第5話
剣と盾の描かれたわかり易い看板の吊るされた扉を開け放つとむさ苦しい空気がブワっと広がってきた。見える限り、オッサンばかりそれ以外は受付嬢以外いないんじゃないか?いや、その受付嬢ですら半分以上オッサンじゃないか。
「どうぞー」
その僅かなお嬢さんのいるカウンターに並んでいく。
「ギルドに来るのは初めてでしょうか? いえ、失礼しました。他ギルドからの冒険者の方ですね」
「いや、初めてです」
「え? ああ、依頼でしたら手前のカウンターですよ」
「いや、登録です」
「では、少々お待ちください」
魔王の居た新大陸から冒険始めまーす、ていう奴は普通はいないんだろう。嬢の驚きは至極普通の物とも言える。
「では、名前、年齢、戦闘経験の有無、それらをお聞かせ願いますか」
嬢は引っ張りだして来た紙を持ちながら俺達に聞いてくる。
所で名前はどうしようか一応、俺達指名手配されてるわけだし……
「サラ、十四歳、人間相手なら一応ある」
瞬時に偽名を名乗る相棒、ていうかお前さらっと年齢も偽称したな?ていうか戦闘経験ってお前警察相手じゃねーか!
「そちらの方は?」
「ユーリ、二十三歳、俺は魔物相手でもある」
合わせて名乗る、偽名。
「では、こちらの紙をどうぞ」
名前、年齢のみの書かれたペラ紙を一枚渡される。
「こちら、仮のギルドカードとなります。正規の物は依頼をいくつか解決し、実力、資質ともに認められた場合発行されます、発行されるまでは依頼の受注を制限させていただくのでご注意下さい」
これは単純に重要性の高い依頼は受けさせないぞ、という事だろう。
「はい」
「では、その他質問等ありましたらあちら右手の別カウンターにお尋ね下さい」
「どうもー」
これで、ギルドでの登録は終わりというわけだ。早かったな。
「ユーリ、これからはサラって呼んで」
「わかってる」
まあ、偽名で呼び合わなきゃバレるもんな。
「取り合えず、一旦ギルド出よっか」
「そうする」
ぶっちゃけ、おっさん臭い。それに今から働く気にもならない。長旅の後だし。
と言うわけで宿を探すことにした。