プロローグ.セルデシアへの転移と、余興との出会い
冒険の舞台は、ナインテイル自治領にある冒険者の街ナカスと、元の世界の九州の大地。
主人公は長期の引退から復帰したロートルでもありElderとやっかまれたりデッドコンテンツまみれと揶揄されたり。サブ垢キャラ余興に入り込んだ何者かと、ヤマトサーバーの西端の方とかをかき回していきます。
※本家様のオリジナルキャラは、ごく一部を除き基本的に出て来ません。
プロローグ.セルデシアへの転移と、余興との出会い
エルダー・テイルは二十年も続く老舗MMORPGのタイトルである。自分も二十代後半から四十代半ばに達する十八年ほども付き合ってきてしまった。
正確に言うなら、アメリカでサービスが始まった翌々年。まだ日本語版サービスが始まって間もない頃から十年ほど続け、その後八年ほどはアカウントは残していたものの、別のアクション寄りなMMORPGや、宇宙艦船ものSFMMOをやり込んだりもしてみたが、その後はMMOそのものから離れていた。
その間に関東から九州への引っ越しや、派遣や契約の仕事に合間が空き、ちょうど三ヶ月後の新拡張パック<ノウアスフィアの開墾>が販売されると聞き、ひっそりとエルダー・テイルに復帰してみた。
膨大なフレンドリストに載っていた九割以上はすでに灰色表示。ゲームを辞めたかログインしてこない状態になっていた。
自分から誰かに連絡を取る事はせず、他に人も来ないような不人気ゾーンで二垢のサブキャラ、施療術士の座興ではなく、召還術士の余興を、ファーストキャラのエルファとともに引退当時の60で止まっていたレベルを90へと引き上げていった。
復帰してしばらくすると、かつての知り合いがぼつぼつと連絡を取ってき始め、彼か彼女のサブキャラとレベル上げをするか、パワーレベリングの手伝いをしてもらうか、効率の良い新しい狩り場を教えてもらったりもした。
それでもまったりとレベルを上げ続けたせいか、現在のレベル上限90にまで到達したのは、<ノウアスフィアの開墾>が適用される日の午前零時の十分前だった。
直前までレベル上げを手伝ってくれていた知り合い達とダンジョンの出口で別れ、彼らがそれぞれのホームタウンへと帰還呪文で去った後、自分はエルファと余興に用意していたレベル90用の装備を変更し、新しい呪文や歌を覚えさせていった。
その待ち時間の間に、時計の針は午前零時に近づいていき、まるでニューイヤーデイみたいな盛り上がりだぞ!とナカスに戻ったフレンドのグレンからメッセージもあったが、自分は戻る前に新しい装備や呪文の具合を確かめておきたかった。
目の前に並んでいるのは、二台のモニター。横長の机の足下左右には二台のデスクトップPCが置かれ、さらにサイドデスクの上にはWebで調べ物専用に使っているノートPCが置いてあった。
モニターの間に置いてあるマグカップを手に取り、もう冷めてしまっているコーヒーをすする。右手のモニターにはファーストキャラであるエルフのバードのエルファ。
左手のモニタには、背の低いハーフアルブの老人の余興が映っていた。
どちらも新しい魔法や歌を覚え終え、俺はエルファを立ち上がらせた。もしこの時先に余興を立ち上がらせていたらどうなっていたのか。ぞっとしない想像だが、それでも、エルファを操作するキーボードから手を放す直前、時計は0時に至り、世界は暗転した。
目もくらむような変転が終わった後、目の前には余興がいた。正確に言えば、余興である筈の誰かだが、頭の上に表示されているステータス、これが肉眼で直に見えるのもおかしな話なのだがとにかく、キャラクターネームは間違いなく余興なのに、その外見は苦虫を噛み潰したような老人の渋面ではなく、少年か少女かもわからないような中性的な面差しの誰かは、唐突に訳の分からない事を言った。
「汝、古き者よ。かつて数多の共感子を生み出しし者なりや?」と。
2017/11/27 ログ・ホライズンが大好き過ぎて、かつて自分がプレイしていたMMORPGの要素を加味した物語を書き始めてみました。