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急に立ち止まった趙燕に水蓮は
「どうしたました?」
と趙燕の背中越しに話しかけた。
趙燕は水蓮に気付かれないように冷静を装いながら
「いや…… 我箕への道を間違える所で……
これから今すぐに我箕へと向かいます!」
と言うと馬を我箕から遠回りの道を進めた。
趙燕が水蓮を連れ、随分、遠回りをし、我箕の近くの
丘の上に着くとすでに我箕は蒙虎幻の軍勢で
取り囲まれていた。
そんな我箕の様子を見た、水蓮は
「あれ? 我箕が大変な事になっているわ……
これじゃ、我箕にいけないわね……」
と少し哀しげな声でそう言うと趙燕は我箕を見ながら
「あの我箕に何か、大事な用でもあるのですか?」
と水蓮に訊くと水蓮は頷いた。
我箕を総攻撃をかけようとした蒙虎幻は
我箕の近くの丘に趙燕のことを見付け、
「おおぉ…… 客人【趙燕】が戻られた!」
と言い、趙燕の事を見詰めた。
ちょうど、その頃。
蒙虎幻の軍勢の様子を見に我箕の城門の上にやって来た
劉・小狼らも近くの丘の上に趙燕とその後ろにいる
水蓮の姿を見付けた。
「小狼さま! あそこに水蓮さまとあの男【趙燕】が
一緒にいます!……」
関遼はそう言い、近くの丘にいる趙燕と水蓮の事を
指差した。
近くの丘に趙燕と水蓮の姿を見た張爛は激怒しながら
「あの野郎【趙燕】! 水蓮殿を人質に取りやがって……
俺さまがあの野郎【趙燕】を殺してやる!」
と言い、趙燕のことを睨み付けた。
激怒で今にも我箕からと飛び出そうとしている張爛の横で
劉・小狼は関遼らと同じように我箕の近くの丘にいる
趙燕をジッと見詰めていた。
そんな劉・小狼の視線に感じた趙燕は劉・小狼に向かって、
大きく頷くと
「行きますよ! 振り落とされないように
しっかりと摑まっていてくださいね!」
と水蓮にそう言うと寒さ避けに持っていた大きな布を
水蓮を覆い隠すかのように被ると我箕へと馬を
勢い良く、駆け出した。
蒙虎幻は一直線に自分の陣へと駆けて来る趙燕の
姿を見ながら
「おおぉ…… 客人【趙燕】がこっちにやって来るぞ!
迎える準備をせよ!」
と配下の者らに趙燕を向かえるように命じたが
趙燕は少しもスピードを緩めることなく、
しっかりと自分にしがみ付く、水蓮に
「怖いかもしれないけど、しっかりと
摑まっていてくださいね!……」
と言うとさらにスピードを上げ、蒙虎幻の陣に
突撃して行った。
一直線に我箕に向かって来る趙燕を見ていた
劉・小狼は趙燕が城門へと近付くと
「直ちに城門を開けよ!」
と城門兵に命じた。
劉・小狼に命じられた城門兵は直ちに我箕の城門を開けると
逃げ込むように我箕の中に水蓮を連れた趙燕が駆け込んで来た。
趙燕が城内へと入ったのを確認した関遼は
「すぐに城門を閉めよ!」
城門兵にそう言うと我箕にやって来た趙燕のもとに駆け寄る
劉・小狼と共に趙燕のもとへと急いだ。
「ああぁ…… やっと、着いた!」
水蓮は我箕に着いたのを喜びながら、何事もなかったかのように
趙燕の後ろから降りた。
趙燕も大きなため息を吐くとゆっくりと乗ってきた馬から降り、
感謝するように馬の背を撫でていると趙燕の前に劉・小狼らが現れた。




