第4章 16
龐悦が岩厳城にいる、郭瑜と共に領地内に侵入した
仙鵠が率いる風の民の軍勢の防御体制と取ろうとすると
突然、
「どうかなさいましたか?……」
と言い、劉・小狼らのもとに新たに堯閣帝の配下となった
杜闑【とげつ】という男性が劉・小狼らに声をかけてきた。
「い、いや……」
龐悦が誤魔化そうとすると杜闑は全てを知っているのか、
「堯閣帝が貴方さまらの為に祝宴を開いてくれました。
どうぞ、中へ……」
と劉・小狼らを龍炎国の都の中にある天蓋【てんがい】城の中に
招き入れた。
堯閣帝に会いに来た、劉・小狼らは祝宴の誘いを断ることが
出来ずに仕方がなく、杜闑の後を付いていき、天蓋城の中へと
入っていった。
堯閣帝が開いた宴席は趣向が色々と凝らしてあった。
龐悦は宴席を抜け出し、郭瑜と連絡を摂ろうとしたが
連絡が取れなかった。
困っている龐悦を見て、牙狛候と黒武侯は劉・小狼らに
お酒を振舞うふりをし、近付くと龐悦の耳元で
「領地に危機が迫っています! 直ちにここから抜け出し、
領地にお戻りください」
黒武侯はそう呟いた。
「私らもそうしたいのだが……」
龐悦はそう言うと宴席を見詰めた。
黒武侯も宴席を見ながら、
「手はずは整えていますから…… 宴席が終わった後に
私らが領地まで貴方がたを送り届けますから……」
と言った。
龐悦は舜炎帝の所での牙狛候と黒武侯のことがあったから
すぐには牙狛候らのことが信用できなかったが今は一刻も早く、
領地に戻りたかったから一応、牙狛候らのことを
信用することにした。
宴席が終わり、劉・小狼らは杜闑により、
大きな客室へと通された。
『今こそ、逃げ出す時だ!』
劉・小狼らは用意された客室から抜け出そうと客室の戸を開けると
そこには杜闑が劉・小狼らを見張る為に配置した見張り兵らがいた。
『ここからはダメかぁ……』
劉・小狼らは慌てて、客室に戻り、今後のことを悩んでいると
「小狼さま。」
と窓の外から劉・小狼を呼ぶ声が聴こえてきた。
関僚が客室の窓を開けるとそこには黒武侯がいた。
黒武侯の手引きにより、劉・小狼らは天蓋城の外に出ると
突然、黒武侯と劉・小狼らの前に黒装束に身を包んだ者が現れた。
劉・小狼らは突然、現れた黒装束に身を包んだ者に対して、
戦闘態勢を取るとその黒装束に身を包んだ者を見た黒武侯は
「だ、大丈夫です! この者は 我が手の者です……」
と劉・小狼らにそう言うと黒装束を身に纏った者のことを
再び、見ながら
「手はずは?……」
とその黒装束の身に纏った者にそう尋ねた。
「手はずは万全ですが…… 気付かれました!」
黒装束を身に纏った者は黒武侯にそう告げた。