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オダリスク・ハート  作者: 未央トサ
【序章】兄弟の【始まり】
6/25

同日午後、孝二

【コウジ】


 気がついたら、知らないベッドに寝かされていた。

 まず、兄貴がいた。眠ってるみたいだ。寝息は立ててないけど、椅子に座りながら俺の足元に頭を置いている。


 左を見ると、窓。空いてる。外ではちょうど政治家が騒音を撒き散らしていた。周りにはデカデカと『富国強民党党首、丹波雄吾』『現内閣総理大臣』『改革を進める若きリーダー』と書かれたのぼりを持つ赤いジャンパーのおっさんおばさんが立っている。本人の顔写真付きだ。見慣れた顔にうんざりする。

 街にはポスターや看板が溢れている。ニュースはほとんど見ないが、毎日取り上げられているらしい。社会に疎い俺ですら、丹波の顔はインプットされてしまった。6年前からずっと、この国の総理大臣だ。


 前を見ると、爺さんがいた。俺と同じようなベッドに座りながらニコニコしている。

 やあ、起きたんだね、と声をかけられた。

「ここはどこですか?」質問すると、すぐに答えが返ってきた。どうやらここは病院らしい。横浜市立大学病院、地元では一番大きな病院だ。

 ふと右を見ると、真っ白なカーテン。床まであるカーテンは閉まっていて、隣が見れないようになっている。

 ああ、確かに俺は病院にいるのかと理解できた。


 だけど納得はできない。なんで俺は死んでない…?

 あの時、俺は死を予感した。覚悟する時間はなかったけど、死ぬのは間違いないと思った。

 いや、実際に死んだんだ。生きている方がおかしい。

 遠のく意識の中で、真っ赤な女に死を告げられた。そんで、確実に殺された。なのに…なぜ?


 頭を掻こうとして、全身を激痛が走った。

 痛い。やっぱり、生きている。


 再び兄貴に目がいく。俺に残された唯一の家族。

 しょっちゅう喧嘩もするけど、尊敬する大事な兄貴。

 たくさん心配掛けちまったんだろうな。ごめんな。


 兄貴に触れようと手を伸ばす。と、その時ガバッと兄貴が飛び起きた。

悪夢でも見たのか、真っ青だ。こっちを見て今度は鳩が豆鉄砲をくらったような顔に変わった。

 まったく、随分ひどい顔だなあ。


「心配かけたな。ありがとう」


 ほんと、生きてて良かった。


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