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クリスマス・イブ〜聖夜王決定戦〜

誤字脱字ひどいかもしれません。

 聖夜。いわゆるクリスマスイブである。街中はカップルに溢れ、クリスマスプレゼントをせがむ子供達と、ソレを見て微笑む両親が歩く。街中が笑顔に包まれる素晴らしい日である。俺が元いた世界では、キリスト教が伝搬している国では、少なくともそう言った楽しげな日であった。そう、元いた世界では。


『さぁ、今年も参りました!ブソウ魔法学園主催、第365回、聖夜王決定戦!!』


 ハイテンションな実況の声が会場に響き渡る。あっ、そうだ最初に説明すると、このお話は、本編の外伝っていうか未来のお話なので悪しからず。


『実況はわたくし、3年B組放送部部長、エリド・リギ、通称エリンギが勤めさせて頂きます!!』


 あだ名キノコかよ。


『そして解説はぁ、この方!当学園の理事長でも有らせられます、』


『どうも、ルルド・ヴァーグです。』


『ルルドさん。本日はヨロシクお願いします。』


『こちらこそ、ヨロシク。』


 ルルドさん、何してんだよ。まぁ、あっちの世界でもクリスマスイブといやぁ一大イベントだっだがな?でも一企業の代表取締役がこんなところで油売ってて良いのか?


『さて、まずは聖夜王決定戦の説明から入りましょう。聖夜王決定戦とは、我が国イースウェン王政国家の有史以来ずっと続く、伝統的な行事であります。ですが、先の種族間による500年戦争の影響でずっと執り行われず、人々の記憶からも忘れ去られてしまいました。しかし、今から10年前のある教会に、聖夜王決定戦に関する記述が見つかったのです。そして人々は、聖夜王決定戦。いわゆる聖夜祭を再び開始したのです。』


 エリンギの熱の入った言葉は、説明の中でも話し方に感情が入り、まるでエリンギは、全てその目で見てきたようにさえ感じてしまう。


『そして、聖夜祭は無事再開されましたが、そもそも聖夜祭とはなんぞや?という話。聖夜祭で決まる聖夜王は、その次の日の明朝。つまり25日に、朝日と共に降臨するとされる聖神竜に、この惑星の生物を代表して、ご挨拶をするという物です。』


 聖神竜?サンタクロース的なものか?


『しかし、再開してから10年間、いまだに聖神竜は降臨されてはいません。』


 まぁただの伝説であるから当然ではあるか。そんなほいほい、竜、しかも神竜が現れたら怖いし、伝説なんて殆どが紛い物だからな。


『ですが、今年はなんと!暗黒大陸に居城を構える龍帝エドガー氏からの間者によりますと、『今年はなんか、せぇちゃん来るっぽいよ?』と言うのです!!』


 今のは声真似だろうか?なんか変な喋り方であった。例えると、物真似芸人の物真似を真似たような声真似であった。


『さぁ今年はいつもと違いますよぉ!!第365回聖夜王決定戦!!開催です!!』


 会場中から歓声が湧く、まるで天をも砕くような歓声であった。





―――――――――






「せぇい!!」


「あべし!?」


 聖夜王決定戦第3開戦が今決着した。え、省略しすぎだろうだって?まぁ読み切りだから気にしないで。


『決まったぁぁぁ!!勝者は今年度夏に、彗星の如く現れた水池ぃ 雄輔ぇ!』


 エリンギのハイテンションな実況が、俺の勝利を告げる。それから、何かルルドと会話をしている。どうも、俺とタグモの対戦を振り返っているようである。妙に恥ずかしかったので、俺はそそくさと選手控え室に戻ることにした。


