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レベル0に見えますが実はカンストしてるんです  作者: 酢酸 玉子
第6章 カンストゼラー流外交
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第51話 勢いとノリ

 最初はぽつぽつとした喋りだったが、徐々にジリの舌先は滑らかになっていき、話の内容も臨場感に溢れ分かりやすいものだった。調べてみたところ彼女には“語り部”の素養があるらしい。暇があれば、そこから“ゼラー”脱却を目指させてみるのも悪くないだろう。だが、まずは大蛇についてだった。


「それで、どうして大蛇狩りなんて思いついたんだ?」

「だって、大蛇狩りに成功して、それにジリも貢献したとなったら、もうこの街の人も彼女を軽んじることはできないでしょう?ここの人達は、人としてそれくらいの常識はあると思うわ」


 ヘルネの意見はもっともだったが、彼女からワクワクとした雰囲気がただよっていることを鑑みるにどうやらそれだけではないだろう。そう言えば、ヘルネは物語や英雄譚が好きである。あるいは、吟遊詩人に語られるような魔物退治の物語に抱いた憧れを発散しようとしているのか。


「……だからってな、“剣術”Lv020の奴が勝てなかったんだろ?並大抵の相手じゃないぞ」

「でもヒカルがいるじゃない。それに、魔物退治の醍醐味は、レベルの高さじゃなくて相手を踏まえた高度な策と、それを実現する勇気と行動力よ」


 すっかりヘルネは物語の中の人になりたがっている。一方のミエラも、積極的に支持はしないものの特に反対もしないようだった。

 当のジリだけが、不安そうな顔をして、俺のことを見ている。こいつは“ゼラー”なのになんでこんな話になっているんだ、というような顔だ。それで正常な反応なのだが、ヘルネもミエラも俺と長い間行動を伴にしているせいで感覚が鈍ってしまっているのか。


「――やれやれ、まあ仕方ない、やってみるか

 とはいえ、太さが人の幅もある大蛇と聞けば純粋に興味もある。邪竜すら倒せた俺にとっては負けるとも思えないので、結局は大蛇狩りをしてみることにした。


「――へっ、ほ、本当にやるんですかっ!?」


 さすがにどこかで軌道修正すると思っていただろうジリが、そのまま大蛇狩りという結論に落ちついた俺達に対して驚愕の声を上げる。


「大丈夫、ヒカルに任せていれば、きっとなんとかなるから」

「任せておけばって、あの人“ゼラー”じゃないですか!!」

「そうそう、道案内のために、一緒に来てわないといけないな」

「なんで一日に二回も大蛇と会いに行かないといけないんですか!」

「拒否は不可能、私が払った金貨を返せるというなら別だけど」

「――鬼!悪魔!!」


 ぎゃあぎゃあわめくジリを連れて、俺達は大蛇を狩りに、ジーシカの城門へと向かうのだった。




「本当に行くんですか……」


 ジリが蒼い顔で呟く。すでに俺達は門の外に出ていた。軽く整備された街道を外れて、目的の山に向かう。

 割と早く、遠目にその山は見えてきた。確かにジリの言う通り大した規模の山ではない。そして――大蛇の姿はなかった。


「大蛇、いませんね。じゃあ仕方ないから帰りましょう、そうしましょう」

「いいえ、いないならあの山に登ってみましょう」


 安堵するジリに、ヘルネは残酷な提案をする。


「何考えてるんですか!!あの山の中に大蛇が潜んでるかもしれないんですよ!!自殺行為です!!どうしても行きたいなら、あなたたちだけで行ってください!」

「何を言ってるの。手柄を貴女に渡さないといけないのだから、貴女の参加は絶対よ」

「手柄いりません!命の方が大事ですから帰してください!!」


 涙目で抗議するジリだったが、ヘルネはどこ吹く風と無視した。そしてジリを引きずって無理矢理山に入って行く。


「――本当に、ヘルネは大蛇狩りをやってみたいのね」


 ミエラが俺を見ながら、何ともいえない笑みを浮かべた。

 そして俺達二人もヘルネの後に続く。今朝は大蛇によって防がれていたという道を通って、俺達四人はいつ大蛇と出会うとも知れない山に踏み込んで行った。

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