第6章 2
水蓮が火竜関から逃げ出そうとしている頃。
劉・小狼は地方の視察を終え、都に戻った時に
父である龐悦の謀反を知り、龐悦の息子・龐儀は
「愚かな父上だ!」
すぐさま、劉・小狼側に就いた。
そんな龐儀に対して、劉・小狼は
「これからも変わらず、我に仕えてくれ!」
龐儀の罪を問わなかった。
劉・小狼は郭瑜の知らせを受け、
「龐儀。お主も一緒に行くか?……」
と言い、龐儀の父・龐悦が立て籠もっている出城を
取り囲んでいる郭瑜のもとに龐儀も一緒に連れて行った。
龐儀を見た郭瑜は一瞬、驚いたがすぐに
「龐儀。お主なら、どう攻める?」
と意見を求めた。
龐儀は父である龐悦が立て籠もっている
出城の見取り図の指差しながら
「一見、この城は完璧な城に見えますが……
三方は堅固な造りなのですが…… この山側に
接している城壁が他に比べ、少し脆いようで……
ここはこの脆い城壁から攻めるのが宜しいかと……」
劉・小狼らに進言した。
郭瑜は龐儀が指差している龐悦が立て籠もっている
出城の見取り図を見ながら
「だが、この山側からどうやって、攻める?……」
龐儀に訊いた。
龐儀のそんな進言は山側からの攻撃方法がなく、
却下された。
だが、どうしても父が立て籠もっている龐悦の
出城を攻めるには絶対、山側からしかないと思い、
密かに劉・小狼の陣からいなくなった。
劉・小狼の陣からいなくなった龐儀は父の龐悦が
立て籠もっている出城の山側の中にいた。
『確か、この辺りのはずだが……』
龐儀がそう思い、辺りを見回していると
イノシシのようなモノが龐儀の辺りを取り囲んでいた。
「いた!」
龐儀はそう言い、そのイノシシのようなモノに
近付いていった。
父である龐悦が立て籠もる出城の裏側の山の中で
イノシシのようなモノに取り囲まれた龐儀は
そのイノシシの者らに連れられ、更に山奥に連れて行かれた。
そこにはイノシシのモノらよりもさらに
大きなイノシシのモノがいた。
龐儀は目の前の大きなイノシシらしきモノに
「お頭さん! 是非ともお頭らの
お力をお借りしたくて……」
と話し掛けた。
「こんな山奥まで良くお越しになった。 龐儀殿」
大きなイノシシらしきモノは龐儀に向かって、そう言うと
大きなイノシシらしきモノの頭を脱いだ。
龐儀の前に現れたのは山伏のような男【戯邦】だった。
山伏のような戯邦は瓢箪のようなモノから
お酒を飲みながら
「龐儀殿。我らの力を借りたいとは?……」
龐儀にそう訊いた。
「じ、実は……」
父である龐悦が立て籠もる出城を戯邦の軍勢で
攻めて欲しいと龐儀は戯邦に頼んだ。
少し考え込んだ戯邦は
「報酬は?……」
と言い、更に酒を飲んだ。
「何が望みで?……」
龐儀は恐る恐る、戯邦に尋ねた。
「そうだなぁ…… そろそろ、こんな山奥で暮らすのも
飽きたから…… そなたらの軍に我らを加えてくれぬか?……」
戯邦は自分らを劉・小狼らの軍に加えるように
要求してきた。
「そ、それは?……」
龐儀は返答に困った。