「ユウスケぇ、お疲れ!!」


「応。」


 入場口の付近で、幸が満面の笑みを見せて手を振りながら廊下を駆け寄ってきた。耳をピコピコしているところを見るに、嬉しいらしい。


「次は幸の番だろ?気張れよ。」


「うん!」


 満面の笑みを崩さず、大きくコクリと頷く幸は、本当にまだあどけないその笑顔は、無邪気な少女のそれであった。


「んじゃ、頑張って来いよ。」


「頑張る!」


 頭を撫でながら、幸に激励を送る。すると嬉しそうな顔で答える。


「よぉし!やぁるぞぉ!!」


 気合い一発、幸は両腕に鉤爪を装備して、ずんずんと模擬戦場に進んでいく。

 俺はソレを見送り、選手控え室に戻る。


「よぉ、雄輔。お疲れちゃん。」


「ユジンか、応。お前は次の次だな。」


「あぁ。」


 控え室に入ると、ユジンが俺を笑顔で迎えた。


『試合終了!!勝者、雄輔と共に現れた黒い氷を振るう癒しの姫!、江夏ぅ 幸ぃ!!』


「「早っ!?」」


 余りの速さの決着に俺とユジンは、同時に驚きの声を上げる。液晶マテリアルを見てみると、ガッツポーズを取る幸と、幸せそうな顔をして延びている男子生徒がいた。


「あぁ……なるほど。」


 ユジンが納得したような声を上げる。しかし、それよりも、画面で幸が辺りをキョロキョロと見ている。恐らく俺を探しているのだろう。俺が見つからなければ、下手をしたら泣き出してしまう。


「あれ、雄輔?」


 後ろからユジンの声が聞こえた気がしたが、俺はソレをスルーして、急いで幸の下に向かう。


「ユウスケェ……」


 会場に出ると、模擬戦場ですでに限界ギリギリの幸がいた。


「おぉい幸ぃ。」


 俺が幸の名前を呼ぶと、声に気づいた幸が、ばっと俺の方に振り向く。


「ユウスケ!」


 鉤爪を装備したまま、俺に飛び付く幸。いや待て危ないって!?


「ゴハッ!?」


 幸が俺の胴に抱き付くが、その衝撃は全て鳩尾に喰らい、鉤爪の刃は俺の肩を引っ掻く。ハッキリ言おう、超イテェ。


「ユウスケどこにいたの!」


「あっ、ああちょっと控え室にな。ほら、次の試合始まるから戻るよ?」


「うん。」


 幸を引き連れ俺は控え室に戻る。途中ですれ違ったユジンが、苦笑いを浮かべていた。





―――――――





 閑話休載。決勝戦………おい!手抜きも大概にしろよ!?


『さぁて、いよいよ決勝戦!対戦カードは、正しく今年聖夜王決定戦のブラックホース!水池 雄輔対江夏 幸!!みなさま、盛大な拍手でお出迎え下さい!!』


 エリンギの言う通りな本当に盛大な拍手の中を、俺と幸は会場入りする。

 しかし、今気づいたが、この大会、勝ち進んだら幸とかち合うことになるんだよな。……コイツに刀向けるの?……無理だろぉ。


『それでは、両選手が位置につきました。では、試合開始!』


「ゲルズ ティール マフティマス『アグライト』!!ゲルズ ティール マフティマス エリ ルルグ『アグミーティリア』!!」


 幸の二連続の魔法により、黒い冷気が幸の両腕に、黒い冷気が漂い。その冷気が、黒い氷の杭が生み出される。


「っく!?」


 投げ出された巨大な氷の杭をギリギリで回避する。


「もう一個!!」


 いつの間に唱えたのか、回避したところには、もう一本杭が投げ込まれていた。


「っち!」


 回避は無理だと気づいた俺は、日本刀(紅葉隠)を抜き去り、その氷の杭を受け流す。


「やぁぁ!!」


 しかし、そのせいで隙だらけな俺に、幸が鉤爪を振り上げ襲いかかってきた。


「甘い!」


 だが俺は、体勢を直ぐ様直し、幸を迎撃する体勢を取る。が、そこで動きが止まる。

 理由は、単純だ。躊躇ってしまったのだ。このまま幸を迎撃することは容易い。だが、刃が潰れているとは言え、武器を幸に向かい振るう等、この俺が出来るものか?


