第3章 3
風雅が水蓮と共に我箕を旅立とうとすると水蓮と風雅のもとに
全身から黒いフードを被った男(透徹)が現れた。
水蓮は自分の前に現れた男が透徹だとわかると
『や、やばい!』
と慌てて、風雅の後ろへと隠れた。
風雅は自分の後ろに隠れる水蓮に
「どうしたんだ?……」
と尋ねると水蓮は風雅の後ろから近付いてくる
全身から黒いフードを被った男・透徹を見ながら
「アイツ(透徹)がずっと、私の後を追いかけてくるの……」
と風雅にウソを言った。
風雅は一瞬、黒いフードを被った男・透徹を見ると
自分の後ろに隠れている水蓮を見ながら
「しょうがないなぁ…… 奥に隠れていろ!」
というと水蓮を我箕の中に隠した。
水蓮が我箕の中に隠れると風雅の前に
黒いフードを被った男・透徹が現れた。
黒いフードを被った男・透徹は男の子のような風貌の
目の前の風雅を見ると辺りを見回しながら
「すまぬが…… ここに若い娘(水蓮)は来なかったか?」
と風雅に訊いた。
「さあなぁ……」
風雅は我箕の中にい水蓮の事を誤魔化した。
黒いフードを被った透徹は少し哀しげな顔をしながら
「困ったなぁ…… 姫は何処に 行ったんだ?」
と言い、辺りを見回した。
「はぁ? 姫?…… どういうこと?」
風雅は透徹が言った事に驚き、首を傾げた。
透徹は辺りを見回し続けながら
「私が探しているのはここから北の地にある沙隆の姫様のです。
私もその沙隆を治めている孔游様の家臣なのですが……」
と風雅に言った。
黒いフードを被った透徹の言った事に風雅は驚きながらも、
水蓮が我箕の南に行ったとウソをついた。
透徹も風雅の言った事を信用し、風雅に礼を言うと
我箕の南へと向かった。
透徹がいなくなると我箕の中から
「アイツ(透徹)、行った?……」
水蓮が出てきて、風雅に訊いた。
風雅はびっくりした顔で水蓮の事を見詰めながら
「良いのかぁ?……」
と水蓮に聴き返すと水蓮は少し不満そうな顔をしながら
「良いの…… 早く、私を小狼さまらの所に連れて行ってよ!」
というと我箕から急いで離れ、歩き出した。
水蓮と風雅は一日ほど、歩くと頭臥山の西の緘壬の村へと
やって来た。
その緘壬の村は劉・小狼の指示で別の所に村人は移された後で
まるで廃墟のように村は静まり返っていた。
「何だか、気味悪い村だわね……
早く、こんな村、立ち去りましょう!」
と水蓮がそう言い、緘壬の村から立ち去ろうとすると
「おい! こっちに良い物を見つけたぞ!……」
水蓮と風雅は緘壬の村に強盗にやって来ていた男らに
取り囲まれた。
「なんだ! お前らは?……」
風雅は自分らを捕まえようとする強盗の男らに持っていた
短刀で切りかかった。
「何をするんだ!」
強盗の男らは風雅の持っている短刀を奪うと風雅と水蓮を
獣が獲物を狙うかのように彼女らの周りをゆっくりと廻り、
襲い掛かるタイミングを計っていた。
その時……




