one
「大変だ‼魔王が復活した!
「なんだって!この世はもうお終いだ。
「魔物たちが攻めてくるぞ、逃げろ!
「落ち着き給え、私が来たからにはもう安心だ。
「あなたは、勇者様。
「おお、勇者様が現れたぞ!
「勇者様どうか私たちをお救いください。
「任せておけ。
勇者は魔王城へたどり着いた。
「魔王よ、覚悟しろ!
「フハハハハ、勇者だか何だか知らんが、粉みじんにしてくれるわ。くらえ、メタボリックサンダーストーム!
「ぐっ。だが、人類の未来のため、負けるわけにはいかないんだ。必殺メテオスラッシュ!
「ぐわあ、バカな、魔王たるこの私が敗れるとは。
こうして世界に平和が取り戻された。
「なーにぶつぶつ言ってんの。」
「おふ。」
突然後ろから声を掛けられ、変な声が出てしまった。だが私ほどの傑物になると、そんな動揺などおくびも出さず、悠然と振り返り。
「いい、いや、あの、子供たちが遊んでたから、セリフをね。」
「女の子たちなのに、勇者ごっこなのか。」
「聞いてたのか!エッチ!スケベ!変態!」
なんて奴だ。いつからいたんだろう。
「まあでも、平和だな。」
「ん。そうかもな、今のご時世、平和なんて言うやつはほとんどいないけどな。」
「はは、違いない。」
それにしてもお腹すいたな。今日の晩飯は何だろう?
「最近さ、よく考えるんだよね。」
「何をさ。」
あれ、今奥の方で何か動かなかったか。誰か来たんだろうか。
「こうして当たり前のように暮らせるのっていうのは、思っているよりも幸せなことなんじゃないかなあって。」
「日々の暮らしに文句はあれど、些細なことってか。」
「うん。」
何だろう、嫌な感じがする。さっきの影が気になってしょうがない。
「なんかさ。」
「危ないっ!!」
向こうの方で遊んでいた女の子たちの誰かが叫んだのが聞こえた。
「えっ。」
思わず声が出た。視界が消える、同時に激痛が走る。何にも理解してないけど、体は本能的にその場から逃げようとする。
「あああああああ。」
口から叫びが漏れる。衝撃が走った。
そこから先は何もわからない。