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同日午後、胎動
【ユイ】
「……そう。分かったわ」
執行部長室の豪奢な椅子に浅く座るアカリ執行部長は、口に手を当て静かに頷いた。
珍しく、彼女の表情が強張っている。
普段のギラギラした目の奥が、報告の際僅かながら揺れたのを見逃さなかった。そこにいつもの、底から湧き上がるような圧迫感はない。
この場に私とアカリ執行部長しかいない事に感謝する。こんな姿を敵対するグループに見られてしまっては問題だろう。
やがて、肘置きを押し付けながら立ち上がり、口を開いた。
「あなたも、辛かったわね……。お兄さんーー」
「いえ、私はあなたの右腕であり、剣です。一切の私情は挟みません。ーーたとえ、兄が死んだとしても」
深く頭を垂れる。
間違いじゃない。私にとっての全てはあの時からあなただけなのだ。
「それと、もう一件お耳に入れたい事が」
首肯を確認してから、ゆっくりと彼女に近づく。
失礼します、と小さく告げ耳打ちした。
ーー彼女の瞳が、再びギラギラしたものへと変わる。
「迎えに行きましょうか。私達の仲間を」