planet walker
人には親切にしなさい。
幼いころから母親にそう教えられてきた。
しかし、なぜ親切にしなければならないのか母は教えてくれなかった。
母はいつだってそうだった。あれをしなさいこれをしなさいというけれど、なぜそうしなければならないのかを決して教えなかった。
「あそぼうぜー。」
「ごめん。今忙しいから。」
「なんで半ギレなんだよ。しかも全然忙しそうじゃないし。超暇そうだし。」
何言ってるんだろうか?
「今からペットの散歩に行かないといけないんだよ。」
「お前ペットなんて飼ってないだろ。」
うーんそうだっけ。そうだったかもしれない。
「えっ、だってこれからお前と出かけるんだろ?」
「ん?」
「え?」
おいおい、話がかみ合ってないな。
「まあとにかく行こう。」
「お、おう。」
腑に落ちない様子だったが、無視しておこう。
はあ、それにしても今日もいい天気だな。天気がいいと気分もよくなってくるな。
「って、どこ行くんだよ。」
「どこでもいいさー。」
「お前のそういうとこ嫌い。」
えっ、嫌われた?やばいな。友達が一人もいなくなってしまう。
「ごめんごめん。空き地があるだろ。そこ行こう。」
「じゃあ競争な。」
二人同時に駆け出す。風が心地いい。走っている瞬間というのは幸福な時間の一つだと思う。
「あぶない!」
どこかで少女の声が聞こえた気がした。
でもそんなのは関係ない。肉体が悲鳴と歓声を上げている。
空き地が見えてきた。
「遅いぞー。」
むかつくなあ。ちょっと運動神経がいいからって。
「相変わらずだなあ。」
「ぜーぜー。」
「水飲むか?」
「はーはー。」
話しかけんなや。
「空き地で何するんだ?」
「ふー。」
とりあえず、座る。
「ちょっと休憩しよう。」
「もうしてるじゃねえか。」
いやいや座っただけ、休憩とは違う。うん。
「なあ、あれって何だと思う。」
「さあ?」
「まあ、いいか。」
関係ないか。