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第95話 決戦

 三人が五人に変わったところで、メヒーシカにとってやることは元に戻っただけだ。相手の内一人は“語学”しか使えないのだから、実質的にはさっきまでの三人に、先程魔導石を使ったヒカルを加えた四人が相手になるのだが、先程までミエラに魔導石があると思って対処していたときとなんら変わりはない。意思の疎通に通訳を必要とする分、相手の方がむしろ大変だと考えていいだろう。


「というわけで――このまま押し切らせてもらいましょうか!!」


 確かに嫌な流れはある。ミルルルは敗れたらしいし、ヒカル達は集合した。けれど、まだ切り札(・・・)を切る気には到底なれない。できるならば、このまま力で押し切り、後顧の憂いをなくしたい――

 そう思いながら放つ魔法を、ヒカル達は散り散りになって避ける。そのまままずは短剣で切り込んで来た少女に、メヒーシカは石つぶてを浴びせた。


「くっ――!」


 相手の出足が止まる。短剣を使ってうまくつぶてを飛ばしたが、大きな隙が出来た。そこにもう一発魔法を打ち込もうとして、しかしその前に真後ろに“格闘術”使いの老人が迫る気配を感じ慌てて振り向きざま、蹴りと魔法を放つ。大振りの攻撃は難なく避けられた上に、今度は自分にも隙が出来た。ここぞとばかりにナイフで切りこんでくるヘルネから逃げるように大きく跳躍すると――いつの間にかそこには城島ヒカルが待ち構えている。


「お上手ですねっとおお!!」


 皮肉を口走りながら、メヒーシカはヒカルに魔法を使われる前に水魔法を飛ばす。さっきも考えたことだが、間合いは自分の方が上だ。

 

 ――ん?

 

 何か違和感があるが、突き詰める時間がない。退いたヒカルを追撃する間もなく、態勢を立て直した短剣使いが迫って来る。そっちに魔法を撃とうとすると老人やヘルネに後ろを取られるので、メヒーシカは広い範囲に石つぶてを撒き散らしながら後退し、建物の壁に背中を預けた。そういえばさっきから、激しい魔法を放っても建物から顔を出す人がいなくなっている気がする。建物もいつのまにか寂れたものに変わっており、どうやらこの辺りは廃屋街になっているようだ。

 ならば敵地で変な助太刀をされない分、メヒーシカにとってはましになったと言えるだろうか。とにかく相手四人に代わる代わる後ろを取られるという危険がなくなる時点で、壁に背を預けるのは悪くないだろう。こちらの動ける範囲も限られてくるが、どうせ使うのは魔法だ。

 相手の四人も警戒したか、先程までとは違って突進して来ない。どうやら戦いは膠着状態に陥ったようだ。メヒーシカは油断なく相手を睨みながら、額の汗をぬぐう。一番飛距離のあるヒカルの魔導石ですら、届かないほどの間合いを確認しつつ、四人の次の行動を身逃さないようにする。

 

 ――四人?


 そう、あの通訳の少年は攻撃方法がないので数には入れていなかった。だから四人だ――ちょっと待て、それであの通訳の少年は(・・・・・・・・)どこにいる(・・・・・)

 いつの間にか彼の姿が消えていた。否、攻撃方法を持たない少年など、数に入れても仕方がない、魔導石でもない限り。わざわざミエラが自分の魔導石をヒカルに預けて来たのだ、魔導石は一つしかないと考えてよくて――




 ……それで(・・・)ヒカルは今(・・・・・)本当に魔導石を持って(・・・・・・・・・・)いる(・・)




 メヒーシカがまさにそのことに思い至った瞬間――その真後ろの壁が砕け、彼女の腰と背中は高速で噴き出す壁のかけらと、その後ろから迫る水圧に打ちつけられた。


「が――がはっ」


 背中に第一の激痛。そして腰から吹き飛ばされ、正面全体が地面に打ち付けられる第二の激痛。肺の中からは根こそぎ空気が押し出されていく。たまらずメヒーシカは地面を転げ回る。周囲には、さっきまでメヒーシカの後ろにあった壁の残骸が散らばっていた。そして、もうもうと立ちこめる土煙の奥から――スッと音もなく、メヒーシカの首筋に刃が突きつけられた。


「『一度やられた方法でも、かえって盲点になっちまうんだよな。とはいえ――二度目でも完全に引っ掛かったお前の負けだ』」


 ミルルルが使っていた剣をメヒーシカの首筋に当て、城島ヒカルが語った言葉は、壁の後ろから現れた少年が訳してくれた。そしてその手には――城島ヒカルが持っているものとばかり思い込んでいた魔導石が、しっかりと握られていた。


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