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レベル0に見えますが実はカンストしてるんです  作者: 酢酸 玉子
第8章 狩る者と狩られる者
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第79話 合流

 どうやら本当にドワーフが立ち去ったらしいと確認して、ミエラはほっと息を吐く。そのままシュリの元へ歩み寄った。


「ありがとう、シュリ。助かった。それにしても、どうしてこんなところに?」

「イルタニャと組んでの商売。急ぎの用があって移動していたら、何者かと戦っている貴方達を見つけた」


 ミエラの問いに、シュリは短く答える。言われて見ると、後ろに控えている男達は以前、イルタニャの王女を探して、商人のふりをしながら各地を巡っていた者たちのようだ。リーダーだったグフリーマンという男はおらず、他に入れ替わりもあるものの、今ここにいる十一名の内、半数程度は見覚えがあるような気がする。


「えっと、でも皆さんって、本職はあくまで王女探しの軍人さんで、その任務が達成できた今じゃあ、こんなことする必要なかったんじゃ――」


 イルタニャでの出来事は、シュリやヒカルからミエラもある程度は聞いていた。その話によると、シュリが王女と間違われたのはある陰謀と絡んでいて、それを解決に導いたのがヒカルとシュリ。その結果、真の王女も見つかり、今は彼女が国家元首になっているとかそのように聞いていたのだが――

 その質問をすると、何人かの男が目を逸らしたり、苦笑いしたりした。やがて、ハッサクと呼ばれていた一人の男が代表して答える。


「あー、いやそのですね、ほら、商人のふりをして王女探しをする傍ら、まあ世界各国の情報を集めたりもしていたわけでして、そういう機能は今でも必要と言いますか、まあそんな感じの事情があってですね、決してこう、旅をしなくなったらなぜかそわそわとするようになってしまったとか、折角嫁や子供に会えたのに向こうはむしろこっちのいない生活に順応していて家に帰っても邪魔者扱いされて居場所がなくなったとか、そんな感じの理由ではないんですよ、はは、はははは……」


 視線が宙を彷徨っているし、他の男達の表情もおしなべて不自然に歪んでいる。ミエラはこの話題をこれ以上引っ張ることは避けようと思った。


「そんなことより、ヒカルはどうしたの?」


 さっきから何も喋っておらず、落ち着かなく周囲を伺うような顔をしているヒカルを見て、シュリが聞く。ヒカルの力をもってすればあの程度の相手、なんでもないと分かっているだけに当然なシュリの疑問に、ミエラは一瞬言葉に詰まった。正直に全てをここで語っていいものか。シュリは勿論何がどうなってもヒカルの味方だろうが、イルタニャの、しかも情報収集を担当とするような人達に全てを語っていいものか。いくら貸しがあるとはいえ、そこまで甘い世界ではない。そもそも、あの国際会議にイルタニャは参加していた?そういえば今回の問題となった地域とイルタニャでは距離が遠すぎることなどから特使は来ていなかった気がするが――もし、ヒカルがイルタニャにも手を出していたらむしろこの場はほとんど敵同士に近い。さすがに関係のあるイルタニャに対してまでそんなことをしていなかった気がするが――

 一瞬でぐるぐると頭の中が混乱するミエラをさりげなく制し、ヘルネがすっと自然に一歩前に出た。そのままヒカルの肩に手を置き、抱き止めるようにする。


「ヒカルは今、ちょっと体調を崩していて――熱が酷いの。さっきも襲撃されるまでは寝ていたくらいよ」


 そのままヒカルを寝かしつけるようにするヘルネ。おそらくヘルネの方が手に力を入れて、ヒカルにどう動いて欲しいか指示を送っているのだろうが、事情を知っているミエラから見ても、疲れ果てたヒカルの体から力が抜け、ヘルネがそれを受け止めながら横にしたようにしか見えなかった。


「――熱っ!?大丈夫なの!?」


 口数の少ないシュリが、珍しく焦ったように口を開く。ヘルネは彼女を落ち着かせるように言った。


「大丈夫。命に関わるような問題じゃないわ。だけど疲労が激しかったから、あの襲撃者とは私達が戦っていたの――山賊だか何だか知らないけれど、念のためにこれからは貴女達と合流してもいいかしら?」

「勿論、ヒカルのことがあるなら話は違ってくる、けど――」

「俺達も、ヒカルさんには国を救ってもらった恩がありますからね、いいですよ」


 ちらりと後ろを振り返るシュリに、ハッサクが笑顔で答えた。

 ミエラはふうと息を吐く。どうやらイルタニャの面々はヒカルの力をそこまで詳しく知っているわけではないようだ。ミエラからしてみれば、ヒカルが体調を崩して不振に陥るなどということはあり得ないと分かるのだが、彼らはその話を信じてしまっている。あるいはシュリが冷静さを失ったのが効いたのかもしれない。彼女とてヒカルのすごさは分かっているはずなのだが、ヘルネの真に迫った演技を信じてくれたか。シュリにはちゃんと後で説明しなければならないと思いつつ、今はようやく向いて来た幸運に胸を撫で下ろすのだった。

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