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レベル0に見えますが実はカンストしてるんです  作者: 酢酸 玉子
第2章 エルフの村、ドワーフの鉱山
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第14話 ヤリー鉱山地帯

「さあさあ、“ゼラー”の諸君、今日も一緒に元気に働こうね~一日終えればあったかいご飯と明日を迎える権利、途中でサボれば刀の錆になる名誉、好きな方を選ぼうか~♪」

 

 にこにこと、邪気のない笑顔で物騒なことを話すのは、深森から遠く離れたギシャレ山脈のヤリー鉱山地帯を丸々取り仕切る、ドワーフの娘ミルルルだった。

 ドワーフにしては若い年齢ながら、種族としての得意分野である“採掘”、“鍛冶”、“製鉄”といった分野のレベルが軒並み高く、さらにその高い技術で鍛えた剣を用いて鍛錬したおかげで、“剣術”レベルは実に020に達していた。“魔力”などとは違い、生まれついてのものだけでなく努力によっても成長しやすいとされる“剣術”ステータスとはいえ、Lv020は生半可な値ではない。全てのステータスのレベルを合わせれば112になるというほど多彩な彼女はドワーフ達の次の世代の盟主として期待され、同時に厳しい試練も課せられていた。それが、この鉱山の運営である。彼女にとってはここは生まれて始めて与えられた自分の城であると同時に、課せられた試験問題でもあったのである。


 さて、そんなミルルルがいるこの鉱山地帯、彼女が徹底的な節約方針で、安くこき使える“ゼラー”が労働者のほとんどを占めているのだが、街の“ゼラー”達には、“魔の強制労働所”と恐れられ、一度ここに入ると二度と太陽を拝むことはできないと噂されていた。それでも、ろくな職もなく、食うに困った“ゼラー”達が、せめて生きながらえることができるならばと、やって来ることは後を絶たなかった。


「さあ、キミ達いい仕事をしてるかな?おおっ!それは紅玉鉱石――いいものを見つけたねプック!今日はご飯を大盛りにしてあげよう。ジャヂ達はそっちの坑道を掘り進めてね~、ボクはこっちで最近の鉱石を調べることにするよ、どうも何か一山ある気がするんだ――」


 “ゼラー”達に命令を飛ばしながら、自分も精力的に仕事をこなすミルルル。そんな彼女の元に、一人の“ゼラー”が顔を出した。


「頭領、一人ここで働きたいって“ゼラー”が来てますぜ」

「そうかい!すぐに連れて来てくれ!」


 ミルルルの命を受けて、ほどなくして一人の青年が連れてこられた。ステータスウィンドウで確認をすると、紛れもなく“ゼラー”だった。


「キミ、ここで働きたいんだって?」

「はい……故郷ではろくに仕事ももらえなくて……このままじゃ野垂れ死にって思ったときに、ここの噂を聞いたんです……働きさえすれば食べ物は保証してくれるって――」

「ふむ、確かにそれは事実だけど、その代わり働かなければ命の保証はしない、それでもいいかな?」

「はいっ――お願いします。もう、俺には行くところがないんです……」

「なら歓迎しよう、ボクはミルルル、この鉱山一帯を取り仕切るドワーフだ」

「よろしくお願いします――俺はヒカル、ただの“ゼラー”です」




 その瞬間、ミルルルにはヒカルと名乗った“ゼラー”の瞳がギラリと光ったように見えた。しかし、次の瞬間には先ほどまでの頼りない“ゼラー”の顔に戻っていた。ミルルルは、少し気になったものの、意識をそらす。


「それじゃあ、早速仕事を説明しよう――ん?どうした、ボクの顔に何か付いているかい?」


 大方、ステータスウィンドウでも見られたのだろうか、“ゼラー”にとっては雲の上の数がずらりと並んでいる。羨ましがられることも多い。だが、ヒカルの答えは、彼女の予想から外れたものだった。


「あ、いえドワーフって女性も髭が生えているイメージだったから……」

「ああ、確かに人間そういうイメージを持っている者もいるらしいね。ボクの顔を見て幻滅したかい?」

「いえいえ、髭がない方が可愛らしく見えますよ」

「はははっ!剣の腕や錬金の方法を褒められたことはあるが、容姿を褒められたのは初めてだ!キミは随分と愉快な“ゼラー”だね」


 そんなことを話しながら、とりあえずその日は何事もなく過ぎていった。

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