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その様子と見ていた趙燕は我箕に攻めて来る
蒙虎幻と対峙するように我箕の正門の上に立つと
「蒙虎幻に仕える者らよ! お前らはそれで良いのか?
このまま、悪党のままで一生を終わるのか?……
我箕の為に働くなら、今の我箕を治める方はお前らの罪を
許そうと言っているぞ! どうする?……」
と大声で蒙虎幻の軍勢に向かって、そう言うと
それを聞いた蒙虎幻の軍勢はざわざわと騒ぎ始めた。
「お前ら、そんなことに耳を貸すのではない。
我箕を攻め落とすのだ!」
蒙虎幻は軍勢を沈めようと持っていた剣を振り回し、
自分の軍勢を急き立てた。
蒙虎幻の兵らは蒙虎幻と我箕の趙燕らを交互に見ると
何か、意を決したかのように勇壮に我箕へと歩み出した。
『それで良いのだ!』
蒙虎幻はその場に立ち止まり、勝ち誇った顔を
我箕へと向けた。
初めは混乱をして、バラバラだったが我箕へと近付くにつれ、
蒙虎幻の兵らは整列をした。
それを見た趙燕は我箕の正門内に身構えていた関遼と張爛に
「今です!……」
と言うと関遼と張爛は勢い良く、我箕の正門から馬に跨り、
飛び出して行った。
張爛は持っていた槍を大きく振り回すと
「やい、やい…… 我箕に災いをなす者は
この俺さまが相手だ! 何処からでも掛かって来い!」
と言い、我箕に迫ってくる蒙虎幻の兵らに向かって、
その槍を振り翳した。
だが、蒙虎幻の兵らは関遼と張爛の数メートル手前で
その歩みをぴたりと止めた。
突然、自分らの前で立ち止まった蒙虎幻の兵に
関遼と張爛は持っていた武器を身構えながら
『掛かってくるのか?……』
と思っていると急に蒙虎幻の兵へその方向を
我箕から蒙虎幻の方へと向きを変えた。
そんな蒙虎幻の兵の行動を見て、趙燕は
勝ち誇った顔で
「さあ。我箕の民の為に精一杯、働くのだ!」
というとその趙燕の声を合図に関遼と張爛は
「さあ。俺達に続け!……」
と言うと蒙虎幻の兵を率いて、悠然と様子を伺っていた
蒙虎幻に向かって行った。
「お、お前達…… 何をしているんだ?」
蒙虎幻は関遼らと共に自分に襲い掛かって来る
自分の兵らに驚いていた。
我箕の正門を襲い掛かっていた蒙虎幻の兵のことを訊いた
我箕の左右の門を襲い掛かっていた蒙虎幻の兵も急に向きを変え、
自分らを指揮していた者に襲い掛かった。
たちまちに蒙虎幻らは自分らの軍勢によって、捕らえられ、
劉・小狼らの前に引き出された。
蒙虎幻は目の前にいる劉・小狼を睨み付けながら
「さあ。さっさと負けたわしを殺せ!」
と劉・小狼にそう言った。
劉・小狼は怖い顔で自分の事を睨み付けている蒙虎幻を
冷静な顔で見詰めたまま、
「何故、この我箕を脅かし、民を苦しめる。
お主も我箕の民ではないか! 何故だ!……」
と蒙虎幻に語りかけた。
蒙虎幻は劉・小狼を睨み付けたまま、
「決まっている!我箕の民を苦しめる者らを
排除するためだ!」
と言い放った。




