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梅雨の時間

作者: やや夏

 5月29日、梅雨入りが発表された。

 たくさんの人間と、たくさんの建物に囲まれているとやっぱり息苦しくなる。

 その中でこの狭い家に一人で居ることはなんだか取り残されているように感じて、ただ虚しい。


 じっとりとまとわりつく湿気や洗濯物が乾かないことを考えると憂鬱になるけれど、外の音が一つになる時、私は深呼吸をしてしまう程息苦しさや虚しさから解放されて楽になれる。

 だから私には雨が必要だ。


 テレビも音楽もつけていないこの部屋の中に響く音は、古い食器乾燥機と冷蔵庫のうなる音だけ。その音も雨と一つになる。

 私は壁にもたれながら外を見つめていた。

「本当、落ち着く……」 深呼吸を一回、二回。

 すると、私の隣で深呼吸が一回。

 愛犬のポチ太郎だ。1ヶ月前から飼い始めた。 ポチ太郎はふせの体勢で目は悲しそうに私を見ている。

「ポチ太郎、やっぱり雨嫌い?」

 ポチ太郎はその問いに答えるように甘えるような声を出した。

 ポチ太郎はこの時期になると、深呼吸と間違えるくらいの深いため息をつく。


「じゃあ、こうしよっか」

 私はカーテンを閉めてテレビを付けた。

 雨の音がテレビの中の笑い声で小さくなる。

「早く梅雨が終わるといいね」


 ポチ太郎が来てから息苦しさや虚しさをあまり感じなくなった。

 私には、雨よりも大切なものができたのだ。





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