第3章 20
孫嘉の前の一段、高い所に並んで座る堯閣帝と仙鵠は
孫嘉が差し出した劉・小狼からの書状を読み、
それぞれに顔色を曇らせた。
劉・小狼からの書状の内容は
「悪者から龍炎国の都を共に取り戻そう!」
というモノだった。
堯閣帝は龍炎国の都で仮面の男【劉閣】らによって、
痛い目に合わされ、都から追い出されたせいで
劉・小狼の申し出に躊躇していた。
仙鵠も辺境の地で仲間らと共に静かに暮らして、
戦などにまるで興味がなかったから
堯閣帝と同じように躊躇していた。
堯閣帝も仙鵠も劉・小狼の申し出を鄭重に断った。
失意の中、孫嘉が仙鵠らの都【里】から離れようとした
その時……
「孫嘉さん!」
女の子らしい服装に身を包み、頭には髪飾りをつけた
まるで別人のような風雅が孫嘉の前に現れた。
あまりの風雅の変わりように孫嘉はびっくりしながら
「ど、どうしたのですか? 風雅さま…… その格好は?」
と言うと風雅は少し膨れ面をしながら
「失礼ね! 私も一応、女の子だからこれくらいはするわよ!
何か、可笑しい?……」
と孫嘉にそう言った。
「いいえ…… 前にお会いした時と様子が
違っていましたから……」
孫嘉は首を横に振り、そう言うと風雅の機嫌を繕った。
風雅は浮かない顔をしている孫嘉を見ながら
「どうしたの? 浮かない顔をして……」
と言うと
「うん…… 小狼さまが堯閣帝さまと共に龍炎国の都を
取り戻そうと堯閣帝さまに申し出たのだが……」
孫嘉が堯閣帝らの用件の事を風雅に話した。
孫嘉が浮かない顔をしている原因がわかった
風雅は近くの小岩に腰掛けながら
「それはしょうがないわよ。私ら、龍炎国の都で
あの仮面の男【劉閣】らに手酷くやられたから……
すぐに共に都を取り戻そうと言っても……」
と孫嘉に言った。
「そんなにひどかったのか?……」
孫嘉は風雅と同じように近くの小岩に腰掛けながら
龍炎国の都の惨状を聞いた。
風雅が孫嘉に龍炎国の都の惨状を話している頃……
劉・小狼らは龍炎国の都の入り口の三埜宮【さんのみや】の
関の近くに大軍勢と共にやって来た。
「ここを越えれば、龍炎国の都まですぐです!」
郭瑜は劉・小狼の横に並び、目の前の三埜宮の関を
見詰めながら、劉・小狼にそう言った。
だが、三埜宮の関を見詰めたまま、劉・小狼の顔を
曇っていた。
龐悦も顔を曇らせ、三埜宮の関を見詰めながら、
劉・小狼の横に立つと
「このまま、我らをすんなりとあの関を通してくれると
良いのだが?……」
と呟いた。
龐悦の嫌の予感は当たっていた。




