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レベル0に見えますが実はカンストしてるんです  作者: 酢酸 玉子
第8章 狩る者と狩られる者
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第78話 救援

 突然の新手に一瞬動揺するが、それで直ちに劣勢になるほどミルルルの実力は弱くない。すぐに気を取り直して、短剣使いの少女に向き合う。

 気付かぬ内に仲間を集める、城島ヒカルの作戦なのか――それとも、本当にたまたま、運よく彼の知り合いが通りかかっただけなのか。そんなことが少し心にもたげて、すぐに考えるのをやめる。今自分がするべきことは目の前にいる敵と戦うことだけだ。

 相手の“短剣術”はLv010。その歳で大したものだが、不意を打たれなければやはり彼女もまた雑魚のうち。“竜の牙”を豪快に振り被り、相手の短剣を折にかかる。しかし金属音を高らかに立てるだけで、短剣はびくともしなかった。その感触に、ミルルルは覚えがある。あの鉱山で、反旗を翻した“ゼラー”達が持っていた武器の記憶が、頭をよぎる。


「――ならばこっちだ!」


 ミルルルは即座に、腰に差していたもう一つの剣を抜いた。薄闇に溶け込みそうな紫色の刀身が、鈍く力を放つ。

 ――“蛇の鱗”。復讐の鬼と化したミルルルが、旅の途中で大蛇と戦った際に得たもう一つの名剣。その力は――弱きものを切らず、ただ強きもののみを断つという逆接の刃!

 先程と同じように受けようとしたシュリが、咄嗟に危険を感じて短剣を下げながら跳躍する。しかし“蛇の鱗”は彼女の短剣にわずかに届き、その分の鉄をえぐり取った。


「そんな――」


 無理な回避行動と、自慢の短剣に傷を付けられたことでシュリがバランスを崩す。即座に追撃しようとしたミルルルの足元に――矢が飛んできた。


「とっと」


 慌てて一歩二歩と下がる。誰かと見ると、さらに数名の男達がこちらに迫って来ているようだった。商人の格好をしているが、戦闘に関して素人にはとても見えない者たちだ。


「――ちっ、どうしてこうも雑魚が」


 思わず舌打ちしてしまう。城島ヒカルと戦いたかったのに、こうも救援が次々と来るようでは興ざめもいいところだ。彼が何を考えているかもわからなくて不気味だし、雑魚も集まれば面倒くさいということはここまでの戦闘でもよく理解できていた。あの魔法使いの力を借りるのも癪だと思いながら、それでも昔より丸くなったミルルルは踵を返し、来た道を走って帰って行った。




「ちょっと――どこ行ってたんですかミルルル!せっかく急いで城島ヒカルを追いかけないといけないのに、目を覚ましたら貴女がいないせいで随分時間を――」

「馬鹿、その城島ヒカルと戦ってきたんだよ」


 言葉を遮られたメヒーシカは、その内容にしばらく二の句が継げなかった。


「だから言ったろう。もっと辛抱強く調べるべきだって。ボク達は彼らを追い抜いてしまっていたんだよ」

「そんな……それで、どうだったんですか!?」

「――メヒーシカ、キミ、ボクに何か隠していないかい?」


 質問に質問で返す。一瞬、メヒーシカが言葉に詰まったのをミルルルは見逃さなかった。


「城島ヒカルの様子が変だった。まるで自分ではボクと戦いたくないみたいな……理由がよくわからない。何か知っているんだろう?」

「……さあ、何のことですかねえ」


 しばらく二人は、睨みあうように見つめ合う。先に目を逸らしたのは、ミルルルの方だった。


「――ふう、まあいいよ。ボクもキミに隠し事をしている――というか、本当のことを言っていない部分もあるしね」

「……そうなんですか?」

「――彼と出会ったきっかけ、ボクがこれまでに何をしてきたかを聞けば、キミはボクのことを軽蔑するかもしれない。……そう、そういう意味では、城島ヒカルはボクにとってただの仇ではなくて、大切なことを気付かせてくれた恩人でもあるんだ。でも、だからと言って胸に宿る復讐の炎を消すことはできない。だからボクは城島ヒカルを追うのだけど……そのあたりの事情を聞かずにこれまでいてくれたのだから、ボクの方もキミに無理やり問うのは止めよう」


 そう言って、ミルルルは軽く微笑んだ。その理由は、単に余計なことに首を突っ込んでミルルルの協力を失うことを恐れただけかもしれない。しかし、自分でも整理しきれない複雑な気持ちを、ずけずけと踏み込まず放置してくれていることは素直にありがたいと思った。


「さあ、それよりもこれからのことを考えようか。城島ヒカルにさらに救援が現れた。短剣使いの少女と、ある程度対人戦の心得がありそうな男達数名だ。奴らはどんな関係か分からないが、ボクとキミが手を組んで戦えば奴ら全員を敵に回しても、互角以上に戦える。勿論、城島ヒカルを計算に入れなければだけど――さあ、これらの情報を元に、メヒーシカ、キミはどう動くのが最善と見る?」


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