第5章 21
舜炎帝は突然、現れた龐悦に警戒をしながら
「私に何の用だ?……」
と言うと
「舜炎帝さまはこんな所に幽閉した劉・小狼らに
目のものを見せませんか?」
龐悦は舜炎帝に反乱を企てた。
「何を言っている!お前は劉・小狼の
参謀の一人ではないか…… そんな策に易々と乗るか!」
突然の龐悦の言葉に舜炎帝は驚きながら、
龐悦にそう怒鳴りつけた。
「今は劉・小狼の参謀の一人ですが舜炎帝さまさえ、
立つなら、私はお力を貸しましょう!」
龐悦は更に舜炎帝のことを誘惑した。
初めは反乱を起こすことを拒んでいた舜炎帝だったが
龐悦の誘惑に負け、反乱を起こすことを承諾した。
舜炎帝を反乱の仲間に引き入れた龐悦だったが
舜炎帝だけでは不安だったので
「あの者も引き入れるか!……」
と呟くとまだ何処かへと移動した。
次に龐悦が現れたのは龍炎国と風の里(国)の国境沿いに
幽閉している堯閣帝のもとに訪れていた。
堯閣帝も舜炎帝と同じように龐悦が反乱に誘うと
堯閣帝は舜炎帝とは違い、劉・小狼らにまだ深い恨みがあり、
すんなりと反乱に加わった。
『これで準備は良いかな?……』
龐悦はそう思うと自分が今、任されている仮面の男(劉閣)が
治める領地と国境沿いに造った出城に戻った。
龐悦が不穏な動きをしている頃……
蒼琥に化けた死鏡も再び、元の姿に戻り、
密かに劉・小狼の妻・水蓮に近付いていた。
突然、現れた死鏡に驚き、怯える水蓮に死鏡は
「突然、現れて驚かせてすみません。
私は貴方が親しくしていた北方の商人の使いの者です!」
と言った。
水蓮は目の前の死鏡の口から北方の商人のことが出た途端、
目を輝かせた。
それを見た死鏡は尽かさず、
「これは我が主が貴方様に当てたお手紙です!」
と言い、偽の手紙を水蓮に差し出すとその姿を
再び、風のように消し去った。
死鏡から受け取った偽手紙を見た水蓮は
一瞬にして、北方の商人【白尾】とのことが頭を過ぎり、
居ても立ってもいられなくなった。
どうしても抑えきれなくなった水蓮は見張り役の
目を盗んで手紙に記された場所に向かった。
水蓮が龍炎国の都を密かに抜け出した後に劉・小狼らは
水蓮が居なくなったことに気がついた。
「まずい!」
劉・小狼らは一斉に水蓮の後を追いかけた。
水蓮が手紙に書かれていた火竜関に入ると
関の門の前に死鏡が現れた。
「これは全てが整った!」
死鏡はそう呟くとその姿を再び、消し去った。
水蓮が入った、火竜関に入った死鏡は全ての首謀者の龐悦に
報告為の使い鳩を飛ばした。
死鏡からの使い鳩を受け取った龐悦は
「遂に準備が整ったか!」
と呟くと舜炎帝と堯閣帝に事の開始を報せた。
龐悦からの知らせを受けた舜炎帝と堯閣帝は
それぞれの場所で反乱の挙兵を上げた。
だが、事前に舜炎帝と堯閣帝の反乱を予期していた郭瑜は
堯閣帝や舜炎帝がそれぞれいる、風の里(国)や水霞堯に
知らせを流していた。
郭瑜からの事前に報せを受けていたそれぞれの所を
治めていた者らは堯閣帝や舜炎帝の反乱に加わることなく、
一丸となり、反乱を鎮圧した。
堯閣帝と舜炎帝の反乱は数日で鎮圧され、
双方とも討ち取られた。




