第3章 7
孫嘉と趙燕の率いる手勢により、牙狛侯は手勢を多く失った。
それでも何とか、命からがら赤籐から逃げ出し、
智龍侯の領地と舜炎帝の領地の境にある谷・胤濤に
やって来た。
『なんということだ。舜炎帝の4侯の一人の私が
こんなことになるとは……』
牙狛侯が少なくなった手勢と共にその胤濤の谷で
立ち止まっていると今度は牙狛侯らの前の谷影から
関遼が率いる手勢が現れた。
「牙狛侯。 観念せい!……」
関遼は大声で牙狛侯にそう言った。
突然、自分の前に現れ、あまりの関遼の大声に驚いた
牙狛侯は少なくなった手勢を置いたまま、自分の側近らだけを連れ、
その場から逃げ去った。
何とか、龐炎侯との領地の境までやって来た牙狛侯の前に
今度は劉・小狼と郭瑜らが率いる手勢が現れ、牙狛侯の周りを
取り囲んだ。
『こうなっては……』
郭瑜によって、追い込まれた牙狛侯は意を決し、
側近らと共に劉・小狼らに最後の戦いと挑もうと
追いかかろうとしたその時……
「牙狛侯! そこまでだ!」
と言う声と共に劉・小狼の後ろから舜炎帝らが率いる
舜炎帝の王騎軍と龐炎侯の竜騎軍が空を駆け、現れた。
舜炎帝らは劉・小狼らを庇うかのように劉・小狼の前に
降り立つと
「牙狛侯! 武器を捨てて、投降せよ!
さもないと、我が軍の蓬莱でそなた等を射殺しますよ!」
龐炎侯がそう言うと自分が率いる竜騎軍に乗る蓬莱を持つ
自分の手勢が一斉に牙狛侯に向け、蓬莱を構えた。
流石に勝ち目がないと察した牙狛侯の側近らは
次々と武器を捨て、投降した。
自分の側近らが投降し、自分一人になった牙狛侯も
渋々、武器を捨て、投降した。
こうして、水霞曉を騒がした舜炎帝を支える4侯のうちの
牙狛侯と黒武侯の反乱は終わった。
全てが終わった後、舜炎帝は一番、後方の王騎から降り、
「遅れてすまん。 用事が立て込んで……」
と言いながら、劉・小狼らの前に現れた。
郭瑜らを含め、劉・小狼らは一斉に現れた舜炎帝に
敬意を表するように片膝を付き、座ると
舜炎帝に深々と拝礼をした。
そのまま、智龍侯の居城・頭臥山で劉・小狼らを送り出す
宴を開かれた。
そこで捕らえられた牙狛侯と黒武侯の処分も話し合われた。
「この両名の処分をどうするかね? 劉・小狼よ!」
舜炎帝は牙狛侯と黒武侯の処分を劉・小狼に尋ねた。
舜炎帝に牙狛侯らの処分を聞かれた劉・小狼は
ジッと罪人として劉・小狼らの前に引き出された
牙狛侯らを見詰めながら
「私に一任して宜しいのですか?……
この場で切り捨てるかもしれませんよ!」
と傍にいる舜炎帝にそう言うと舜炎帝も目の前にいる
牙狛侯らを見ながら、
「かまわぬ!…… 後のことはその後で決めれば良い!
で、どうするのだ?……」
と再び、劉・小狼に牙狛侯らの処分を訊いた。
「では……」
劉・小狼は持っている剣を引き抜くと牙狛侯らに
剣先を向けた。
その場にいる者ら、全てを息を呑むと劉・小狼は
牙狛侯らに驚くべく、処分を下した。




