5
劉・小狼が翌朝、目を覚ますとすでに
劉・小狼の母親の姿は何処にもなかった。
「お目覚めですか?…… 出発の準備は出来ていますよ!」
関遼は外から戻ってくると目覚めたばかりの
劉・小狼にそう話しかけてきた。
劉・小狼は寝ぼけ眼で辺りを見廻したが
関遼の傍には張爛の姿がなかった。
劉・小狼は不思議そうな顔をしながら
「あれ? あの方(張爛)は?……」
と関遼に訊いた。
関遼は家の中に残っている荷物を持つと
「奴(張爛)なら、おj母上を近くの村まで
送りに行きました! 私らの早く、ここから出発をしましょう!」
と言い、外へと歩き出した。
劉・小狼は出発の準備を整えると外で待つ、
関遼の横の馬に飛び乗り、 関遼と共に馬を走らせ、家を出発した。
出発してすぐに劉・小狼は隣を走る、関遼に
「これから何処に行くのですか?……」
と聞くと関遼は劉・小狼の事を見ながら
「一先ず、この牙州国を預かる、洵嬌がいる、
ここから南の沙隆に向かいましょう!」
と言い、馬を沙隆へと向かわせた。
沙隆へと向かう途中、劉・小狼らは道の途中で馬車を止め、
馬車の車輪を覗き込む、老人と下僕らしき者に出くわした。
「先を急ぎましょう!」
関遼は劉・小狼に先を急ぐように言った。
「は、はい……」
劉・小狼は横目で困っている老人らを気にしながらも
関遼と共に先を急ごうとしたが何か、心の底から湧き上がる
強い気持ちに急にその場に立ち止まった。
劉・小狼は馬から降りると困っている老人らの方に近寄り、
「どうかなされましたか?……」
と話しかけた。
老人・孔游は目の前に現れた劉・小狼に
助かったかのような顔をしながら、
「じ、実は…… 乗っていた馬車の車輪が取れてしまい……」
と劉・小狼に言った。
劉・小狼が老人・孔游が乗っていたと言う馬車を覗き込むと
確かに右側の車輪が取れていた。
劉・小狼は孔游の下僕と共に馬車の車輪を嵌めようとしたが
中々、嵌めることが出来なかった。
暫く、遠く離れた場所から劉・小狼のことを呆れたように
見ていた関遼は
「しょうがないなぁ……」
ため息を吐くとゆっくりと劉・小狼の方に近付き、
「貸してください!……」
劉・小狼らから孔游の乗っていた馬車の車輪を取り上げると
簡単に嵌めた。
関遼は大きくため息を吐くと
「さあ。先を急ぎましょう!」
劉・小狼に言った。
孔游はそんな劉・小狼らを見ながら
「お、お待ちよ! 何か、お礼を……」
と言い、劉・小狼らを呼び止めた。
劉・小狼は関遼に急かされ、馬に飛び乗った。
「あ、あの…… せめて、名前だけでも……
わたしはここから北の水轍国の
孔游と申します!」
孔游はそんな劉・小狼に近寄ると劉・小狼に
そう告げた。
劉・小狼は一瞬、関遼の方を見ると馬頭を反すと
「名乗る者では…… 先を急いでいるので
私らはこの辺で……」
と言い、関遼と共にその場を立ち去った。
その頃……
劉・小狼らが中々、捕まらないことに蒐賽は苛立っていた。
そんな苛立っている蒐賽の所に配下の役人が
「た、大変です! 蒐賽さま」
と言い、慌てて、駆け寄ってきた。
「ど、どうした? 奴(劉・小狼)らが捕まったか?」
蒐賽は近寄ってきた役人にそう尋ねた。