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レベル0に見えますが実はカンストしてるんです  作者: 酢酸 玉子
第6章 カンストゼラー流外交
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第50話 大蛇と少女

「城門を通るときには、門番さんに挨拶してから出て行きました。知っての通り、不法に街に入ってこようとする“ゼラー”がいるので、彼らと間違われないようにするために門番さんへの挨拶は欠かせません。いつもは邪見に扱われるのですが、今日は門番さんの機嫌もよかったのか、


『おお、最近は大蛇が出ているから気を付けろよ!』


 と声をかけてくださいました。

 大蛇のことは聞いていました。大きな蛇がジーシカの周囲に出没しているって、街でも噂になっていましたから。あたしも心配はしていました。でも――仕事だったからどうすることもできません。どうか大蛇には遭いませんようにって思いながら、山へ行きました。


 え?大蛇が複数いるか、ですか……?そのことは街でも噂になっていました。一匹だけでも大変なのに、実は何匹かの大蛇の別々の目撃証言なんだったら目も当てられないって……でも、それはなさそうです。というのも、一度“剣術”Lv020のドワーフが、大蛇に傷を付けることに成功しましたから。その方は旅の途中だったそうで、決着を付けられないことは無念だと言いながら次の目的地へ向かったそうです。そして、その後は常に、その傷の着いた大蛇しか目撃されていないみたいです。だから、多分大蛇は一匹だけしかいないと思います。


 いえいえ、あたしの話が下手なだけですから、どうぞ何でも聞いてください。

 そして、あたしは山へ向かいました。山です。小さな山なので、特に名前は着いていません。強いて言うならば、薬草の山、でしょうか。そう呼んでいる人もいるみたいです。いつも、ここで薬草を摘んでいます。私は薬草を急いで集めようとしました。やっぱり、門を出るときに大蛇のことを言われたのが気になっていたんです。そして――悪い予感は当たると言いますか、本当に当たって欲しくないと思ったんですけど……あたしは大蛇と出会いました。


 最初は、これが噂に聞く邪竜かと思いました。それくらい大蛇は大きかったんです。太さだけで、あたしの背の高さくらいありました。色は毒々しい紫色で、そのおかげであたしは遠くからでも大蛇を発見することができました。山の麓にその巨体を横たえていたのですが、あまりにも長いその体が、山に入るのを通せんぼするかのように横たわっているのです。それならば逆側に回ればいいと思われるかもしれませんが、小さいと言っても山は山。ぐるりと回るにはとても距離があります。おまけに、砂場に作った山のように綺麗な形はしていません。周囲のどこからでも入れるようなことにはならないんです。沼が広がっていて引きずり込まれたら助からないような場所もあります。切り立った崖のようになっていてとても入れない場所もあります。それでもどうにかこうにか、工夫に工夫を重ねて頑張ってみれば、もしかしたら山の中に分け入ることもできたかもしれません。しかし、考えてください。山の片側には大蛇がいるのです。今はその巨体を横たえて、のんきにお昼寝をしているのかもしれませんが、もしも何かの気まぐれで、あるいは朝ごはんが欲しくなって、ちょっと山に入ってきたらどうなるでしょう。どぎつい紫色も、薄暗い山の中では目立たないかもしれません。そうして、気付かぬうちにぱっくりといかれるのではないか……そう思ったら、あたしはとてもじゃないけど、山の中に入ることはできませんでした。こうしてあたしは、遠くから見た大蛇の姿に恐れおののいて、日課の薬草採りをまったくできずに逃げ帰りました。あとは皆さんがご存じの通りです。

 

 薬草を採って帰らなかったあたしを、親方は許してくださいませんでした。そうして私は大目玉を食らい、あわやそのまま殴り殺されるかと思っていたところ、皆さんに助けられたというわけです」


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