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蒐賽の前に現れた役人は息を切らしながら
「蒐賽さま。それどころじゃありません……」
と言うと蒐賽は役人の慌てように
「どうしたのだ?……」
と役人に聞き直すと役人は乱れた呼吸を整えながら
「大変です。蒐賽さま…… 州使の孔游殿がたった
今、ここに御着きになりました……」
と言った。
蒐賽は孔游の名前を聴いた途端、
「な、なに! 州使が……」
と言い、腰を抜かし、自分の椅子に腰掛けた。
「ど、どういたしましょう?……」
役人が蒐賽にそう尋ねると蒐賽はハッと我に返り、
「奴(劉・小狼)らを探すのは一先ず、置いて、
全員にすぐさま、州使のもてなしの準備をしよう!……」
と役人に命令をした。
蒐賽が孔游を接待する準備を整えると孔游は
悠然と蒐賽の前に現れた。
孔游はいつも蒐賽が座っている椅子にどっかりと腰掛けると
「何か、配下の者らが騒がしいようだが
何か、あったのかね?……」
と言うと蒐賽はドキッと驚いた顔をしながら
近くにいた役人らを見詰め、
「いや。別に……」
と咄嗟に誤魔化した。
蒐賽らの様子が可笑しいのに気付いた孔游は
「そうか…… じゃあ。これまでの報告を……」
と言いつつも、自分の下僕に事を探るように
目で合図をした。
孔游をもてなす宴会も終わり、孔游が寝所に戻ると
「親方さま……」
と自分の下僕が寝所に入ってきた。
孔游は部屋の中に入ってきた下僕に
「何か、わかったか?……」
と言うと下僕は手に持っている紙を孔游に差し出しながら
「アイツらはこの者らを探し廻っているようです……」
と言った。
孔游の下僕が持っていた紙に書かれていたのは
劉・小狼らだった。
孔游の下僕は孔游の顔を見ながら
「どうしましょう? 親方さま…… あの者らは……」
と言った。
孔游は悲しげな顔をし、下僕から身体を背けると
「なぜ、アイツ(劉・小狼)らが追われているのかを
探るのだ……」
と下僕に命令をした。
孔游が蒐賽に接待を受けている頃……
劉・小狼と関遼は洵嬌が護る、沙隆の向かう途中で
張爛との待ち合わせ場所の水轍の国にいた。
劉・小狼らが水轍の酒場に行くとすでに張爛は着ており、
酒を飲んで盛り上がっていた。
張爛はやっと、劉・小狼らが来たのを確認すると
「やっと、来た! こっちこっち……」
と言い、劉・小狼らを自分が座っている席へと案内した。
関遼は席に着いた自分らにお酒を振舞う張爛を
呆れ顔で見ながら、
「ちゃんと、この方(劉・小狼)のお母上は
送り届けたんだろうな?……」
と言うと張爛はお酒を飲みながら
「ああぁ…… ちゃんと届けたぞ……」
と言った。