「うわっぐ!?」


 そのタイムラグが、幸に攻撃のタイミングを与えてしまった。


「せい!」


 そして、着地と同時に幸の回し蹴りが俺の腹部を叩いた。


「……!?」


しかし、それは受けない。俺は体を回転させて避ける。と、なんとか回避した訳だが、幸は回し蹴りの勢いを殺さずに、飛び上がり回転蹴りを俺の顔面を狙ってくり出す。俺はソレを背面反りでかわす。余談だが、今日の幸の白と青のストライプだ。何がとは言わないがな。


「まだ!」


 幸の掛け声の通り、回転蹴りでくり出した左足に隠れていた右足の足裏蹴りが、俺に迫っていた。背面反りは、それ以上の回避方向は一方向に限られる。仕方なく、俺は後転のようりょうで、幸の二連続の空中蹴りを回避する。


「試合終了!勝者、江夏 幸!!」


「え?」


 試合終了を告げる審判の声は、突然響いた。


『おぉと!雄輔、まさかの自滅。回避先は場外だぁぁ!!』


 エリンギの言う通り、俺の足元には、模擬戦場の枠線が引かれていた。


「し、しまった!」


 まぁ幸に刀を向けるようなことにならずに済んで良かった。


「ねぇユウスケ。私が勝ったの?」


「あぁ、お前の勝ちだ、おめでとう。」


 幸の問いかけに、俺はその通りだと答えると、幸は「やった〜!」と無邪気に跳ねて喜んだ。こんなに喜ぶんなら、負けても良かったな。








――――――






こうして、今日クリスマスイブの日は終わりを告げ、今俺と幸は、聖神竜に供物やらなんやかんやを捧げるために、ククリから南に2km程進んだところにある、地上に建てられたの神殿、『イーゼ神殿』に来ていた。本当は、幸一人で神殿に入り、聖神竜に挨拶しなければならないのだが、幸の強い希望により、俺も同行することになった。そして、今まさに聖神竜が降臨しようとしていた。


『あぁ、もはや何年ぶりであろうか、この日この時に、竜種以外の者に出会うのは。』


 神殿の、巨大な祭壇に現れたのは、白い竜。猛禽類の鳥のような力強い両翼に、白い鱗に覆われた体。長い尻尾にしなやかな両足。そして腕。二本の、天に向かい伸びる角は、美しい黄色だ。そして優しげな両眼に、長い白い髭、まさに白いドラゴンが鎮座していた。


『それで、どちらが今年の聖夜王だ?』


「私!」


『………これは………数奇な運命を背負う黒兎が、今年の聖夜王とは。』


 聖神竜が何か意味深なことを言うが、俺は余り口を挟まない。触らぬ神に祟りなしだ。


『うむ、その方。我に供物を届けたことに礼を言おう。何か願いを言ってみたまえ。』


 幸は、少し考えた後、俺をチラッと見てから、聖神竜に向き直った。


「ユウスケと、ずっと一緒にいたい!」


「…!!」


 幸が願ったことは、俺が予想だにしないことだった。俺とずっと一緒に……か。


『……その願い。我の力だけでは難しい。』


「え?」


 聖神竜の返答に、驚きの表情を見せる幸。


『しかし、供物を届けた恩義がある。黒兎の少女よ……主がその少年と共に歩めるかは主等のコレからにかかっている。我は、主等だけではどうしようもない障害にぶつかった時に手を貸そう。約束だ。』


 また意味深なことを言う聖神竜。正直、なんのことか気になりまくるが、敢えて問わない。何か、聞いてはいけない気がしたから。


「つまり、私が頑張れば良いんだね!!」


『そうだ。それから、異界の少年よ。』


「え?」


 突然話を振られたことに驚いた俺は、思わず変な声をあげてしまった。


『主には、これから幾多の試練が迫るだろう。しかし、めげずに、自らの信念と信条に従い、突き進むのだ。さすれば道は開ける。』


 試練?いったいなんだそれは?


『では、我はもう行こう。供物を届けたこと、感謝するぞ。』


「えっちょっ!!」


 俺が今の話を詳しく聞こうとしたら、聖神竜は、白い光になって、持ってきた供物ごと、俺の視界から消えていた。様々な謎を残して。


「ねぇユウスケ!」


「え?」


「頑張ろうね!」


 俺のそんな思案など露知らず、満面の笑みで俺に言った。何故だか、この笑顔を見ていると、俺の思案なんて、酷くどうでも良く感じてしまう。


「……あぁ。」


 幸の頭を撫でながら、俺と幸は、神殿を後にした。

三話連続はキツイ(汗)。

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