第2章 13
孫嘉はゴミの中から現れた身窄しい
格好の男【庖悦】に対し、不快な顔をしながら
「何だ! お前はさっきの怪しい者か?」
持っている短刀を構え、男【庖悦】にそう言うと
庖悦は頭を掻き、ボロボロとフケを辺りに
撒き散らしながら
「何じゃ…… わしの住まいの前で騒々しいなぁ……」
ゴミの中にいる黒いフードを被った男を気にし、
自分の前にいる孫嘉にそう尋ねた。
いかにも乞食のような庖悦に自分に敵意がないことを感じ、
持っていた短刀を再び、懐に仕舞うと
「これは失礼をした! 怪しき者を追ってきたのだが
ここで見失って…… 騒がしたなら、謝ります!」
と言うと庖悦の前に2・3枚、金貨を投げた。
庖悦は乞食に恵みを与えるかのように自分の前に
投げられた金貨を見ると不快な顔をし、
「そんな物、いらん! とっとと立ち去れ!」
と言うと再び、ゴミの中へと入っていた。
庖悦が自分の住まいとしている沙隆の街外れの
ゴミの山の中に戻るとそこにはまだ黒いフードを
被った男・風雅がいた。
庖悦はまだ自分の住まいとしている
ゴミの山の中にいる黒いフードを被った男・風雅を見て、
驚いた顔をしながら、
「何じゃ…… まだおったのか?」
と言うと自分がゴミの中の自分の寝床へと本を
片手に横たわった。
黒いフードの男・風雅は自分にまるで興味を
持っていない庖悦に不思議そうな顔をし、
「わしが何者か、興味はないのか?……」
と言うが庖悦は身を黒いフードの男・風雅から背けると
「聞いたら、教えてくれるのか? そうではあるまい。
騒ぎが治まったら、ここから立ち去るが良い。」
と言った。
孫嘉が庖悦と別れて、すぐに孫嘉の傍に
「怪しき男は何処ですか?……」
沙隆の警備兵がやって来た。
孫嘉は庖悦がいるゴミの山を見詰めながら、
「す、すみません…… ここまで追詰めたのですが
取り逃がしてしまいました。」
やって来た沙隆の警備兵にそう言った。
沙隆の警備兵は辺りを見回しながら、
「そ、そうですか…… 警戒をいたしますから
一先ず、孔游さまに報告をしてくれますか?」
と言った。
孫嘉はゴミの山を気にしながらも
「そ、そうですね……」
というとやって来た沙隆の警備兵と共に
その場から立ち去った。
孫嘉が孔游に黒いフードの男・風雅のことを
話している頃……
我箕に戻った劉・小狼の元に孫嘉の手下の者が
沙隆のことを知らしていた。
「それはマズイ!趙燕。 供をせい!」
劉・小狼は趙燕にそう言うと趙燕と共に
沙隆へと取って帰った。
劉・小狼が我箕から沙隆へと戻っている頃……
黒いフードの男・風雅は水霞曉の南の地を護る
龐炎候との国境近くにいた。
風雅はその国境近くにある小さな洞窟に入ると
「どうでしたか? 沙隆にいましたか?」
焚き火の傍の岩に腰掛ける男・刻神がいた。
風雅は被っていたフードを脱ぐと
「すみません。 いませんでした……」
がっかりした顔でその男・刻神に言った。




