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レベル0に見えますが実はカンストしてるんです  作者: 酢酸 玉子
第1章 見た目は“ゼラー”の転生者
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第4話 “ゼラー”

 一週間もすれば、俺は新たな生活にも慣れてきた。

 まず朝は日の出とともに起こされる。


「テメェら起きろ!!ちんたらしてんじゃねぇ!!」


 とは最初の日に俺の腹に一発くださった黒服だ。名前はデュラというらしい。デウリスからある程度の信頼を置かれているようで、俺やミエラを含む“ゼラー”十名が彼の奴隷として使役されていた。デウリスはあくまで、親切で“ゼラー”をここに連れてきている、という風を崩しておらず、“ゼラー”達を厳しく扱うのはデュラのようにデウリスの配下で働いている幹部か中間管理職のような立ち位置の者で、デウリスは誰に対してもにこにこと愛想よく振舞い、恨みを買うことを避けていた。


 “ゼラー”達は朝の身支度に五分程度しか許されず、少しでも遅れたら殴られる。遅れなくてもデュラの機嫌が悪ければ一発貰うことになる。勿論朝食のような素敵なものはなく、すぐに重労働の始まりだ。内容は日によって荷物の運搬、工房での単純作業など差があったが、総じて何の専門知識や技能がなくてもできる類の仕事だった。どうやら“ゼラー”の手に職を付けて将来自立させてやろうなどという心掛けはまるでないらしく、使い捨ての単純動力としてのみ扱われていた。


 みんながくたくたになるころに、ようやく昼食が支給される。炊いた雑穀かパン、麺のいずれかで味付けやおかずなどはほとんどなかったが、さすがに労働力が発揮されないのは向こうとしても困るのか量はある程度与えられた。肉体労働で限界まで酷使された“ゼラー”達にとっては、食べることもしんどそうではあったが押し込むようになんとか食事を取っていた。食事の時間も多くは与えられないからだ。そしてまた休む間もなく重労働。これが日暮れまで続く。俺たちを監督していたデュラの仕事はここで終わるのだが、“ゼラー”にはまだ休みは与えられない。また短い時間で夕食を食べされられたら、薄明かりの灯る中で、今度は内職の時間が始まる。作らされるものは様々で、紙を張り合わせたり、木を指定された形に切ったりという内容だ。おそらくはもっと大きな商品の部品となるものなのだろう。毎日指定された個数を作るまで寝ることは許されず、全て終わるのは日付がとうに変わっているころだった。そして六畳ほどの狭い部屋に十人が押し込められ、翌朝までの僅かな睡眠時間を得ることになる。体を洗ったり拭いたりということは、俺がここに連れてこられてからの一週間では一度もさせてもらえなかった。


 このような劣悪な労働環境だが、この世界では違法ではない。そもそも、元の世界であっても百年、二百年前には当たり前の環境だし、現代においても世界に目を向ければそのような場所はいくらでもあった。この世界において合法であっても、さほど意外なことではないと言えるだろう。というわけで、違法性を利用してデウリスを追い落とす方向は成り立たないことがわかった。ではどのような手段が一番効果的か――俺は思索を巡らしながら、狭い部屋の中で僅かな睡眠時間を取ろうとしていた。


 人の動き出す気配を感じたのはそんなときである。男女の区別もいちいち考慮されず押し込められている部屋の中、“そういうこと”が“ゼラー”同士で起こることもあるとは聞いている。生まれた子供の大部分は死に、五歳を迎えられた子供は仕事を与えられて今の俺たちと立場が同じになるとか。もしも生まれた子供が“ゼラー”でなくなれば少し待遇も代わり得るが、そもそもレベルを上げるにはある程度の鍛錬や基礎体力が必要なので、“ゼラー”の奴隷生活ではそれも望めないとか。まあその辺りは新入りとして過ごしているうちに色々周囲から噂を集めるのと、“知識Lv10000”を利用してとの合わせ技で情報収集を行っていたのだが、ともかく、何か気配があってもまあ、野暮なことはしなければいいだけの話のはずだった。


 気になったのは、その後部屋が開く気配があったことと、出ていったのがミエラだったことである。他の奴が起きていたら逢引きかと思われそうだが、俺はミエラの後を追ってこっそりと部屋を出た。


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