第3章 12
「て、敵か?」
「俺が蹴散らしてやる!」
迫ってくる李桃の軍勢に張爛は威勢良く、
迫ってくる李桃に手勢を率いて、向かっていく。
「待たんか! 張爛」
劉・小狼の止める声も聴かず、張爛は李桃と
持っている武器を振り回し、先陣をきって、
その手勢に襲い掛かった。
だが、暫く、張爛と戦った李桃は
「これは敵わぬ!一旦、退却だ!」
自らの手勢に退却命令を出し、自らも逃げるように
張爛の前から立ち去った。
「待て! 逃げるか!」
張爛は自分の前から逃げるように立ち去った
李桃を追いかけるべく、手勢を率い、李桃の軍勢を
追いかけようとした。
「張爛殿。お待ちなさい! 恐らく、罠です!」
郭瑜が止めるのも聴かず、張爛は手勢を率い、
李桃を追いかけ、劉・小狼らの前から立ち去った。
李桃の手勢が放った矢が張爛に当たろうとした
その時……
突然、張爛の前に一つの大きな影の塊が現れた。
次の瞬間、一陣の風が吹き抜けたかと思うと
李桃の手勢が放った矢は全て、真っ二つになり、
地面に叩き落ちた。
「李桃殿。 不意打ちとは卑怯ですぞ!
……隠れてないで出てきなさい!」
という声と共に大きな影の正体が張爛の前に現れた。
張爛の現れたのは修行僧の格好をした男【劉儀】だった。
「劉儀殿。邪魔をされるな! そいつらはこの世界に
害をなす者らだ。 ここで討ち取らねば……」
隠れていた茂みの中から李桃は劉儀と張爛の前に
その姿を現した。
劉儀は持っていた杖のような棒を振り回すと
その棒を目の前の李桃に向けると
「李桃殿。 兵を引き、再び、正々堂々と
彼らに勝負を挑みなさい! そうでないのであるなら、
ここでわしがそなた達の相手をしよう!」
李桃とその手勢を睨み付けた。
流石の劉儀の迫力に恐れをなした李桃は
「わかりました! ここは劉儀殿の顔を立て、
兵を引きましょう! そこのばか者!
お前らの頭【劉・小狼】に伝えておけ!
今度こそ、貴様らの首をこの李桃さまが頂くと……」
張爛に言い放つと手勢を率いて、その場を後にした。
李桃が目の前から立ち去り、ハッと我に返った張爛は
自分の助けてくれた修行僧のような男・劉儀に
「あ、ありがとう! 助かったぜい!」
と声をかけた。
劉儀は李桃に向けていた杖のような棒を降ろすと
何事もなかったかのように
「別に構わんよ! だが、気を付けなされ!
ここはすでに敵の領地…… 迂闊な行動を取ると
今度は命がないぞ! じゃあ。わしは……」
と言い、その場から立ち去ろうとした。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!
このまま、そなたを行かせたら、劉兄者に叱られる……
俺に礼をさせてくれ!」
張爛はその場から立ち去ろうとする劉儀にそう声をかけた。
その言葉を聴いた劉儀は立ち止まると張爛の方に振り返り、
「礼というなら、わしをそなたらの頭【かしら】
(劉・小狼)に会わせてくれぬか?……」
と言った。




