第47話 求婚……?
「首脳会議が開かれる。君の仕出かしてくれたことの後始末のためにね」
チャリーズにそう言われたのは、俺が深森に行ってネルジランド軍を倒してから一カ月ほど経ったときのことだった。既に、ヤーシェハマンは何度も俺に礼を言った後、元の旅に戻っている。
あのあと、俺はバカス王子をネルジランドに届けて、今後も武力侵攻を企てるようならばそれに対して制裁を加えると脅しつけたのだが、なにぶん国と国との間の事件である。個人の喧嘩のように簡単には収まらない。まず、ネルジランドは負けたわけだが、どこに負けたのか勝者が必要になる。結局事実とは若干異なるものの、バカス王子がオートランドに連れて来られたことも踏まえれば、オートランドがエルフと同盟を組み、ネルジランドに対して攻撃を加え撤退させた、という解釈しかしようがない。となれば、これまでまったく話題に上がっていなかったオートランドとエルフの同盟に、周辺諸国も黙って見ているわけにはいかない。ある国はそれに加わりおこぼれを預かろうとし、また別の国はそれを批判し自国が国際的なバランスのなかで劣勢になることを防ごうとする。
そんな動きは、やがて首脳会議を開催すべきだという意見を生み出した。
「さて、外交は確か君が主導してくれるという話だったと思うが……事態の収拾は、ちゃんとつけてくれるんだろうね?」
「ああ、さすがにここでお前に投げるほど腐ってはないさ」
「それじゃあ、随分不安もあるけれどもまあ君に任せておけば国として不利になることはないだろうからね。できれば適度に自重していただきたいが。まあ、それなら僕はオートランドで待っているとしよう。出席は頼んだ」
こうして、俺はジーシカの国で行われる首脳会議に出席することになった。
だが、問題が一つ。
「ミエラ、ヘルネ。じゃんけんしてくれ。勝った方が俺の正妃、負けた方が側室ってことで」
「「何それ!?」」
「今度首脳会議に出ることになったんだけど、大抵の首脳は既婚者だからな。俺の方にも妻がいた方が何かと都合がいいらしい。というわけで、正妃と側室くらい決めておこうと思ってな。勿論やりたくないなら無理強いはしないけど」
二人は、何かを言いたそうに顔を見合わせた。
「……およそプロポーズにしては最悪の部類に入るのじゃないかしら。貴方、出会った頃はそんな人じゃないと思ってたんだけど」
やがてヘルネが呆れたように肩をすくめる。
「――だってここでロマンチックに求婚しても、あとで首脳会議に出席するためって理由がばれたらそれこそ二人とも烈火のごとく怒るだろ……」
「今でも烈火のごとく怒ってます!」
ミエラの周囲からプンプンという擬音が聞こえてくるかのようだった。いや、どちらかと言うとゴゴゴゴゴゴゴゴかもしれない。
「いやでもほら、誰でもいいんじゃなくって俺としては二人だからこそこうして頼んでるっていうかその」
「だいたい、じゃんけんで正妃か側室か決めろっていうこと自体がおかしいでしょう!」
「いやそれは正妃と側室なんて所詮名目上のことで俺は二人とも同時に大事にしているという意識の表れというか」
二人に詰め寄られ、俺の背中から汗が噴き出る。
「二人とも俺のこと好きじゃないのかよ!!」
「「好きだけどそれとこれとは話が別だ!!調子に乗るんじゃない!!」」
「す、すみませんでしたぁっ!!!」
結局、仕切り直しを求められた俺は、“知識”Lv10000をフル動員し、なんとか二人のお眼鏡にかなうようなプロポーズをすることができたのだった。
結果、外交の場でも表舞台に立つことの多い正妃には、対人関係の構築にも経験が豊富なヘルネがなり、ミエラは側室として俺のことを支えてくれることになったのである。
そうして準備を整えた俺達は、首脳会議が開かれるジーシカへと旅立ったのだった。




