第6章 5
張爛は邦戯との決闘の決着を望もうとしたが
劉・小狼の恐ろしいまでの威圧感に負け、
龐義と共に郭瑜のもとに戻った。
張爛が戻ったのを確認すると劉・小狼は
剣を仕舞うと
「我が、配下の者が大変、失礼をかけた……
改めて、私からもそなた達に協力を頼みたいのだが……」
邦戯に話し掛けた。
張爛と違い、顔つきなどは優しさに満ちていたが
躯から放つ、威圧感は邦戯を振るい上がらせた。
「こちらこそ、大変失礼をしました……
改めて、そなた達の協力を惜しまずに致しましょう!」
邦戯はすぐさま、劉・小狼の目の前で
協力する事を約束した。
邦戯との交渉をある程度、纏めた劉・小狼は
後の交渉を孫嘉に任せると再び、郭瑜のもとに戻った。
劉・小狼が龐悦が立て籠もる出城の包囲を
着々と進めている頃……
火竜関内に人質として、閉じ込められている
水蓮は死鏡の目を盗み、閉じ込められている部屋に
唯一、ある窓から抜け出そうとしていたその時……
「お姉ちゃん。 こんな所から何処にいくの?……」
少年・海斗【かいと】が水蓮がまさに抜け出そうとしていた
窓の外からひょっこりと顔を出した。
「わぁ!……」
突然、自分の目の前に現れた少年・海斗に
水蓮は驚き、思わず、声を出した。
突然の水蓮の大きな声に
「どうした? 何事だ?……」
水蓮が閉じ込められている部屋に
死鏡が慌てて、駆け込んできた。
『この子が見つかったら、何をされるか、
わからないわ……』
そう思った水蓮は咄嗟に海斗がいる
窓の前に立ち塞がった。
「何を騒いでいるんだ?」
死鏡はそう言いながら、水蓮の部屋の中を見廻した。
「な、何でもないわ…… 外の空気でも吸おうと思って、
窓を開けたら、突然、蟲が飛び込んできて、
驚いただけよ……」
水蓮は咄嗟に嘘を言い、海斗のことを誤魔化した。
死鏡は水蓮のことを怪しみながらも、
「静かにしていろ!」
というと部屋を後にした。
死鏡が立ち去り、ホッとした水蓮は
「そんなところに居たら、ダメよ!
こっちに来なさい!」
と言い、振り返り、窓の外にいた海斗を
自分が撮り込められている部屋の中に入れようとしたが
すでに窓の外には海斗の姿はなかった。
「気のせいだったのかしら?……」
水蓮が再び、部屋の中に視線を戻すと
さっきまで窓のそとに居たはずの海斗が
いつの間にか部屋の中の椅子にちょこんと座り、
果物らしきモノを頬張っていた。
いつの間にか、自分が閉じ込められている
部屋の中にいて、果物を食べている海斗に
水蓮が驚いていると海斗はそんな水蓮を横目で見ながら
「お姉ちゃん。近いうちに死んじゃうよ!」
と水蓮に言った。
『う、嘘でしょう……』
突然、海斗にそんなことを言われ、ひどく動揺した
水蓮が海斗から一瞬、目を離すと海斗は
まるでお化けが消えるように水蓮の前から
その姿を消し去ると何処からか
「果物、美味しかったよ……」
と言い、残すと完全に消え去った。
水蓮が海斗という少年にそんなことを言われている頃。
劉・小狼らは謀反を起こし、自分が造った出城に
立て籠もっている龐悦に総攻撃を仕掛けようとしていた。
そんな光景を見詰める4つの影があった。




