな嫌な上司がいる職場だが中には変り種の存在もいる。


読書家の「メガミ」と呼んでいる人物だ。


彼女はこの男臭い職場の中で生き残っている唯一の女性社員だ。


みんな「メガミ」と呼ぶので僕もそう呼んでいる。


彼女はよく「罪と罰」をカバンの中に忍ばせて休憩時間に読みふけっている姿を見たことがある。


読むのが遅いのかそれともなんども読み直しているのか、


いつも読んでいるのはその本なのである。


罪と罰といえば僕も学生の頃に読んだだろうか。


メガミと呼ばれる彼女がそんな書物を読んでいるというのは


驚きである。








そんな彼女の前に座るのは


経済学を勉強しているわけでもないのに世の中の経済についてぐちぐち言っている人は


「ケーリ」である。


彼は財務担当をしている。


「0がひとつたりませええええええん!」


が彼の口癖だ。


「0がふたつもたりませええええええええええええん!」


今日は二つ足りなかったようである。


やはり経理という仕事は神経質になる職務なのかもしれない。


以前ケーリのブログにはこんなことが書いてあった。


「我々労働者は


生きているうちに何もかも耐えればいいという思考停止状態に陥っているのにすら気がつかない。


忙殺される毎日。


労働というものはこんなに人間を壊す装置として動いているのだ。


長く働けばたくさん賃金がもらえるという仕組みは終わった。


今現在はたくさん働く人間の方が低賃金で


少なく働く人間の方が高賃金


という図成り立っている。


その逆も存在するが両極端である。


そもそも、働くというのはどういうことなんだろうか。


その辺りについては理解していない人が多いと思う。


なんのために働くのか。


大企業につくことで


自分自身のアイデンティティを保とうとする人間は


信頼に値しない。


そんな強がりだが間違ってはいないが、大きな声で言える内容ではない。」


認めたくはないが多く頷いてしまうところも多々ある。



そして、

僕のデスクの前には


「ボツワナ」


が座っている。


名前の由来は「年中日焼けしているから」。


黒人さんみたいだね


ということでみんなからそう呼ばれるようになった。


「サーフィンが趣味なんですよ」


という彼は


ビーチで出会った彼女とサーフィンを通じて交際を始め、


一週間で結婚をしたという伝説を持っている。


そしてこの職場のメガミと呼ばれるのがそのお相手だ。


職場まで連れてくるとはなかなかのやり手だ。


事実、ボツワナの女神という逸話もあるくらいだ。


かつてボツワナ経済を救った偉人として南アフリカの歴史の教科書には載っているらしい。


日本の歴史の教科書の隅にも出てきている懐かしい内容である。





これが僕の職場。


だからと言って何か事件が起こるわけではないけれど、


でも、色の濃い人間が多いなというだけの文章。


多種多様な生き方を実感しているよって話。









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