第5章 20
龐悦らの話に聞き入っていた蒼琥だったが
やっと、自分が取り囲まれている事に気が付いた。
『まいったな……』
だが、すでに遅く、蒼琥の逃げる場所は
何処にもなかった。
蒼琥は呆気なく、死鏡の手下らに捕まり、
龐悦らの前に連れ出された。
龐悦は蒼琥のことを見ながら
「ねずみとは貴方でしたか…… 蒼琥」
とそう言うと縛られ、身動きの出来ない蒼琥は
怖い顔で目の前の龐悦を睨み付けながら
「龐悦殿。 貴方は何をなさっているのか
わかっているのですか?…… これは謀反ですよ!」
と言うと龐悦は笑いながら
「謀反ね…… そうかもしれんな……
お主も加わらんか?」
蒼琥にそう持ちかけた。
龐悦の誘いを断った蒼琥はそのまま、仮面の男【劉閣】が
治める領地と劉・小狼らが治める龍炎国との境の土牢に
閉じ込められた。
蒼琥が何とか、その土牢から抜け出そうともがいていると
蒼琥の前に韓忌の手下の死鏡が現れた。
死鏡は土牢に閉じ込められている蒼琥を見ながら
「何故、お前は我らの誘いを受けず、破滅の道を選ぶ?……」
と訊いた。
蒼琥は怖い顔で死鏡のことを睨み付けながら
「破滅だと…… バカを言え!破滅するのはお前たちの方だ!」
と言い放った。
「それはどうかな?……」
死鏡はそう言うと風と共に再び、その姿を蒼琥の前から
消し去った。
蒼琥の帰りを待っていた郭瑜のもとに死鏡が化けた蒼琥が現れた。
死鏡が化けた蒼琥は劉・小狼らの前で
「龐悦殿には不穏な動きなど、まるでありませんでした」
と嘘の報告をした。
だが、本物の蒼琥の手下により、龐悦の不穏な動きの事を
掴んでいた郭瑜は死鏡が化けた蒼琥の嘘の報告に疑っていた。
どうして良いのかわからなかった郭瑜は龍炎国の都に
招いていた僧侶の劉儀に相談した。
話を聴いた劉儀は
「それは少しおかしいですね…… 色々とお調べになった方が
宜しいかも…… 私も協力をしましょう!」
というと郭瑜と共に色々と調べ始めた。
郭瑜らが自分のことを調べ始めたことに気付いた
蒼琥に化けている死鏡は
「やっと、気付いたか…… どれ。次の手を打つか!」
と呟くとその姿を消し去った。
死鏡が龍炎国の都内で次の策を打とうとしているその時、
龐悦は密かに北方の国境沿いの新しき出来た出城から
水霞曉にいた。
龐悦は密かに龍炎国の都から戻され、幽閉されている
かつての水霞曉の主・舜炎帝に会っていた。
「なに用じゃ? 劉・小狼殿の参謀の一人が……」
舜炎帝は目の前に現れた龐悦に皮肉たっぷりに
そう言うと龐悦は不適な笑みを浮かべながら
「今日来たのは劉・小狼さまの参謀の一人としてではなく、
個人として舜炎帝さまのもとにやって来たのです!……」
と舜炎帝にそう言った。
それを聴いた舜炎帝は顔色が変わった。




